有馬記念

アーモンドアイが最も得意とした秋の天皇賞、しかも速い馬場のスローの上がり勝負という条件で、後方に下がる不利がありながら0.1秒差まで追い詰めたのがクロノジェネシスとフィエールマン。しかもクロノジェネシスはもっと上がりのかかる馬場とハイペースの方が合うはずだし、フィエールマンはもっと距離が長いほうが合うはず。有馬記念ではこの2頭に人気がかなり集中すると思っていた。しかし蓋を開けると意外とそうでもない。馬連でも6倍つくようなので、もうこの一点でいいんじゃないかという気もしている。

  

ただフィエールマンが天皇賞時点でマイナス12キロの馬体減だった点は気になる。ただでさえこれまで間隔を空けて使われ続けていた馬なのに、前走そこまで減った馬体を調整しながら、まともな負荷をかけて大一番を迎えられるものだろうか。最後のグランプリが終わった後で「見えない疲れ」を敗因に挙げる例を今まで何度見たかわからない。

今年は他にもワールドプレミアやバビッドなど、前走時点で大きく馬体を減らしていた馬が有力どころに並んでいる。そこで過去34回の有馬記念について「前走の馬体重は前々走と比べてどうだったか」で整理すると、面白い傾向が見つかったので紹介したい。

・増加 ( 19 14 12 184 ) 勝率8.3%、回収率108%

・同じ ( 7 7 5 65 ) 勝率8.3%、回収率195%

・減少 ( 4 11 16 138 ) 勝率2.4%、回収率12%

前走の時点で馬体減だった馬の有馬記念の成績が非常に悪いのである。この中には、丸一年の休養明けだったトウカイテイオーのような例も含んでいる。前走から十分間隔が開いた場合は、前走と前々走の馬体の違いなんて今更ほとんど影響しないだろう。なのでこの「前走馬体減」の例の中で、「中10週以上のローテ」は除外してみよう。そうすると( 2 10 15 129 )で勝率1.3%の回収率5%という絶望的な数字になる。

前走の時点で馬体を減らすほど仕上げ過ぎると有馬記念ではおつりが残っていなくて勝てない、という解釈が妥当ではなかろうか。他の主要GIでも同じことを調べてみたけど、こんな極端な傾向が出てきたのは有馬記念だけだった。連戦の疲労がたまる年末のグランプリでこそ生じる傾向なのかもしれない。 

もちろん2,3着に入った例はかなりいて、伏兵が穴を開けるケースもちょくちょくある。出走ボーダーすれすれの格下馬にとっては、前走で仕上げて勝って勢いをつけて乗り込んでくるくらいがちょうどよいかもしれない。しかし1番人気としてはアーモンドアイ、レイデオロディープインパクトセイウンスカイトウカイテイオータマモクロスといった錚々たる面子がこの「前走馬体減」パターンで人気を裏切っている。エアグルーヴも最大目標のジャパンCを馬体を絞って挑んで好走して、続く有馬記念では連を外すのを2年連続で繰り返した。キタサンブラックも使い詰めの最後に負けることが多かった馬で、3歳時、4歳時は前走の菊花賞ジャパンCを馬体減で勝った後に有馬で負けていて、5歳時は馬体をしっかりキープしたジャパンCこそ取りこぼしたもののラストランの有馬を見事勝利で飾っている。

このデータを見るとフィエールマン、バビット、ワールドプレミアには大きな期待を寄せにくくなってしまった。ちなみにラッキーライラックとサラキアも僅かながら前走馬体減だった。

それに加えてフィエールマンは広くて直線が長くて上がりが速いコースに実績が偏っている点も気になる。昨年の有馬記念4着も強い内容だったと思うけど、早仕掛けの分もあって最後は完全に止まっていた。ラジオNIKKEI賞AJCC札幌記念といった小回りコース戦でもエンジンがかかりきらずに取りこぼしている。このあたりは距離のせいかと思っていたけど、前走府中2000の天皇賞での上がり勝負で強い競馬を見せたことで、かえって中山への適性の無さが露呈してしまったような気がする。

 

 

やはり本命は2強のうちクロノジェネシスに託したい。宝塚記念の激走を見た時点でもう本命は決まったようなものだったけど。上がりが速い競馬だと途中で空回りするかのように止まってしまうけど、時計がかかる展開ならとにかくタフに最後まで走りきる。宝塚の走りを見たら初の中山とか2500とかは何も気にならない。あまりにも牝馬が強すぎたこの一年を締めくくるのはこの馬しかいない。

