天皇賞・春

グランプリ有馬記念当日の中山競馬場では、メインと同じ内回り2500で古馬1000万下条件戦グッドラックハンデが組まれるのが30年以上も続く恒例プログラムとなっており、有馬記念本番を占う参考レースとして例年馬券ファンが熱い視線を送っている。

当然のことながらグッドラックハンデと有馬記念ではレースレベルが違うので、走破時計は2秒から3秒ほど有馬記念の方が速くなるのが通例である。しかし中には「グッドラックハンデの方が時計が速かった」というケースもしばしばある。有名な例は90年のオグリキャップのラストラン。感動の復活劇の裏側で、出来過ぎのシナリオとあまりにも遅い決着にレースレベル自体を揶揄する声も上がっていた。他にも、グラスワンダースペシャルウィークが最後の死闘を繰り広げた99年や、テイエムオペラオーに引導を渡したマンハッタンカフェアメリカンボスの01年テロ馬券、ブエナビスタが引退レースで初めて馬群に沈む中でオルフェーヴルが見事差し切って世代交代を印象付けた11年や、枠順ドラフトで絶好枠を引き当てたジェンティルドンナが有終の美を飾った14年が、有馬記念の方がグッドラックハンデより時計が遅い(または同タイムの)例である。いずれも有力馬が牽制し合った結果、道中で13秒台のラップが2つから4つほども現れる超スローの展開に陥っており、前半と後半の1000メートルで5秒ほど時計が違うという極端な上がり勝負になっている。こういう状況では時計の比較が難しい。

 

昨年はというと、有馬記念の勝ち時計は2.35.0で、グッドラックハンデの2.35.7を上回ったものの、例年と比べると差は非常に小さかった。これが上記の5つの例と大きく違うのは、決して有馬記念がスローではなかったことである。前半1000と後半1000の違いはわずか1.5秒しかない。フィエールマンが先行策を取ってプレッシャーをかけたこともあって13秒台が一度もない流れになり、さらに後半クロノジェネシスがまくったことで全く息が入らないまま直線を迎える展開。逃げたバビットは13着、2番手のオーソリティとブラストワンピースは14着と競走中止。極限のスタミナが問われる中でラッキーライラックなど4着以下は直線で伸びを欠き、伏兵サラキアの大外一気を許すほどのタフなレースになった。

 

有馬記念

6.8-11.8-12.2-12.5-12.5-12.8-12.9-12.8-11.8-12.3-12.1-11.9-12.6

グッドラックハンデ

7.0-11.7-11.8-12.7-12.8-13.1-13.2-12.7-12.1-12.0-12.2-11.9-12.5

 

この2つのレースのラップタイムを比較すると、終始非常によく似たラップで推移していたことが分かる。ここまで酷似したラップ構成になったのは過去30年で恐らく初めてだろう。

このラップで有馬記念が前潰れの結果に終わったのに対して、グッドラックハンデの方はなんと逃げ馬ディアスティマがたった1頭で作り上げたラップであり、余裕綽々の7馬身差圧勝で最後流しながらこの時計をマークしていたのだから驚くほかない。2.35.7の勝ち時計はそのまま有馬記念の着順表に放り込んでも8着相当だけど、仮に有馬記念に出てそのペースで走っていれば4着ラッキーライラックの2.35.5よりは間違いなく先着していただろう。もっと上位を狙えた可能性もあると思っている。

 

ディアスティマはデビュー直後は堅実ながらもジリ脚タイプで勝ち切れなかったけど、プラス12キロの馬体で復帰した3歳秋から本格化した。グッドラックハンデを圧勝後の前走・阪神3200松嶺Sでも逃げて3馬身差の余裕の圧勝。勝ち時計3.14.9の時計も優秀で、速い馬場でも十分戦えることを示した。ステイヤーとしての資質が極めて高く、条件戦上がりといったキャリアを気にするレベルを超えている。今回は何とか天気も持ちそうだし、かなり速い時計の決着になりそう。1周目外回り→2周目内回りの阪神3200でこの馬を捕らえられるほどの強い馬は今回のメンバーにはいないように見える。

今回はジャコマルがハナを主張してきそうだけど、ディアスティマ自身は決して逃げなければいけないタイプではなく、2番手から抜け出す競馬でも十分強い。むしろ過去の天皇賞の歴史を見れば、逃げ馬よりも、逃げ馬を見ながら早めに先頭に立っていく馬の方が勝ちパターンに合っている。重要なのはスローに陥らないこと。強気の早仕掛けでスタミナ勝負に持ち込むことに関しては、鞍上の北村友一は昨年の宝塚記念有馬記念の騎乗ぶりから見ても信頼度が高い。長距離戦ほど成績が良い騎手であり、去年と一昨年の天皇賞でも8番人気パフォーマプロミスと11番人気スティッフェリオで穴を開けている実績がある。

 

 

◎ディアスティマ

○ユーキャンスマイル

 

 

ディアスティマは想定より人気してるけど仕方ない。単勝メインにしようかな。

 

4歳クラシック組のレベルが高くなさそうなのでアリストテレスとディープボンドには重い印を打ちにくい。かといって古馬レンブーケドールやワールドプレミアも相手なりに走って掲示板入着を繰り返す馬なので積極的に推すほどでもない。

この中で一番地力を信頼しているのはカレンブーケドールで、思ったより人気を落としたし時計勝負も得意だと思うんだけど、阪神3200で一世一代の走りができるほどの適性があるかは疑問。ディープインパクト産駒で長距離実績のある馬は大体母系がハンプトン系、ニジンスキー系、ロベルト系と決まっていて、母父ストームバード系は中距離でこそ。東京の中距離戦ほどのパフォーマンスは期待しにくい。

 

阪神実績、長距離実績があってさらに時計勝負にも強そうなのはユーキャンスマイルだろうか。アタマ固定で2頭軸の三連単を適当に買うか。

 

 

(追記)北村友一乗り替わりかぁ・・・。残念過ぎる。坂井瑠星は正直いいイメージが無い。でも先日のマイラーズC岩田康誠から乗り替わった古川吉洋が見事に結果を出したし、乗り替わりを気にして印を変えるのも嫌ですね。単勝につぎ込むのをやめて、その分相手を絞って低予算の高配当狙いで行こう。

 

◎ディアスティマ

○ユーキャンスマイル

▲ワールドプレミア

 

前走折り合いを欠いたアリストテレス、道悪の圧勝で評価が上がりすぎたディープボンド、中距離以上のパフォーマンスを期待しにくいカレンブーケドールを消して、 菊花賞馬と天皇賞の相性の良さを優先する。