有馬記念

今年の前半くらいまで王道GIの上位はほぼ5-6歳世代で占められていたけど、今年後半戦からは4歳馬の台頭が目立っていると思う。当初クラシック戦線を引っ張ったハープスター、イスラボニータ、トゥザワールド、ワンアンドオンリーといった馬たちが消えていって今やヌーヴォレコルトくらいしか残っていないと思ったら、エイシンヒカリ、モーリス、ショウナンパンドラ、さらにゴールドアクターにアルバートと晩成馬がどんどん本格化してくる。マリアライトやアドマイヤデウスもいるし、これほど活躍馬が入れ替わった世代も少し珍しいかもしれない。
その4歳世代のトップホースの中でいまだ重賞未勝利なのがサウンズオブアース。主な勝ち鞍は500万条件はなみずき賞。今年の有馬記念はこの馬から買ってみたい。
週中の予想オッズではどの新聞も8-10番人気くらいの想定だったけど、蓋を開けてみたら単勝以外では全て5番人気で、実質オッズひと桁台という人気ぶり。デムーロ効果だろうか。ただこういう流れの穴人気には逆らわないほうが良いと思うので初志貫徹したい。


サウンズオブアースの弱点はとにかく良い脚が長く続かないということ。神戸新聞杯でも一旦はダービー馬を捕らえて先頭に立ったものの差し替えされて2着。春の天皇賞でも直線で外の馬群から体半分抜け出してからの急失速だった。超スローからの瞬発力勝負になった京都大賞典も同じ。直線前半では勝つかという勢いで突っ込んできたけど最後100メートルでしっかり脚色が鈍って、終わってみたらラブリーデイに1馬身以上の差をつけられた。ジャパンCも1角での不利も痛かったけど、ラブリーデイをぴったりマークした位置から直線伸びかけたところで5着が精一杯。最後の最後でショウナンパンドラに突き放された。GIを勝つ馬たちとは直線最後の一伸びで大きな差が出ている。


しかしそれでもクラシック戦線に乗って今もなお一線級のレースで勝ち負けしているということは、一瞬しかない末脚がそれだけ強力な武器であるということ。父ネオユニヴァースはヴィクトワールピサを筆頭に、産駒の芝重賞23勝のうち12勝が中山に偏る中山専用種牡馬。サウンズオブアースの持ち味も直線の長い東京では活かせない。中山2500でこそという気がする。
これまでで唯一の中山経験である日経賞がもったいなかった。デムーロが痛恨の出遅れをかまして4角まで最後方。さらに直線外に持ち出そうというところで前をカットされる絶望的な展開。そこから実質ラスト1ハロンの競馬で目を見張る末脚を繰り出して4着まで追い込んだ。スムーズなら勝っていた、少なくとも2着は余裕だったはずだし、日経賞の実績は有馬記念に直結することもよく知られたこと。
もう一つこの馬が運がなかったのは、本格化した3歳秋以降、毎回のように外枠を引いてしまったこと。特に春の天皇賞やジャパンCのトラックバイアスは酷かった。唯一内を引いてうまく脚を溜めることのできた菊花賞が一番惜しい競馬だった。今回は中の枠だけど本来スタートは上手い方なのでそこそこのポジションがとれそうだし、今までとは一変する末脚を繰り出してくる可能性は十分ある。秋3走目で体調はかなり良さそうなのも良い。
菊花賞では世界レコードと0.1秒差の2着、超スローで2.23.8をマークした京都大賞典でも2着と、馬場は速いほうがいいタイプ。そういう意味では中山は向かない可能性も危惧したけど、今の中山の芝は先週あたりから結構速い時計が出ている。先週の芝1200古馬準オープンで1.08.1、芝2000古馬オープンでは1.59.1。土曜も500万下の芝2000で2.00.0、準オープン芝2500ではスローで2.33.7が記録されている。いずれも06年以降の10年間ではなかなかない水準の時計で、暮れの中山としてはかなり速いほう。これなら十分力を出せると思う。
有馬記念は外人騎手が強いレースだし、デムーロも中山のGIは最も得意とするところ。今年デムーロとルメールがJRA所属になったことは、アンカツ移籍以来の中央競馬の大きな転換点だった。圧倒的な強さで春2冠を制し、ダートGIでは大波乱も演出し、2歳戦では武豊の大偉業まで阻止したデムーロが最後のグランプリも持っていくという結末は、今年を締めくくるのに相応しい。





サウンズオブアースの一瞬の脚が活きる展開なら、ラブリーデイも外せないところ。サウンズオブアースと同レベル以上の瞬発力に加えて、安定した脚質や末脚の持続力では遥かに上を行っている。
ただ距離には不安がある。有馬記念はジャパンCよりも必要な距離適性自体はむしろ短くなると思っているけど、それでも、中距離では無類の強さを見せながら2400では最後失速、3000では掲示板にも載れていないという点は見過ごせない。過去の中距離王者でもここまでハッキリ距離の壁を見せる馬はあまりいなかった。本来はマイルくらいがちょうど良い可能性もあって、有馬はやはり少し長い。長距離戦向きのスタミナという点で、菊花賞2着のあるサウンズオブアースに分がある。
あとはGIで人気を背負った川田というのも不安。人気を背負った途端に乗り方が消極的になる。実際他の騎手がラブリーデイに乗ると大体2-3番手から競馬を進めるけど、川田は超スローの京都大賞典で10頭中5番手、4角では6番手まで下げたし、ジャパンCでも好スタートから隊列が整うまで全くポジション争いに加わらなかった。1角で外の馬がごちゃついているうちに最内の利が出て結局6番手に納まったけど、あのトラブルがなければおそらく8-9番手まで下がって全く別の競馬になっていたはず。今回は先行馬も結構多くて内のポジション争いはかなり激しくなるはずだけど、この馬だけは前走で早めに抜け出して最後差された苦い経験に加えて距離不安もあるので、川田が慎重に乗るとしたら想定よりもかなり後ろのポジションに回る可能性は結構高い。先行策からのスムーズな競馬ができなかったら、この馬の強力な武器が一つ削られるわけで、たとえスタミナに問題がないとしても勝ちきれるかは怪しい。


