菊花賞

ここまでレベルが低いと感じる菊花賞は初めてかもしれない。皐月賞の時点では重賞勝ち馬が10頭いたはずが、半年たって重賞勝ち馬が3頭になってしまうのはなんとも悲しい。一頭大物がいてそれを避けたというわけでもないのに。
さらに雨まで降ってもう何でもありの雰囲気。「菊花賞は強い馬が勝つ」と言われたのも今は昔。さらに雨が降ってしまえば、単勝114倍のマイネルデスポットが逃げ粘った01年、その翌年10番人気ヒシミラクルに向って16番人気ファストタテヤマが突っ込んできた02年が思い浮かぶ。15番人気フローテーションが追い込んだ08年も直前まで雨だった。今年もそのレベルの爆穴が来ないだろうか。



本命は16番人気マイスタイル。
ダービーではまさかこの馬がハナを切るとは思わなかったけど、仮にあの展開を読めていたとしても、とてもこの馬が好走するとは想像つかなかっただろう。過去にダービーが超スローのよーいドンになった例は、07年ウオッカ、10年エイシンフラッシュ、13年キズナ、16年マカヒキが勝った年があるけど、例え逃げ馬が余力を残していも、それ以上にスタミナを残した後続17頭が殺到する中で東京の長い直線を逃げ粘るのはそれほど簡単なことではない。07年に逃げて2着に粘ったアサクサキングスはその後見事に菊花賞を制した。13年のアポロソニックは後続を引き離し気味に逃げてリードがあったことと、上位2頭以外は極めて低レベルな世代だったこともあって、上がり35.5でも何とか3着に残ることができた。そのまま引退してしまったけど、逃げれば崩れなくてその後も活躍を見込める馬だったと思う。他のスローの年の逃げ馬は馬群に沈んでいる。
それに比べて今年のマイスタイルはラスト3ハロン地点ですでにレイデオロに並ばれる展開。しかしラスト200メートル地点で交わされるまではしっかり叩き合いを演じて、最後1ハロンで力尽きたものの0.3秒差に粘りこんでいる。離しての逃げがハマったわけでもなく、上がり34.1を繰り出してアルアイン、ダンビュライト、ペルシアンナイトあたりを完封したのは立派。気分良く逃がすとかなりの粘り腰を持っている。


弥生賞でも逃げて2着に粘りこんでいて、大外一気のカデナにこそ交わされたもののダンビュライトやベストアプローチを完封している。マイスタイルすら捕まえきれないとはという形でダンビュライトの評価が急落したわけだけど、その後もダンビュライトやベストアプローチは世代のトップクラス相手に堅実に好走し続けているので、やはりあの弥生賞はマイスタイルの逃げっぷりを評価し直すべきだと思う。
神戸新聞杯では外枠からハナを取ることができずに先行策から真っ向勝負を挑むことになって、特に見せ場なく地味に7着に敗れた。しかし4着ダンビュライトとの着差は僅か0.2秒で、位置取りの差がそのまま出ただけ。レイデオロから離された2番手グループの中ではほとんど力差はないと言っていい。もともと2勝を上げたレースもいずれも3番手から抜け出してのものだし、必ずしもハナを切らなくてもいい。気分良く先行できさえすれば、容易くは先頭を譲らない底力を持っている。大外枠は残念だけど、下手に内を引いて穴人気するよりはノーマークで走りやすいかもしれない。昨日の京都も外枠の馬の好走が目立った。
キレ味勝負では分が悪いけど、今回は全馬初めての経験となる3000。距離が延びれば延びるほど強いハーツクライ産駒のこの馬なら、ディープインパクトやキングカメハメハの血を引く馬よりも上積みが見込める。1,2,3番人気で決着したダービーの1,2,3着馬が不在で、過去にないほどの低レベルさが懸念される今回の菊花賞。ダービー最先着馬が16番人気なら狙ってみたい。





