スプリンターズS

中山で行われるスプリンターズSは例年前半33秒フラットくらいで、一番速い年では32秒7。かなり速いペースだけど、極端な前潰れの差し展開になったことはあまりなく、それなりのポジションを確保して直線末脚を伸ばした馬が残っている。
これはGIに限ったことではなく、条件戦が32秒台で流れた時でさえ先行した馬がそのまま残る。スタートからずっと下り坂なので勝手にスピードは上がるけど、見た目の数字ほど逃げ馬は無理をしておらず、むしろスピードに乗ったまま直線を向いて一気に坂を駆け上がることが可能なコースだと思う。
00年までGIを振り返っても、追込み馬が届いたのは時計がかかる馬場だったり内をうまく突いたケースがほとんど。それどころか馬券に絡んでいるのはほぼ4角で7番手以内につけていた馬ばかりで、これより後ろの差し馬はと言うと、力の抜けていたロードカナロアとそれについていったドリームバレンチノ、ほかはカノヤザクラやブラックホークがぎりぎり3着に届いたくらい。
中山で外差しが決まるのは、ハイペースになった時というより、時計がかかる時だ。今開催は少し時計がかかるとはいえ、先週の準オープン1.07.9、昨日の2歳未勝利1.09.2、2歳オープン1.08.7あたりを物差しにしても、GIなら1分7秒台半ばだろう。後ろでエンジンを切り替えて馬群の外に出しているようでは間に合わない。今開催の芝1200、日曜午前までの11戦を振り返っても、追い込みの馬が勝ったのは2歳未勝利で1度だけ。勝ち馬10頭は4角7番手以内、うち9頭は5番手以内につけていた。芝1600を見ても、開幕週の京成杯AHが1.33.3で前潰れになったけど昨日の準オープンでは1.33.2が出ていて逃げ馬も残っているように、馬場も少しずつ速くなっていると思う。
先行馬が揃った今回、仮に速いペースになったとしても、コースの性質上ある程度前に付けないと厳しいのではなかろうか。


もっとも、ハナ争いが世間で言われるほど激化するかどうかも怪しい。スタートダッシュはアクティブミノルのほうが速い上に、ハクサンムーンのハナ宣言は全くアテにならない。もともと可能な限りスローに落として直線の末脚で勝負したいほうだし、2番手からの競馬を繰り返してGIでも結果を出せるようになった今、あえて無謀なハナ争いを仕掛ける理由がないように思える。
そのハクサンムーンは前走は得意のペースだったのに全く見せ場が無かった。しかし追い切りではムチを入れて好時計をマーク。春も同じパターンでGI本番で一変して見せたので、今回も休み明けとは全く違うかもしれない。
ただそれでも本質的に中山が向かないのではないかと思っている。スローペースに落として直線でもう一度末脚を伸ばすのがこの馬の勝ちパターンなので、前半からハイペースになる中山1200は真逆に近い。3歳時に格下相手に条件戦を逃げ切っているものの、オーシャンSを3度に渡って取りこぼし、全盛期のスプリンターズSですらマヤノリュウジン以下の後続にクビ差まで迫られたことを思うと、中山ではかなり割引が必要ではないかと思う。


アクティブミノルはデビューからのスプリント2戦が後続を寄せ付けない圧勝で、阪神開催になった朝日杯でも先行馬総崩れの厳しい展開の中で長い直線を僅差5着まで粘った。セントウルSも含めてハナに立った4戦では一度も崩れていない。セントウルSは前後半34.0-33.8のスローペースに恵まれた感はあるけど、ハクサンムーンがロードカナロアを押さえこんだ年も33.8-33.7と似たようなペースだったのでGI本番に直結してもおかしくない。この週は開幕週とはいえ逃げて連対した馬はアクティブミノルだけ。決して逃げ切りやすい馬場ではなかったと思う。
不安は中山への輸送。京王杯やニュージーランドTは距離も長いし2番手からの競馬だったけど、ファルコンSや朝日杯の走りを思えばもう少しやれてもよかったはずで、輸送による影響はあるかもしれない。


2頭を追いかけるのがミッキーアイル。阪急杯と高松宮記念では控える競馬で見事結果を出した。安田記念ではせっかくの好スタートを決めたのに周りが遅すぎて無理やり抑えてしまって惨敗。1200の外枠発走なら自然と前を追う形で隊列に入れる。テンションが上がり過ぎない分だけ休み明けのほうが走るタイプなので、狙い済ましたこのローテーションも歓迎。高松宮記念の着差を見ても2,3着馬の能力はかなり高い。その中でも半年経って、中山に替わって、今度はミッキーアイルに分があるように思う。


コパノリチャード、リトルゲルダあたりとともに先行しそうなのがベルカントか。この馬は溜めても大してキレないのでスピード一辺倒で押し切った方が強いと思うけど、前走では先行争いが激化すると見るや前を追いかけずに距離を置く形になって展開がハマった。鞍上は少しでも後ろで溜めたい武豊だし、外から速い馬たちが何頭も切れ込んでくるようならポジション取りが少し後ろになるかもしれない。内で包まれて終わらなければいいんだけど。
ただここ2走で見せた強さはハッキリGI級だと思う。去年のこのレースでも3番手追走から早めに先頭に立って、外差しの有利の展開の中で十分に見せ場を作っていた。サクラバクシンオー産駒で中山に多少の不安はあるものの、ダッシャーゴーゴーのように阪神で走った馬は中山でも走るのでコース適性は問題ないだろう。


このへんに続くのがストレイトガールか。京都の高速馬場で内から先行してスムーズに抜け出したときに1.07.4の勝ち時計もあるけど、それ以外の安定した成績はどれも1分8秒台から9秒台ばかり。基本的にはマイラーじゃないかと思っていて、スプリントでこのクラスだと前半少し遅れをとる。いつも直線で追い上げてくる力のある馬だけど、もっと広くて最後の末脚を活かせるコースの方が向いている。小回りスプリントで1分7秒台の決着になれば届かないのではなかろうか。


ストレイトガールでようやく馬券圏内に追いつけるかどうかだと思っているので、これより後ろには手が出ない。
ウリウリほど毎回毎回馬群を縫って差してくるイメージの馬は珍しい気がする。しかしGI本番、しかも先行馬がこれだけ揃ったら、馬群を捌いて内を突くのはかなり無理があるだろう。大外を回すなら一気に信頼度は低下する。前走はスローの展開でよく追い込んできたけど、この馬自身はスローで速い上がりを使うほうが得意。1200のハイペースで勝負圏内のポジションを確保して最後どれだけ脚を伸ばせるだろうか。



◎ベルカント
○ミッキーアイル
▲アクティブミノル
△ストレイトガール


今開催は逃げ馬はあまり勝っておらず、それを見る先行馬ばかり勝ってるので、ベルカントとミッキーアイルがアタマ候補。やっぱりアクティブミノルまでアタマ候補にしよう。ストレイトガールは3着までにして三連単にするか。