サドラーズウェルズも洋芝実績がない

せっかくなので、今度はサドラーウェルズ系の種牡馬全体を調べてみた。
言うまでもないけど、サドラーズウェルズは欧州で長らくリーディングサイアーに君臨した洋芝血統の代表格。にも関わらずその直仔は日本では全く走らなかった。
wikipediaによると「理由としては欧州特有の深い芝を得意とするスタミナ型の馬のため」「日本の固い芝で展開されるスピード競馬には向かないという論説が根強く唱えられている」そうだ。一方で「アメリカでも芝戦線であれば、ブリーダーズカップの芝部門を計6度制覇するなど、実績を残している」という但し書きも付いている。


全成績を全競馬場別に分けて見てみる。下級条件まで含めると、どの競馬場でもほぼ一緒。
準オープン以上のクラスに限ると、函館( 2 2 3 13 )、札幌( 0 3 4 25 )という数字が出てきた。洋芝100%で行われる札幌は、勝ち星がゼロ。
函館の方は一見まともな数字に見えるけど、4連対のうち3つはクラフトマンシップ一頭で稼いだものだ。しかもこの馬の洋芝適性は恐らく母系の影響によるところが大きい。クラフトマンシップの母ワーキングガールは、この馬の他にも、函館記念を兄弟制覇したクラフトワークを筆頭にラヴォランテ、ドリームワークス、クラフトミラージュなど北海道開催の活躍馬を多数生み出していた。
母方の洋芝適性が強いクラフトマンシップ以外には、父サドラー系の馬で北海道の準オープン以上のレースを勝った馬は一頭もいないことになる。これは驚いた。ちなみに他の競馬場では、新潟が勝率5%、他はどこも勝率7〜9%台を維持している。


ここで「サドラーズウェルズは洋芝の適性がない」と結論付けたら面白いんだけど、さすがにそれはどうかとも思う。しかし洋芝の実績がないのは確かだ。
北海道で走れない根本的な原因は「洋芝」ではなく別のところにあるのかもしれない。
今度はサドラー系の全成績を、重賞に限って、競馬場別に分けてみる。

  • 札幌( 0 0 2 14 )
  • 函館( 1 1 1 5 )
  • 福島( 2 1 4 12 )
  • 新潟( 0 0 3 16 )
  • 東京( 14 10 9 120 )
  • 中山( 12 8 9 86 )
  • 中京( 0 1 1 14 )
  • 京都( 7 7 6 53 )
  • 阪神( 6 5 7 62 )
  • 小倉( 0 1 1 13 )

中央開催の4競馬場がどこも堅実に勝利を重ねているのに対し、ローカルでは( 3 4 12 74 )で勝率たったの3%。勝ったのはクラフトマンシップの函館記念と、ミヤビランベリが七夕賞を2連覇しただけ。札幌・函館に限らず、「ローカル全体が苦手」と見た方がいいのかもしれない。
時計のかかり具合で言えばローカル競馬場の方が重いはずで、さらに北海道が一番重い。にも関わらず、サドラー系はローカルの成績が悪く、特に北海道の成績が悪いことになる。ミヤビランベリが七夕賞を勝った時は「重い芝が得意なんだから福島は合うはず」と思っていたけど、むしろこの血統の中ではかなりレアなケースだった。


じゃあなぜローカルが苦手なのか。
サドラー系種牡馬はローエングリンやアサクサデンエンを輩出したシングスピールを除くと、長距離向きのステイヤー種牡馬ばかりなので、「ローカル重賞では距離が短すぎる」というのが一つの理由だと思う。あとはカーブが多くてペースが上がりにくいこともスタミナをいかしきれない理由かもしれない。


この血統にとって大事なのは、緩みないラップで持久力を問われるかどうかなんだろう。日本で走る限り、芝の重い軽いは関係ない、というかむしろ軽い方が成績がいい。アメリカのブリーダーズカップ芝部門では活躍しているというのもこれに関連があるのかもしれない。
母父サドラー系まで広げると、ストラタジェムがディープインパクトの天皇賞快レコードの時に3着に差して来たり、今年もアンライバルドが皐月賞をハイペースの快時計で制したりした。エルコンドルパサーも今や立派な長距離種牡馬だし、このへんの活躍は母父の影響が強そうだ。