大阪杯

馬券で勝つための手っ取り早いコツは、逃げ馬を狙うことである。1対1ならば後ろの馬に必ず最後捕まってしまうような馬でも、後続からの警戒が薄い大一番でマイペースでハナに立てれば一気にチャンスが生じる。直線を先頭で迎えるアドバンテージは、他馬の目標にされるリスクと引き換えとはいえとてつもなく大きく、近走成績からは考えられないような激走を見せることも珍しくない。

と言いながら自信が無くなってきたので一応念のため2010年以降の芝重賞1142レースを調べてみたところ、逃げ馬の勝率は9.5%、単勝回収率は154%に上っていた。10年以上前とはレース傾向全体がかなり変わってしまったように感じるものの、長期的に見たときの逃げ馬の回収率の高さは依然として続いているようだ。そういえば先週のGIも逃げ馬でしたね。

じゃあ逃げ馬を買い続ければ儲かるやん、という単純な戦略がなかなか上手くいかないのは、もちろん「どの馬が逃げるか蓋を開けてみなければ分からない」からである。実際その1142レースのうち、「前走で逃げていた馬」は勝率6.1%の回収率たった52%に留まっている。「毎回逃げることが想定されている馬」というのは、何度も逃げ続けるキャリアの中でどれくらいのペースで飛ばせばどのへんで潰れるのかといった手の内がすでにバレてしまっているので、後続にとってそれほど怖くない。怖いのは「普段逃げない馬が逃げる時」である。実際、単勝回収率154%に計上された逃げ馬たちを前走の脚質別に見ると、前走も逃げた馬の回収率は82%に留まる一方、先行198%、差し170%、追い込みに至っては437%である。普段は馬群でジッとしていることに慣れている馬でも、実際にはハナに立った時こそ本領を発揮する可能性を秘めている。

こういう「本来は逃げてこそなのに普段あまり逃げない馬」というのは少なからずいる。例えばスマートレイアー。追い込みを武器に3歳時から活躍した馬だけど、6歳を迎えてからの脚質転換で逃げて重賞2連勝、そこから更にもう一皮剥けた活躍を見せた。懐かしい馬だとバランスオブゲームもそう。GIIを6勝という最多記録を誇る活躍馬だけど、生涯3度だけ逃げたレースでは弥生賞を楽勝し、中山記念ではダイワメジャーに5馬身差をつけ、GI宝塚記念でもディープインパクトの3着に好走している。同時期の活躍馬ダイワエルシエーロも( 5 1 1 6 )のキャリアの中で逃げたレースは4戦無敗。春の天皇賞を7馬身差で逃げ切った大穴イングランディーレも、34戦のキャリアの中で他に逃げた唯一のレースは前年の日経賞1着だったわけで、逃げたら怖いことが分かっていればもっと警戒されても良かった。

他にも「生涯逃げたのが1,2度だけ」という希少なチャンスで結果を出した馬は数え上げればきりがない。そういう馬を狙い撃ちできればいいけど、なかなかチャンスが巡ってこないのが実際のところである。

 

今回もしかしたらそれに該当しないだろうかと思っているのがステイフーリッシュ。これまで一度も逃げたことはないけど、逃げ馬不在のGIで早々と陣営がハナ宣言。ブービー人気のこの馬の逃げに邪魔は入らないだろう。

堅実なもののG3すらなかなか勝てず、父ステイゴールドを彷彿とさせる戦績になってきたけど、これまで2番手で追走した経験が3戦あって、そのどれもが見せ場を作っている。京都新聞杯では4角で先頭に並びかけてロングスパートで後続を振り切って2.11.0の快時計で完勝。今年のAJCCでは直線後半までブラストワンピースを苦しめて2着。そして前走道悪の京都記念でも3着に好走した。京都記念は勝ち馬に少し差を付けられたけど、大逃げを前に見ながらの団子状態の先頭で、直線を向いて早々とクロノジェネシスに捕まる展開が厳しかった。縦長で流れる展開ならもっと見せ場を作れた可能性が高い。

後ろから行ったときはほとんど勝ち負けにも加われていない馬が、3-5番手で先行するとGIIIで3着を繰り返す堅実な馬になり、単騎2番手を確保するとGIIで一線級と真っ向勝負できるだけの力を獲得する。ではスタートからハナに立って一切揉まれることなく伸び伸びと走ることが許されればどれくらいのパフォーマンスを見せてくれるだろうか。

阪神内回り中距離戦と言えばステイゴールド産駒の大得意舞台でもある。人気は5強に分かれているけど、アーモンドアイ、サートゥルナーリア、ダノンプレミアムらを欠いていてレベルはそれほどでもなく、この馬でも勝ち負けに加わる可能性はありそうだ。

 

◎ステイフーリッシュ

○ブラストワンピース

▲ダノンキングリー

 

逃げ馬を狙う時は頭まで期待するのが鉄則だけど、さすがに何かに捕まりそうな気はする。特に岩田康誠阪神2000はやたら2着が多くて勝率が非常に低い。

相手筆頭は阪神2000大得意の川田将雅騎乗のブラストワンピース。逆にクロノジェネシス北村友一が今年騎乗停止連発で成績も低迷しているので嫌ってみた。あとは前走横綱競馬のダノンキングリー。