皐月賞

皐月賞は馬券の相性も良いので毎年楽しみにしているけど、今年はイマイチ気分が盛り上がらない。もちろん新型コロナの影響もあるけど、3戦無敗の2歳GI馬2頭がぶっつけ本番で臨むというローテに不満がある。トライアルがあるからこそGIが面白いと思うんだけどな。こういう休み明けの人気馬の実力が怪しければいっそ切って勝負したいところだけど、コントレイルもサリオスも相当強そうだし、困った。

良馬場のスピード競馬になれば人気3頭で決まりそうな気がしていたけど、今年は土曜に大雨。明日も良くて重馬場だろう。馬場適性が大きく勝負を分けることになりそうで、そこに一波乱の余地があるかもしれない。ただしキャリアが少ない馬ばかりの中でどうやって道悪巧者を見つけ出すのがよいか。

 

久々にデータらしいものをグラフ化してみよう。00年以降に行われた全ての芝重賞レース約20年分の勝率と単勝回収率が、馬体重によってどう違うのかを、馬場状態別にプロットしてみた。

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まず赤が良馬場で、当然ながらデータ数も圧倒的に多くノイズが少ない。勝率にも回収率にも表れているように右肩上がりの傾向で、基本的には「体重が軽い馬よりも重い馬の方が成績が良い」ことを示している。もちろん例外はいくらでもあるけど、統計的に見て、やせ細った馬よりも馬格がある馬の方が騎手を乗せて競走するだけの筋肉があるということだろう。

しかしそれが稍重(オレンジ)→重(水色)→不良(灰色)と馬場状態が悪化するにつれてグラフの傾きが右肩下がりへと変わっていくことがわかる。道悪では、馬体が重い馬はかえって不利になるのだ。その基準は大体500キロくらいだろうか。これを超える馬は、道悪では自分の体重の重さがスタミナを奪う。それに対して道悪では460キロ以下の小柄な馬の勝率が上昇する。時には信じられない大穴が出るものだから回収率は凄まじい値になっている。

ちなみに勝率の方でみると体重540キロ以上は不良馬場で勝率10%と一見高い値を示しているけど、これは単にデータ数が( 1 0 2 7 )と少ないからで、連対したのはキタサンブラック天皇賞・秋だけである。いろんな歴史を塗り替えたキタサンブラックのキャリアの中でも個人的にはベストレースではないかと思っていて、そもそも540キロもある馬が不良馬場の重賞を勝ったということ自体が歴史的出来事だった。

 

 

巨漢馬は道悪では来ないというこのシンプルな傾向を元に今年の皐月賞の作戦を立てるなら、まず2歳時から540キロ級の素晴らしい馬格を誇っていた人気馬サリオスを消すことができる。この馬は仕掛けどころの瞬発力はそれほどでもないけどいったんスピードに乗るとどこまでも伸びる。今後が楽しみな逸材だけど、道悪ではスピードに乗らないまま終わってしまう可能性がある。それに賭けることにしよう。

さらに大型馬に目を向けると、サドラーズウェルズ系でいかにも道悪が良さそうなデムーロ騎乗のダーリントンホール(526)や、単騎逃げが怖いキメラヴェリテ(538)が消える。500キロオーバーもダメだとすれば、トライアルを席巻した武豊が選んだマイラプソディ(508)や、スプリングSで非凡な瞬発力を見せたガロアクリーク(前走以外ではずっと500キロ超)なども該当して、いかにも臭い伏兵陣たちを一気に消すことができる。

 

 

 

馬体が軽い馬と言うと、コントレイル(462)、ブラックホール(430)、そしてビターエンダー(460)あたり。

この中から、本命には大外ビターエンダーを抜擢したい。

これまで4戦で2度出遅れているものの、先行した2戦はなかなか強い内容だった。東京2000の未勝利戦の勝ち時計は2.00.3。2週後にサトノフラッグが1.59.5のレコードを出しているので霞んでしまったけど、2歳戦としては歴代4位の好時計。それもサトノフラッグが前半59.3で流れる2歳戦としては異例のハイペースを中段に控えて最後末脚を伸ばしたのに対し、ビターエンダーは61.0のスローペースを3番手で追走して3馬身抜けだしてこの時計。勝負所でも追い通しの他馬を尻目にずっと持ったまま楽々と抜け出していて、その気になれば1分59秒台の走破も可能だったと思う。

12キロ増の休み明けで挑んだ京成杯では出遅れてしまい、直線でようやくエンジンがかかったところでゴール。続く共同通信杯では一転して好スタートからハナに立つ形。稍重でラチを頼ることもできず直線を向いてすぐダーリントンホールに並びかけられる展開だったけど、そこからが強い。一歩も譲らずびっしり叩き合って上がり2位の末脚を記録。最後はハナ差譲ったものの、Bitterender(=絶対に屈しない人)という名前に恥じない極めて高い勝負根性を示した。共同通信杯好走馬は最近皐月賞で非常に良い成績を残しているけど、今年は勝ち馬よりもむしろこちらの方が評価できる内容だったと思う。

無敗馬が4頭もいる今回のメンバーでは成績が一見地味だけど、もし未勝利戦がもう少しペースが早く1分59秒台だったなら、もし共同通信杯で首の上げ下げでハナ差勝っていたら、もっと注目される存在だったに違いない。祖父ステイゴールド、父オルフェーヴルともに晩成型。オルフェーヴル産駒の代表馬ラッキーライラック古馬になって見事な成長力を見せたし、皐月賞を勝ったエポカドーロや現役活躍馬エスポワールだってデビュー直後は取りこぼしを繰り返した。今が1戦ごとに成長している真っ只中。共同通信杯よりさらに成長してこれまで以上のパフォーマンスを見せてくれる可能性は十分ある。

今回は8枠18番。86年まで遡っても8枠が最も勝率が高く、特にサニーブライアン、ヴィクトリー、ウインフルブルームなどが人気薄でも先手を取って結果を残している。1角までの長いホームストレッチで、馬場の荒れていない外を通りながら内の様子を見つつ前のポジションを取りに行ける絶好枠だと思う。キメラヴェリテを前に行かせて2番手から押し切る競馬を期待したい。

 

◎ビターエンダー

○コントレイル

 

相手は素直にコントレイル。最内枠の福永が不安だったけど、道悪なら馬群が広がるから内で詰まるってこともないだろう。競走能力の高さは疑いようもない。馬連馬単一点ずつで勝負。

重馬場実績という点では当然弥生賞を勝ったサトノフラッグも気になるところ。ただデビュー戦では重馬場で最後走る気を失ってしまっている点も気になる。この馬はとにかくコーナーを回って加速していくのが上手いと思う。瞬発力に長けたタイプではないけどマクリながらのロングスパートができるという点で、昨年のヴェロックスと似たタイプだろうか。自分より弱い馬相手に大味な競馬はできるけど、同レベルかそれ以上の馬相手に戦う武器には欠けるイメージを持った。