ジャパンCと騎手

ダビスタのスマホアプリでは出馬表の印も馬の成績も、騎手によって驚くほど変わる。デムーロが乗ると◎4つは付いて7-8馬身はつけて圧勝する馬が、強制的に国分に乗り替わりになると無印になって二桁着順で惨敗する。
何とも極端な仕様な上に、レースが始まるまで騎手が誰になるか分からないのでゲームとしてはとても困るんだけど、実際の競馬での昨今の外人騎手の活躍を見ると、こんなゲームが出来上がるのもある程度仕方ないかもしれない。シングウィズジョイをGIで持ってくるクリストフ・ルメール、出遅れたクイーンズリングを内を突いて勝たせてしまうミルコ・デムーロ、マイルGIでネオリアリズムを無理なく先行させるライアン・ムーア。直線横一杯に外に広がる日本人騎手。やっぱり競馬は騎手だなと思わずにいられなくなる。


これまで「競馬は騎手だ」と何度も思わされてきたけど、その象徴的なGIレースはジャパンCではなかろうか。


01年、最強古馬テイエムオペラオーを一騎打ちで沈めた3歳ジャングルポケットの鞍上はオリビエ・ペリエだった。前週のマイルCS、翌週の阪神JFも勝って史上初の3週連続GI制覇を達成。それまでにも外人騎手は短期免許で来ていたけど、この大記録が本格的な助っ人外人騎手全盛時代の幕開けだったように思う。その後しばらくペリエは冬の風物詩のように大レースを勝ちまくった。
翌02年の中山開催はランフランコ・デットーリの独壇場。土曜のJCダート、日曜のジャパンCをいずれも単勝20倍超の穴馬で連勝した。日本馬圧倒的有利な現代のジャパンCにおいて、デットーリだけは( 3 0 3 2 )という驚異的な成績を残していて、しかも3度の勝利全てがハナ差。デットーリでなければ勝てなかったと言われても仕方ない。


08年、前走G3を勝っただけの単勝40倍スクリーンヒーローが大穴を開けたのはデムーロへの乗り替わりだった。高い能力を秘めていた馬だけど、その片鱗を見せたのは生涯で僅か2,3度だけ。もしこのジャパンCで消極的な日本人騎手が乗っていたら、「どうせ勝てないから他の馬の邪魔をしないように」と最初から諦めモードで後方待機のまま終わっていたかもしれない。そうなると種牡馬入りもままならなかっただろうし、モーリスやゴールドアクターも生まれて来なかった。
翌09年の主役はウオッカ。毎日王冠、天皇賞・秋と武豊鞍上でカンパニーに連敗し、スクリーンヒーローにも遅れをとったことで、ジャパンC本番では角居調教師がリーディングジョッキーの武を降板させたことが大きな話題になった。乗り替わったルメールが見事にハナ差でウオッカを勝利に導いたことは、20年近く続いた武豊時代の終わりを告げるエポックメイキングなレースになった。


さらに衝撃的だったのは14年。ハイペースを3番手で追走したエピファネイアが直線でも全く手応えを失うことなく独走し、世界王者ジャスタウェイを4馬身突き放した。それまで折り合いに専念するあまりなかなか成果を出せなかった福永から、クリストフ・スミヨンに乗り替わった直後の圧勝劇だった。
そして昨年、内有利な馬場状態で、内の絶好位を確保したのはムーア騎乗の7番人気ラストインパクト。最後はショウナンパンドラの末脚に屈したものの、連勝街道驀進中だったラブリーデイを下したのは見事だった。ムーアは13年にもジェンティルドンナでジャパンCをハナ差で制している。このレース以降ラストインパクトの末脚はすっかり鳴りを潜めてしまった。


日本馬が圧倒的に強くなったにも関わらず、01年以降ジャパンCを制した日本人騎手は岩田康誠(3勝)、武豊(2勝)、池添謙一、佐藤哲三の4人だけ。ジャパンCほど騎手の腕が影響するGIはない。今回も外人騎手か、あるいは外人にも負けない気概のある剛腕ジョッキーを選びたい。