安田記念

確固たる逃げ馬不在でも安田記念は知らず知らずのうちにペースが上がりがち。単純な前残りにはなかなかならないけど、スローに慣れ切った差し馬が意外と直線伸びなかったり、先行馬がタフに伸び続けてそのまま残ったりする。スローからの瞬発力勝負でも、高速決着でもなく、スピードと末脚とタフさが求められる。
勝ち馬の血統も実に多彩で、過去31回のこのレースで28頭の異なる種牡馬の産駒が勝っている。こんなGIは他にはないのでは。その種牡馬の中でもサンデーサイレンスが( 1 2 2 39 )で勝率2%、ディープインパクトが( 1 1 2 20 )で勝率4%と圧倒的に低い数字を残しているのも特徴。東京マイル重賞で強いフジキセキが安田記念だけは馬券に一度も絡んでいないのも面白い。他のマイル重賞とは全く違う資質が求められるレースだ。


東京マイルGIの中でもNHKマイルCともヴィクトリアマイルとも違う点は何だろうか。開催後半の馬場の荒れ方ももちろん違うけど、それ以上に斤量の影響も大きいと思われる。1600以下の重賞で定量58キロを背負わされるのはこの安田記念だけ。多くの馬にとって背負い慣れていない斤量での長い直線のスピード決着は相当過酷なものだろう。リアルインパクトやスピードワールドなど、それほど強くもない3歳馬が( 1 0 1 5 )とそれなりに活躍しているのも、54キロで出走できる点が大きかったと思っている。
単純に馬体重が重い馬ほど勝率が高くなっている傾向もある。また前走重い斤量を経験しているだけでも武器になる。58キロに設定された96年以降、前走と比較して斤量が増えた馬は勝率4.6%の回収率34%、増減なしは勝率5.0%の回収率67%。そして今回減った馬は勝率14%の回収率211%に達する。混戦模様のメンバー構成だけに、斤量を苦にするかどうかという点は最後勝負を分ける重要なポイントになりそうな気がする。



本命はレッドファルクス。
CBC賞やスプリンターズSで直線最後に見せた末脚も見事だったけど、58キロを背負って後方から突き抜けた前走京王杯SCはなお強かった。重馬場が合うタイプでもなさそうだし、距離が伸びたことがプラスに働いたと思う。スプリントGIを「スローの展開でも」差して勝てる末脚を持つ馬は、デュランダル、ロードカナロア、ストレイトガールのようにマイルGIでも圧倒的強さで突き抜けている。スプリント戦に慣れていれば1600なら少々のハイペースでも何ら苦にせず追走できる。そこから東京向きの末脚を繰り出す馬がいると、そこらへんのマイラーでは敵わない。
騎手も心強い。今の東京は内を避けて回る馬が多いけど、なんやかんやで外を回すよりは内の方が伸びている。そんなとき迷わず内を突いてくれるのがデムーロだと信じている。


今回の出走メンバーで前走58キロを背負っていたのはあと一頭、ロゴタイプ。58キロ以上では( 1 2 3 3 )と走り慣れていて、着外に負けたのは天皇賞5着と、ダートの根岸S、休み明け超スローの毎日王冠の3つだけ。去年もまさか超スローの瞬発力勝負でこの馬が来るとは想像できなかったけど、後ろから来る馬の方が先にバテるような展開の中で逃げ切ったのは、馬場や通ったコースの影響だけでなく斤量を苦にしないこの馬の長所が活きたのではないかと思っている。今年もそれほど人気していないけど、天皇賞でも香港でも中山記念でも力のあるところを見せたし、再び有力と見た。


斤量に慣れていると言えば香港馬ビューティーオンリー。香港でも1分33秒台の速い時計のときに特に好走している馬で、日本の速い馬場にも対応できるようなら勝ち負けになりそう。


ほかに58キロ以上で実績があると言えそうなのはイスラボニータ、ステファノス、ヤングマンパワー、クラレントあたりか。ただヤングマンパワーは降級戦を僅差で勝っただけなので実績と呼ぶほどでもないが。クラレントも過去に京成杯AHと安田記念の好走があるけど、最近は斤量が軽くなった時に好走しているようにも見えて、さすがに往年の体力はないかも。人気ないから一応押さえるけど。
多少人気でもイスラボニータとステファノスは切りにくい。少し点数が多くなるけどまとめて拾うか。


◎レッドファルクス
○ロゴタイプ
▲ビューティーオンリー
△ステファノス
△イスラボニータ
△クラレント
△ヤングマンパワー