菊花賞が強い競馬だったリアファルは警戒したいけど、G2を1つ勝っただけの実績のわりにさすがに人気しすぎた気はする。netkeibaの週中予想オッズで1番人気になってそんなバカなと思ったけど、実際に単勝以外では全て2番人気という売れ具合。
この馬の不安は、今の中山はとにかく逃げが難しいということ。特に秋と冬の開催の芝重賞では09年を最後に逃げ切りが一つもない。今開催も逃げ切りは33戦中僅か2回で勝率5%。坂を上がると逃げ馬は最後しっかり後続に捕まってしまう。
近年の有馬記念で馬券に絡んだ逃げ馬のほとんどはノーマークの楽逃げによるもの。04年2着のタップダンスシチーは破格のレコードが出る超高速馬場で前が止まらなかったし、ダイワスカーレットの08年も力は要るけど前有利の馬場状態だった。07-09年は中山で行われた芝GI12戦中6戦が逃げ切り、しかも5つは伏兵によるもので、この時期の中山はとにかく逃げが有利だった。2010年以降中山GIで逃げ切りは1つもないことを思うと今とは馬場の傾向が全く違う。この厳しい条件でしっかりマークされて逃げ切るにはよほど力が抜けていないと難しいんじゃないかと思う。


ゴールドシップは人気しているのは単勝だけで、連勝馬券では上位2頭からは少し離れた3番人気。脚質的にヒモ向きなのはリアファルよりむしろこっちだと思うんだけど。
前走ジャパンCは休み明けの府中で伸びない外を回して0.4秒差10着と、思ったよりもかなり健闘した。全盛期でもジャパンCを走ればこんなもんだったと思う。それほど力が落ちていないなら、今年も3着くらいに届いてナイスネイチャに並ぶ大記録を掴んでもおかしくない。


ゴールドアクターは57.5キロを背負ったオクトーバーSが圧巻。スローの展開で3番手で先行して、ダントツの上がり1位の末脚で後続を突き放して勝っているところが凄い。トゥインクルに0.6秒差、ジャパンCで上がり最速で0.5秒差に健闘したショウナンバッハには1.0秒差をつけていて、他の路線組と比較しても全く劣らない。息の長い末脚の持ち主で、ジャパンCに出ていたら勝っていたんじゃないかとすら思っている。中山向きの脚を使えるかどうかは不明だけど、この人気なら押さえておきたい。
アルバートもステイヤーズSの圧勝で一気にグランプリの注目株になったけど、思ったほど人気しなかったのは過去のステイヤーズS組の成績がパッとしないからだろうか。ただこの馬は札幌2000でシュヴァルグランを下した500万条件戦でもかなり強い競馬で好時計をマークしていて、この時点で札幌記念に出ていたとしても勝ち負けだったのではと思っている。一介のステイヤーではないと思うし、中山向きなのはむしろこっちか。


あとは内枠を引いたヒットザターゲットか。中山の馬場も良いし、阪神の成績を見る限り坂は問題にしないだろう。この馬の一瞬の脚をいかせるのはジャパンCではなく有馬のほうだと思う。人気もないのでお楽しみ馬券に。突き抜けて頭までという可能性ならむしろゴールドシップよりも怖い。


◎サウンズオブアース
○アルバート
▲ゴールドアクター
△ヒットザターゲット
△ゴールドシップ
△ラブリーデイ


ゴールドシップとラブリーデイは三連単のヒモに留めて、◎からの馬連3点をメインにするか。
まあ買い方は直前まで悩みます。どれか消してラストインパクトと入れ替えるかも。鞍上の不安を加味しても、ジャパンC最先着馬がこの枠でこの人気なら悪くない。


キタサンブラックは中山向きの強い馬だとは思うけどリアファルよりは下だろう。この2連勝は展開に恵まれすぎたと思うし、ちょっと人気しすぎたか。
アドマイヤデウスも穴臭いけど買いにくい。日経新春杯と日経賞を勝って、ここ3戦は外枠を引いて惨敗。人気を落として有馬本番で内枠を引いて鞍上岩田となればいかにもという感じはする。ただそれでも天皇賞とジャパンCの走りには全く見所を感じなかった。同じようなパターンで穴をあけたトゥザグローリー、エアシェイディ、アドマイヤモナーク、コイントス、ダイワテキサスあたりは秋競馬で見せ場のある走りをして上り調子で有馬記念を迎えたと思うんだけど、この秋2戦何の見せ場もなかった馬に有馬で一変するところまでは期待しにくい。岩田も秋以降別人のように調子が悪いし。