オペラハウスは洋芝実績がない

ミヤビランベリについて考える上で、父オペラハウスは外せない。スピード感に乏しく、道悪適性とスタミナを武器に高齢で活躍するこの馬は、一般的なオペラハウスのイメージともよく合っている。
wikipediaのオペラハウスの項目では、「時計がかかる洋芝や道悪の馬場も得意」と書かれてある。金満の王様も「オペラハウス産駒の強みは、道悪や時計のかかる馬場になったときにさらなる能力を発揮するところ。冬の中山は年によって荒れ馬場になることがあり、そうなるとミヤビランベリ大駆けの可能性は高まる」とニッカンのコラムに書いていた。


時計の速い東京であれだけ強いなら、冬場の時計のかかる中山ではよりパフォーマンスを上げる可能性もある、と自分も最初は考えていた。しかしオペラハウス産駒の戦績を調べていくうちに、そのイメージが違うことがわかってきた。


準オープン以上の芝コースで、オペラハウス産駒の全成績を競馬場別に分けてみるとこうなる。

  • 札幌( 0 2 1 11 ) 勝率0%
  • 函館( 0 0 1 5 ) 勝率0%
  • 福島( 2 0 1 16 ) 勝率11%
  • 新潟( 2 0 1 15 ) 勝率11%
  • 東京( 12 11 10 94 ) 勝率9%
  • 中山( 12 10 11 88 ) 勝率10%
  • 中京( 2 1 1 15 ) 勝率11%
  • 京都( 8 8 7 65 ) 勝率9%
  • 阪神( 10 7 1 61 ) 勝率13%
  • 小倉( 1 0 2 13 ) 書率6%

札幌と函館の洋芝で一度も勝っていないのだ。札幌にオペラハウス産駒が出てくると、洋芝適性を期待されて人気することも多い。実際今年の札幌記念でミヤビランベリは3番人気に押されたけど、生涯最低着順で惨敗した。4年前の札幌記念ではオペラシチーが1番人気の支持を集めてぶっ飛んだこともある。「時計がかかる洋芝が得意」じゃなかったんだろうか。


ただこれだけなら、単に「夏が苦手」な可能性も捨てきれない。なので次は同じデータを月別に分けてみた。

  • 1月( 3 4 4 31 ) 勝率7%
  • 2月( 3 5 4 29 ) 勝率7%
  • 3月( 8 5 4 34 ) 勝率16%
  • 4月( 11 3 3 43 ) 勝率18%
  • 5月( 3 4 4 43 ) 勝率6%
  • 6月 ( 3 3 1 24 ) 勝率10%
  • 7月( 3 0 2 20 ) 勝率12%
  • 8月( 2 0 0 16 ) 勝率11%
  • 9月( 2 4 2 22 ) 勝率7%
  • 10月( 5 3 5 22 ) 勝率11%
  • 11月( 4 4 5 39 ) 勝率8%
  • 12月( 2 4 2 49 ) 勝率4%

季節別に分けてみると、今度はむしろ冬場の方が成績が悪いことがわかる。特に12月の成績は酷い。この時期は暮れの中山と阪神で競馬が行われて、中央開催の中では一年で最も時計のかかりやすいシーズン。洋芝血統、スタミナタイプの馬にとっては稼ぎ時に思える。
しかしオペラハウス産駒は冬場になるとガタッと成績が落ちる。そういえばテイエムオペラオーもステイヤーズSを取りこぼしたり引退レースの有馬記念で生涯最低着順になってるし、メイショウサムソンも冬が来る度に毎年調子を落とす馬だった。


「札幌と函館が苦手」「冬競馬が苦手」という2つの結果は、「時計がかかる洋芝が得意」というイメージとはほとんど逆に近い。


むしろオペラハウス産駒の数少ない活躍馬の中には、スピードの持続力で勝負できる分、時計勝負で実績を残すケースが少なくない。オペラシチーは2つのレコードを記録していたし、メイショウサムソンも2歳時にレコード勝ち、春の天皇賞も歴代2位の好時計だった。トーセンクラウンもレコードがある。エリモファイナルも今年のストークスSを1.32.2の時計で勝って穴をあけた。あのヨイチサウスも生涯最高のパフォーマンスは東京1800の早春Sだった。
そしてミヤビランベリも、今年の中山金杯と小倉大賞典で3着に粘って穴をあけているけど、この2つはともにレースレコードを大幅に更新する高速決着だった。この舞台でアドマイヤフジ、サンライズマックス、ヤマニンキングリーらと接戦したことは七夕賞2連覇よりもむしろ価値が高いかもしれない。そしてアルゼンチン共和国杯のあの好時計勝ち。


オペラハウス産駒に「重い」というイメージを持つと痛い目を見る。
確かにスピードはなくて短距離は向かないし、軽い芝コースでキレ味を発揮することもない。降雨による馬場の悪化も大得意だ。
しかし「洋芝・重い芝が得意」という傾向はほとんど見られない。「父がサドラーズウェルズだから」というイメージが先行していたように思える。