中山金杯

中山金杯といえばかつてアサカディフィートが3度馬券に絡んだように、差し・追い込みのイメージが昔は強かった。実際2000-2010年の間(東京開催は除く)は差しが( 7 4 5 48 )と大活躍して、追込みも( 0 5 0 40 )と2年に一回は連に絡んでいた。しかしこの10年で傾向はすっかり様変わりしていて、先行が( 6 6 2 22 )で勝率17%を上げており、差しは( 4 2 6 52 )まで低下、追込み馬にいたっては連にすら一度も絡んでいない。

そして圧倒的な内枠有利。この10年で、4枠より内は(  8 6 6 55 )、5枠より外は( 2 4 4 72 )と大きく差がついている。7,8枠は( 0 1 0 42 )だからもはや壊滅状態。ちなみに2000-2010年は5枠より外は( 4 8 8 59 )、7,8枠も( 2 3 2 32 )と決して悪くはなかった。

もう一つ変化したことは、穴が全然出なくなったこと。単勝は全てひと桁台で、平均配当は514円に収まっている。

つまり内枠で先行する人気馬には逆らえない、ということになる。

 

そう考えると期待値が低くてあまり儲からないレースという結論になるんだけど、そんな中でも高い回収率を弾き出す無視できない特徴がある。前走から斤量が増えている馬が非常に強い。過去10年で斤量増が( 9 4 5 12 )で勝率30%の回収率152%という高い数値を叩き出している。同斤量が( 0 4 3 56 )、斤量減が( 1 2 2 59 )と比べると圧倒的な差が出ている。

馬自身の走力としては斤量が増えて良いことは無いはずなので、それでもなお斤量増の馬が強いというのは、「条件戦上がりの馬よりも実績馬の方が強い」ということに他ならない。斤量の重い実績馬の方が勝率・回収率が高くなるのはハンデ重賞で全般的に見られる傾向だけど、「前走からの斤量増」がここまで極端な差になって現れるのは珍しい。暮れのオープンやハンデ重賞を勝って評価を上げた馬や、秋のG1で揉まれてきた馬が非常に強いということになる。

せっかくなので前走からの斤量増が良い成績を収めているハンデ重賞が他にもないか調べてみたところ、中山金杯が圧倒的1位で、2位がシルクロードS、3位にダイヤモンドSと、年始の重賞がベスト3を独占した。年始だと明け4歳馬の斤量が重くなる時期なのでそれが影響しているのかと最初は思ったけど、別に4歳馬が異常に強いレースというわけでもないし、他の年始ハンデ重賞である京都金杯日経新春杯愛知杯あたりは軽ハンデの馬がよく活躍している。各路線ごとに全体のプログラム編成から決まる傾向なのかもしれない。コース設定も大きく関係しているのかも。京都1600や京都2400だとスローからの直線末脚勝負になりやすいけど、中山2000、京都1200、東京3400だと先行力を含めてトータルの競馬の巧さが重要になるので、そのあたりも条件戦上がりの馬より実績馬の方が強い理由に関係しているのだろうか。他に斤量増の成績が高いレースとしてCBC賞七夕賞、京王杯AHあたりが名を連ねることとも整合するような気がする。

 

 

さて今年。今年は枠順発表によって事前のnetkeiba想定オッズとはかなり様相が変わってしまった。内枠を引き当てた先行馬テリトーリアルやココロノトウダイがかなり人気を集めていて、一方でディープボンド、ダーリントンホール、バイオスパーク、ヴァンケドミンゴ、ウインイクシードといった馬たちは外に追いやられて急激に人気を落としている。今年の出走馬で前走から斤量が増えている馬は福島記念1,2着のバイオスパークとヴァンケドミンゴの2頭しかおらず、いずれも外。内枠有利説を信じるか、斤量増有利説を信じるかで大きく狙いが変わってくる。さてどうしようか。

 

 