対抗は黄金配合ウインガナドル。
ラジオNIKKEI杯、新潟記念といずれも早々と勝ち馬に交わされる厳しい展開ながら最後まで叩き合いに持ち込んで僅差の競馬に持ち込んでいるところに大舞台向きの底力を感じる。特に前走は一見前残りの競馬だったけど、レースラップは59.0-58.9のイーブンペースで、決して楽なペースで逃げたわけでもない。むしろ直線向いてすぐ、あと600メートルを残して早々と勝ち馬に交わされてしまう厳しい展開で、0.1秒差の4着に踏ん張ったことを評価したい。1000万条件すらなかなか勝てない今年の3歳世代の中では古馬相手に実績を残した方だろう。
東京2000を逃げ切った夏木立賞でもその素質の片鱗を見せていたと思っていて、先行馬や差し馬を完封し、最後追い込み馬が末脚を伸ばしてきた時にさらにもう一伸びして他の馬を突き放して勝っている。ハナを切ったレースでは( 2 1 1 1 )。馬体を合わせる暇なく大外一気で突き抜けられた寒竹賞が3着。いずれも崩れていない。今回も見事に内枠を引き当てた。少々穴人気してるけど仕方ない。
問題はここ2走が53キロと52キロでの好走だったこと。小柄なこの馬にとって今回初となる57キロは勝手が違いすぎるかもしれない。




皐月賞、ダービーと期待したクリンチャーも当然気になるところ。
母父に持つブライアンズタイムは菊花賞に強く、直仔は初期の大物ナリタブライアンやマヤノトップガンのほか、トーホウシデン、エリモブライアン、スカイディグニティあたりがここで活躍しているし、母父となってもスリーロールスやビートブラックを輩出した。去年のディーマジェスティは4着に敗れたけど、秋以降の大不振を思えばむしろ菊花賞は好走した方と言える。同系統のリアルシャダイに負けないくらい長距離種牡馬としての実績を持っている。
菊花賞向きの資質は当然あると思うんだけど、皐月賞で好走しすぎた反動か、前走がいかにも負けすぎでちょっと食指が動かない。この馬は前に行かないと何もできないけど、前に行くスピードがない。雨の3000で内枠を引いたここで前に行けないならもうどうしようもないのでここが狙い目という感じもするんだけど、前走好スタートから押してもムチを入れてもまるで動かない手応えを見ていると、しばらく大きな期待をしにくい馬になってしまった。ヒモまで。


それよりはベストアプローチはどうだろう。
18頭中唯一サンデーサイレンスの血を含まない馬で、サドラーズウェルズ系のいかにも長距離・重馬場向き血統。これまで一線級と戦ってきて末脚勝負で見劣ってきたけど、青葉賞2着といい、スタミナを問われると高い能力を発揮しそう。本番で一変する藤原英昭厩舎であることにも注意したい。




◎マイスタイル
○ウインガナドル
▲ミッキースワロー
△ベストアプローチ
△ポポカテペトル
△ダンビュライト
△クリンチャー



ディープインパクト産駒は3000メートル以上の単勝回収率がわずか5%しかないのでまとめて消し。
キセキも瞬発力に特化したタイプで、時計のかかったすみれSの負け方を見るとここで一番人気なら黙って消してみたい。


ミッキースワローは前任の騎手が下手糞すぎただけで、実は大物でここで圧勝する可能性もあると思う。本当はこの馬で頭固定しようかとも思ったんだけど、前走の勝ちっぷりがあまにも鮮やかすぎた。ドリームジャーニーとかイコピコとかフェイトフルウォーとかクォークスターとか、菊花賞トライアルでキレキレの末脚を見せて評価を上げた馬は本番でコケる例が多い気がする。それよりは軸は大穴から入りたかった。


前走古馬1000万下を好時計で快勝したポポカテペトルもちょっと気になる。クロフネの近親で道悪の3000はどうかという気もするけど、青葉賞で先行して4着も立派だし一応抑えるか。
あとは重馬場得意そうなダンビュライトまで。



追記。ポポカテペトルはディープインパクト産駒でした。点数増えるの嫌だし消してしまおうか悩む。