 

あとはヒモ探しだけど、本来これは枠順や展開に大きく左右される。厄介なことに、今の中山開催は先週まで内枠の成績が非常に悪い。

-1枠 勝率4.0%、回収率35%

-2枠 勝率1.8%、回収率4%

-3枠 勝率1.8%、回収率14%

-4枠 勝率6.9%、回収率84%

-5枠 勝率9.7%、回収率63%

-6枠 勝率7.8%、回収率117%

-7枠 勝率9.1%、回収率168%

-8枠 勝率10.6%、回収率148%

ここから1200と1600を除くと4枠より内の勝率はさらにもっと酷いことになる。こんなに外枠に偏る中山競馬は珍しい。ただしここには土曜7日目の競馬の結果は含まれていないことに注意。土曜はかなり内有利を印象付ける結果だった。ただそれでも1着馬は4,4,1,6,8枠から出ている。

日曜がどうなるかはよく分からないけど、今の中山は、内外というより、とにかく差し・追い込みが全くと言っていいほど届いていない。芝が重すぎて追走だけでスタミナを削がれるうえに、直線で外に持ち出しても速い上がりが出ずに前との差が詰まらない。しかしそんな条件でも有馬記念本番となると昨年のように乱ペースになって極端な前潰れに終わったりするので何とも展開予想が難しい。

 

もう開き直って買いたい馬を買うことにするか。

 

◎クロノジェネシス

○サラキア

▲キセキ

△フィエールマン

△バビット

  

サラキアは外枠で後方待機策なので本来は嫌うのがセオリーだけど、とにかく今年の夏からは別馬で、その充実度が気になっている。小倉日経OPでポッケリーニを子ども扱いした後、府中牝馬Sでは3番手から突き抜けて3馬身差の圧勝。倒した馬たちもその後活躍しまくっているし、とにかくサラキアの強さが際立ったレースだった。エリザベス女王杯でも早めに仕掛けたラッキーライラックが33秒台で押し切ろうとするところを最後方から際どく追い詰めて僅差2着。高速馬場で最後方から大外を回す展開ではさすがに厳しかったけど、最後まで前を追う闘争心を一番評価している。今回は距離もコースも初めてだけど、小倉の小回りロングスパートのマクリ競馬を得意としてきた馬で、同様の実績から有馬記念で活躍した例としてドリームジャーニートゥザグローリーがいる。去年の有馬や今年の宝塚のような前潰れの展開になったら、遥か大外からアドマイヤモナークするところが見れるかもしれない。

逆に内枠の逃げ馬バビットもちょっと気になる。今年の3歳世代が勝つところまでは期待していないけど、時計のかかるセントライト記念を悠々逃げ切った実績馬だし、逃げたら底を見せていない。それほど人気もしていないし、これだけ前有利な馬場なので逃げ残る可能性があるかもしれない。

前が残るにせよ後ろが届くにせよ、厳しい展開でこそチャンスがありそうなのがキセキ。以前の不調期と比べると最近は走る気を見せている。天皇賞のような上がり勝負やジャパンCのようなハイペース大逃げでは実力を出せるはずもなく、時計のかかる有馬記念でスタミナを問われる展開でこそ狙い目の馬のはず。

 

 

一番悩むのはカレンブーケドール。強いと思うんだけど、紫苑Sで連を外してオールカマーでセンテリュオに差されてしまうところを見ると、大一番で狙う条件はここじゃない気がする。ラッキーライラックは上がりが速い競馬でこそ。オーソリティは世代的に高くは評価できないし、アルゼンチン共和国杯から有馬へのローテにはこれまで何度も騙されてきた。ワールドプレミアも後方待機から他馬がバテたところを差すしかできないわりにはいつも結構人気していて手が出ない。

ブラストワンピースやラヴズオンリーユーも枠はいいんだけど、近走の走りには見どころを感じない。これまでマツリダゴッホアドマイヤモナークエアシェイディゴールドアクタークイーンズリングらの穴馬に有馬記念で重い印を打ってきたけど、どれも近走では実力を感じさせる走りを見せていた。単なる中山適性や枠の利だけではなく、大一番に向けて調子を上げてきた印象が欲しいところ。