ダービー卿CT

今年、インセンティブガイが本格化した。


年明けの初富士Sで1000の通過57.3の流れを先行し、楽々と抜け出して1.32.4のタイムで勝利した。当時の中山の馬場を考えれば驚異的なタイムだった。
東京新聞杯では人気に応えることができなかったが、苦手な府中の瞬発力勝負でフジサイレンスやオレハマッテルゼと0.1秒差なら上出来と言っていい。
その後再び中山に戻った東風Sでは、1.33.6のタイムでキングストレイルに2馬身半の差をつけて楽勝した。グレイトジャーニーはそこからさらに2馬身、アサクサキニナルやキネティクスはそこからさらに離されていた。同日スプリングSの1.48.9と比較してもこのタイムは別格。走れる条件さえ整えば、もはや単なるオープン馬が太刀打ちできるレベルではなくなっている。


今年5歳を迎えてようやくオープン入りしたインセンティブガイだが、これまでにもその持ち味を発揮したレースが1度だけある。4歳時の石清水Sだ。ペースを落とすことなく先行集団を突き放し、インマイアイズ、ダイワレイダースといった実力馬を一切よせつけず完勝した。

  • 12.5-11.1-11.7-11.7-11.6-11.4-11.3-12.1
  • 12.7-10.8-11.5-11.7-11.7-11.6-11.8-12.2

上のラップがその石清水S。下はその3週前に行われ、ハットトリックが勝利した京都金杯。道中のペースはほぼ一緒だが、インセンティブガイのほうはラスト3ハロンから11.4-11.3とさらに加速する厳しいラップに耐えて後続を軽々と振り切っている。末脚勝負ではハットトリックにはとても歯が立たないが、時計勝負なら匹敵するという高い素質を示した一戦だった。


とにかく前半から速い流れになって耐久勝負になれば簡単にはバテない。東京や京都なら馬場と展開次第ではスローの瞬発力勝負になることもあるが、スタート後すぐにコーナーがあって直線が短い中山マイルならまずその心配はなく、他頭数ならレースレベルにほぼ比例した速いラップが刻まれることが多い。
さらに東風Sに引き続きニシノシタンが先導役を務める。グランリーオとインセンティブガイに突付かれれば前半3ハロンは34秒台の中盤くらい。このペースの後ろにとりつく形に持ち込めれば、実力を存分に発揮できるはずだ。


今週からBコースになった中山競馬場は、土曜の古馬500万の千八で1.48.8、1000万のマイルで1.34.3。それなら明日はおそらく1分33秒を切ってくる。午前中少し雨が降るそうなのでその影響だけが心配だが、天気予報を見る限りそれほど大雨にはなりそうもない。
この条件で今のインセンティブガイを倒すには、ダイワメジャー、ダンスインザムード級の先行馬でなければ無理だと思う。


鞍上は横山典弘。正月競馬でケガで戦線離脱してしまったため現在関東リーディング4位に甘んじているが、復帰してからはキストゥヘヴン、リンカーン、ヒシアトラスなど重賞を勝ちまくっており、目下絶好調だ。
先週までの成績は( 20 8 12 36 )で、勝率26%、連対率37%を誇る。今年220勝に手が届きそうな武豊の勝率28%、連対率41%と比較するとこの数字の凄さがわかる*1








では対戦相手はどうか。


東風Sで完封したキングストレイル、グレイトジャーニー、キネティクス、ニシノシタン、シルクトゥルーパー、ロードマジェスティらに負けることはまず考えられない。斤量以上の力の開きがある。
過去のダービー卿CTの勝ち馬マイネルモルゲンやダンツジャッジは東風Sで負けているが、マイネルモルゲンは直線で致命的な不利を受けていたし、ダンツジャッジはミッドタウンが1分32秒台で逃げ切るような馬場を4角10番手から追い込んだのが敗因だった。
逆に東風Sで連対してダービー卿CTに望んだのはこれまでケイワンバイキングとタイキブライドルの2頭で、2頭ともこのレースで連対している。中山マイルで積んだ実績が無駄になることはない。


実力馬テレグノシスは右回り( 0 1 3 11 )という究極のサウスポー。


中山マイル戦で4度全て上がり最速をマークしているマイネルハーティーに内田博幸が騎乗してきた。去年のニュージーランドトロフィーの追い込みを思い出すと一見面白い存在に思える。
だが去年中山がBコースに移行してからは、ダービー卿CTのチアズメッセージ、皐月賞のシックスセンスなど、ペースが上がれば追い込みが届く馬場状態が整っていた。だが今年の馬場では例えペースが上がっても追い込みはまず届かない*2。マイネルハーティーも最後方からアタマまでは来れない。かといって今さら中段で競馬ができるほど器用でもあるまい。


差し馬と言えばコスモシンドラーとアルビレオの2頭。
だがコスモシンドラーはオレハマッテルゼにGI勝利を許すような低レベルスプリント戦線の一員なのでいらないと思う。
アルビレオは去年中山の岡部幸雄騎手引退記念を勝っているが、あのときは中山にしては珍しく逃げ馬不在の超スローの上がり勝負だった*3。この馬はある程度スローで時計がかかる競馬が向いていて、前半からペースが上がると意外と最後もたないことが去年の秋の戦績から窺い知れる。
そしてこの2頭が揃って極端な大外枠を引いてしまった。中山マイル戦で大外枠は絶対不利。後方待機を余儀なくされれば、こいつらもインセンティブガイには届かない。


先行馬ではニューベリーが参戦してきた。だがこの馬がこれまで積み重ねてきた実績は、全てスローの上がり勝負になって先行力をいかしてそのまま粘りこむというスタイル。ハイペース必至の中山マイルは未知の領域。もともとスピード感のない馬で、さらに今回は最内枠をひいてしまった。グランリーオ等に先をゆずっている間に馬群にもまれてそのまま大敗してしまう可能性もある。


残りは4頭だが、グランリーオとダンスインザモアは重賞では完全に底が見えた感じだし、メテオバーストとトールハンマーは条件戦を卒業したばかりだ。




ということで、インセンティブガイを倒せそうな馬は見当たらない。


単勝は前売りで3.8倍。もともと5倍近い数字だったが、大量投入で一旦3.1倍まで下がり、また上がってきた。最終的には4倍は超えそうな勢い。意外と人気していない。


あとは明日の天気を見て差し馬場になっていないことが確認できれば、単勝が4倍つくようなら勝負しようと思う。



◎インセンティブガイ

*1:ちなみに次点は内田博、安藤勝、藤田、岩田、柴田善あたりが勝率15〜17%、連対率20〜28%あたり

*2:オーシャンSでネイティヴハートとシンボリグランが追い込んできたのは、ハイペースに加えて、内をうまく突けたこと、そしてスローの高松宮記念でも追い込んで来れるほど結果的に2頭の実力が高かったことが背景にあった

*3:ちなみにこのとき直線でインセンティブガイと派手に接触した因縁がある