本命はテリトーリアルに託してみよう。想定では単勝30倍超だったのでこの人気ぶりは残念だけど、最近はみんな馬券上手だからこういう人気には逆らえない。このレースに限らず、近年は内枠有利の傾向がどんどん強まっているので、内枠がプラスに働きそうな馬は積極的に買っていきたい。

前走でも本命に推して期待したけど、スローペースに嵌って伸びきれなかった。9着と大敗したようにも見えるけど、見返すと最後100メートルあたりまでは結構善戦していて、そこから謎の逆噴射で馬群に呑まれてしまったという内容。中山2000、しかも今の馬場なら決して上がりだけの勝負にはならないだろうし、ある程度ペースが流れて耐久力勝負になればオクトーバーSや福島記念で見せた先行力が物を言うのではなかろうか。去年は中段に構えて3着だったけど、今は2,3番手からの競馬が板についてきたのでもっと上の着順が狙える。

 

 

人気のヒシイグアスも先行馬でかつ元々実績のある馬なので、54キロはいかにも有利。しかし右回りだと4角を回るときにいつも首を傾けていて走りにくそうに見える。実際中山では2勝クラスを2度も取りこぼした。ハーツクライ産駒らしく東京だとあっさり2連勝していて、広いコース向きのサウスポーではなかろうか。

ディープボンドも4歳馬としては指折りの実績馬だけどは世代全体が低レベル。この馬自身も、大きい舞台で強い馬相手に好走したのは立派だけど、小回りで人気を背負ってマークされる立場でピリッとした脚が使えるだろうか。

斤量増のヴァンケドミンゴは前走も外を回した分だけ負けて強しだと思うんだけど、追ってからエンジンがかかるまで時間がかかるタイプに見える。福島ならロングスパート戦になりやすいけど中山内回りには向かないんじゃなかろうか。鞍上もこれまで( 0 0 0 4 )と相性が悪い。

バイオスパークは先行力もあってかなり有力だと睨んでいたけど、内枠で非常に安定した成績を残している馬で、大外枠があまりにも痛い。

ココロノトウダイは同世代の重賞で5,7,6着だけどいずれも大きく負けていて見せ場が無い。福島で3勝しているけど相手のレベルには疑問がある。そもそも中山金杯は前走福島組の成績が飛び抜けて悪い。近年でこそヤマカツエースとウインブライトが福島記念からのローテで活躍したけど、この2頭はもともと中山の重賞を勝っており、この2頭以外には連対が全くいないという死のローテ。中山と福島って似ているようで結構違う。 

 

 

あまり買いたい馬がいなくなってしまったので、ヒモ穴としてカデナに期待してみたい。昨年のこのレースは15番枠から追い込みに懸けて11着に負けているけど、先行決着の中で0.6秒差なのでこの馬なりによく走っている。その後は一線級に交じって健闘しながら一年を終えた。トップハンデ58キロが示すように実績という点では随一の存在。

この馬の買い時はシンプルで、追込み馬によくあるように、道中置かれすぎずロスなく運べる少頭数の時こそ強い。13頭立て以下では( 2 3 0 3 )で、着外3つも大阪杯4着、毎日王冠4着、天皇賞8着という立派な内容。一方で14頭立て以上では( 2 0 3 14 )となり、連に絡んだのは中段に付けた未勝利戦と14頭立てで前潰れになった小倉大賞典の2つだけ。今回は17頭立てだし、しかも追い込み馬の成績が近年非常に悪いレースなので本来は買えないパターン。しかし今回はもともと有力と思われた馬が外枠に固まったし、年末の中山の馬場は過去20年に無いほど時計がかかった。さらにCコースへ替わることを考えると、直線かなり横にばらける可能性も考えられる。そこで上手くロスなく回って内を突けるようならチャンスがあるかもしれない。

 

 

◎テリトーリアル

カデナ

▲バイオスパーク

△ココロノトウダイ 

 

年末の休みに力を入れて予想したわりには、バイオスパーク大外枠のせいでまとまりのない予想になってしまった。