今年の有馬記念は人気4頭が消しにくい。いずれも十分な強調材料を持っていて、騎手もグランプリ実績があり、好枠を引いた。どこに目を付けるか次第で本命候補がコロコロ入れ替わって悩ましい。
やはり鍵を握るのは展開。それもメイショウタバルの逃げに絡んでくるもう一頭の逃げ馬ミステリーウェイの存在ではなかろうか。これの出方次第、粘り具合次第で大きくレースは変わってくる。
ミステリーウェイは長らく条件戦で苦戦していたけど、7歳にして大逃げというスタイルを確立させて直近4戦で3勝を上げた。2走前の札幌2600では9番人気ながら大逃げから道中しっかりペースを落とし、後続を引き付けて最後12.4-12.0-12.0で差を広げながらゴールするというお手本のような逃げっぷり。そして前走アルゼンチン共和国杯の逃げはさらに凄かった。前半は7.7-11.3-11.6-11.8-11.9-11.9で後続をどんどん引き離す。そして残り1400から600にかけても12.3-12.4-12.4-12.3と緩めない。後続も早めに進出し、直線を向いた時点ではほとんど並ばれて横一線。しかしそこから粘りに粘って、ゴール板を過ぎたらミステリーウェイが半馬身抜けていた。最後の3ハロンは11.5-11.5-11.6。この馬を追いかけた先行馬たちの方が先にバテていて、2-5着馬は4角後方勢が占めた。このレースで2,3番手で最後バテた2頭がその後のステイヤーズSではワンツーを決めたことで、ミステリーウェイの無尽蔵のスタミナが改めて浮き彫りになった。逃げ有利な馬場だったのかというとむしろ真逆で、今秋の東京の芝は例年以上に差しや追い込みがよく届いており、2勝クラス以上では逃げ馬は( 3 1 1 36 )と大苦戦していた。
90年まで遡っても、アルゼンチン共和国杯で逃げ馬が勝ったのは(というか連対したのは)ミステリーウェイの他には09年のミヤビランベリしかいない。当時あまりの強さに続く有馬記念でもミヤビランベリに本命を打ったものの、ハナを取れないまま前潰れ展開に飲み込まれてしまい、その後骨折。あの強さをもう一度見ることは叶わなかった。アルゼンチン共和国杯でミヤビランベリに子供扱いされたアーネストリーやジャガーメイルのその後の活躍を見ても、あの時のミヤビランベリにはグランプリを勝っておかしくない力があったと思う。そしてその09年のミヤビランベリですら道中のラップでは12.5を2回踏んでいたことを思うと、12.4までしかペースを落とさず2.30.2で逃げ切ったミステリーウェイも決して侮れない力の持ち主と言えるのではなかろうか。
さて今年。秋GI戦線では武豊の逃げが何度も話題に上がったけど、もともと武豊はGI本番で逃げること自体が極端に少なく、16年にキタサンブラックと出会うまで意外なことにGIでの逃げ切りはなかった。メイショウタバルの前走天皇賞での超スロー逃げでの健闘にかなり手応えを感じていることや、ポジションよりも前半リラックスして走ることが大事といった本人のコメントから見ても、ミステリーウェイの大逃げに付き合う気は毛頭ない。スタートで外からミステリーウェイがハナを主張して、メイショウタバルが2番手で蓋をする。後続から見れば実質逃げているのは武豊。他の騎手にとって、武豊のポジションをマークしておけば間違いはない。
一周目、大歓声が飛ぶスタンド前。後続が折り合いに専念する間に、ミステリーウェイだけが快調に飛ばす。ゴール板を過ぎても続く上り坂とコーナーで、普通は必ずペースを落とす。ここでペースを落とさずに後続を離して逃げた馬と言えば、最近ではパンサラッサ、アエロリット、マルターズアポジー、リーチザクラウンなど、いずれも大敗している。今年大逃げ馬がいても誰も警戒はせず、後続との差は一気に開いていく。
しかしミステリーウェイにとっては大逃げこそがマイペース。過去に大逃げした上記の馬たちとは距離適性が根本的に違う。向こう正面ではしっかりペースを落とし、最後の直線で勝負するための脚を溜めている。
向こう正面でも2番手武豊にとっては一定のペースを守ることの方が大事。16年の有馬記念、キタサンブラックで2番手で先行していた武豊は、向こう正面でサトノノブレスがマクってきたために早めに動かざるを得ず、その分最後サトノダイヤモンドに差されたことを後日悔やんでいた。早めに動くメリットがない。だから他の騎手も動かない。マークすべきは前のメイショウタバルか、後ろのレガレイラか内のミュージアムマイルか外のダノンデサイルか。この状況で一体誰が大逃げ馬との距離や手応えを正確に測れるだろうか。
ミステリーウェイがペースを落としたあたりから後続の手も動いて、一気にレースは活性化する。しかし中山の馬場は依然として前有利。そして速い上がりが出ることはなくなった、時計のかかる馬場状態。ロングスパートする側にもスタミナが問われる。そして最後の直線、ミステリーウェイにはまだ二の脚が残っていて――
これはきっと、16年前にミヤビランベリに託した夢をもう一度見るチャンスなのではなかろうか。実際このレースでは33年も前に、スタミナ豊富な大逃げ馬の大激走を許しているのだから。
◎ミステリーウェイ
○レガレイラ
▲ジャスティンパレス
△マイネルエンペラー
△メイショウタバル
大逃げが残る展開になれば、連れてくるのは2番手の馬か、後方からロングスパートで最後まで伸びるスタミナのある差し馬。そうするとミュージアムマイルやダノンデサイルより、レガレイラやジャスティンパレスがいい。
ヒモにはマイネルエンペラーも加えてみたい。今年の日経賞の勝ち馬で、春の天皇賞でも前潰れ展開の中で3角先頭から5着に粘っている。今回休み明けだけど追い切りでは速い時計を連発。もともと休み明けの方が走る馬でもある。スタミナ比べになれば浮上するかも。