アルゼンチン共和国杯

このミヤビランベリの逃げ切り以降、クィーンスプマンテ、マイネルファルケと人気薄の逃げ馬が続けて残ったことで、「折り合い重視のスロー競馬」への批判がいろんなコラムで取り上げられたりもしたようだ。ただミヤビランベリは決して単なるスローでスタミナを温存して逃げ切ったわけではないので、他の2頭とは違う。むしろ今年最もスタミナを問われたレースの1つだったのがこのアルゼンチン共和国杯だった。
前半1000こそ62.5だけど、最も遅いラップが12.5で息をつく暇がない。そのまま後半7ハロンが12.1-11.7-12.0-12.3-11.0-11.8-11.9。全くペースを落とさないままミヤビランベリはゴール板を駆け抜けてしまった。


アーネストリーは直線一旦は先頭に立ったものの失速。ハイアーゲーム、スマートギアといったこの秋の重賞戦線の活躍馬たちも軒並み潰された。
人気を裏切ったジャガーメイルを見ると、4角15番手から、ラスト300メートル地点では何と5番手争いに加わって追撃体勢に入っている。しかしそこでスタミナ切れを起こして止まってしまった。最後は一旦は完全に置き去りにしたはずのヒカルカザブエとサンライズマックスに捕まって、トウカイトリックにすらアタマ差にまで迫られるという結果に終わった。


最後まで伸びてきた馬は、ヒカルカザブエ、サンライズマックス、トウカイトリックの3頭だけ。
ヒカルカザブエは阪神大賞典2着に加えて、春の天皇賞でも不利な大外から最後まで末脚を伸ばしていたステイヤーだった。トウカイトリックも言うまでもないステイヤー。サンライズマックスも重賞勝ちは中距離だけど、春の天皇賞4着を見るとステイゴールドの血統を受け継ぐステイヤーの可能性が高い。少なくとも上がりで勝負する馬じゃない。


このレースを見た直後、ヒカルカザブエの上がり33.5という数字を見て、「こんなにキレる馬だとは思わなかった」と書いたけど、この感想は全くの見当違いだった。単なるスローのキレ味勝負なら、このステイヤー3頭だけが伸びて、他の中距離馬がここまで失速するはずがない。
ステイヤー3頭の上がりがかなり速かったのは、ラスト600メートル地点を迎える前にすでに差し馬がみなエンジン全開にしなければいけないほど、逃げた2頭のラップが早すぎたから。その結果長い直線を耐え切れずに多くの馬がバテてしまった。3000メートル級のステイヤーの差し馬でなければ脱落していく厳しいレースだったと言える。


その中で最後まで脚色を鈍らせずに逃げ切ったのがミヤビランベリだった。ゴール前でもまだまだ余力は十分。底知れないスタミナを見せ付けた。


もともと東京2500というコースは逃げ切りが少ない。重賞に限れば08年目黒記念のホクトスルタンがいて、それより前は20年近く前まで遡らなければならない。ホクトスルタンの逃げ切りは時計のかかる馬場でバテバテの競馬に持ち込んで、4角で上位にいた馬がおおよそそのままゴールしていた。一方今年のアルゼンチン共和国杯は2分30秒台の速い決着で、しかも先行馬も差し馬も潰れ果てて、追い込みのステイヤーが掲示板に顔を出したレース。こういう逃げ切りは東京ではなかなか見られない。
過去に2分30秒台の時計の速い決着で先行策から押し切ったのも、アドマイヤジュピタとスクリーンヒーローの2頭だけ。もちろんこの2頭はその後GIを勝って、アルゼンチン共和国杯を出世レースに位置づけた。その2頭がそれぞれハンデ54キロ、53キロでの勝利だったことを思うと、トップハンデ57.5キロで悠々押しきったミヤビランベリはさらに上の評価が必要になる。当然GIでも通用するだろう。


じゃあミヤビランベリがGIで来るならどのレースなのか。この馬の適性はどこにあるのか。ここからが今日の本題。