高松宮記念

高松宮記念は中京競馬場の芝の影響をモロに受ける。それだけ中京の芝の移り変わりは注意を要する。GIの中でも毎年これほど馬場状態に左右されるレースはあまりないのではなかろうか。


02年は開催後半にBコースで施行されるようになってから、1200のレース7戦全てにおいて逃げ馬が連対していた*1。そのうち1番人気だったのはたったの1頭。中には11番人気で2着に逃げ粘った馬もいた。そして迎えた最後の高松宮記念では、前半32.9の猛ラップで飛ばしたショウナンカンプがそのまま後続を3馬身ちぎり捨てて1.08.4のタイムで逃げ切りを納めた。


03年は一転して逃げ馬には厳しい馬場状態。1開催期間で行われたスプリント14戦のうち、逃げ馬はわずかに1勝、2着2回。開催後半になると差し、追い込み馬の台頭も目立つようになっていた。ハートランドヒリュが名鉄杯で大外からごぼう抜きを決めて生涯最後の勝利を挙げたのもこの時だ。短距離では完全に差し有利の馬場だった。
この年の高松宮記念では前年の覇者ショウナンカンプが単勝1.5倍の一本かぶりで人気を集めた。そしてテンの3ハロンは前年と全く同じ32.9。その結果、必死に先行したエコーエディ、カフェボストニアン、マンデームスメ、ナムラマイカらはことごとく14着以下に沈没した。直線半ばまで粘りとおしたショウナンカンプさえも最後は7着に沈んだ。そして追込み一手のリキアイタイカン、テイエムサンデー、ゴールデンロドリゴ3頭が揃って掲示板に乗った。
ここで差し馬に有利と書いたが、それはとりあえず短距離の話。これが中・長距離になると当然勝手が違ってくる。馬場が荒れてスピードが出なくなるとスプリントでは逃げ馬が捕まるが、長距離では逆に後続が追走だけでバテてしまって結局気分良く逃げた馬が残ってしまう現象が起きる。事実、開催後半の1800、2000、2500の合計11レースでは逃げ馬が4勝を上げた。連対22頭のうち15頭は最終コーナーで3番手以内のポジションをとっていた。


04年の春の中京は今度は例年になく逃げ馬にとって有利な馬場で行われた。開幕週の中京記念から単勝160倍のメイショウキオウが逃げ切る場面も見られたが、その傾向がより顕著になったのはBコースへと替わってから。芝全体18レースのうち逃げ馬が10勝している。特に最終週は土曜日の芝4レースが全て逃げ切り。日曜も1200で行われた3レースのうち最初の2つは逃げ切りだった。
そして最後の1つがGI高松宮記念。結果的にはサニングデール以下差し馬3頭で決まったとはいえ、前半32.9で逃げたギャラントアロー、アタゴタイショウ、テンシノキセキ、カフェボストニアンら先行集団がみなバテることなく1分08秒台前半の好タイムでゴールしているのだから、馬場自体は明らかに前有利だった。もし前半3ハロンを33秒台前半で逃げることができていたなら、ギャラントアローがGI馬になっていた可能性が高い。
これほど逃げ馬に有利な高速馬場で中京が最終週を迎えることは極めて稀だと思う。


05年は前年とは打って変わって、古馬1000万でも1分09秒台後半を要する時計のかかり気味な馬場。さらに最終週の週末前に降った雨の影響が強く出て、内はほぼ壊滅状態。スプリントは差し馬天国となり、生涯最高のデキで挑んだアドマイヤマックスが大外枠から突き抜けて悲願のGIタイトルを手に入れた。




このように馬場の傾向は毎年コロコロ変わる。過去5年のデータで差し馬の連対馬が何頭いて〜とか漁ってもあんまり意味はない。


では今年はどうか。


開催1〜2日目はとにかく好時計がバンバン飛び出ていた。スプリントでは古馬500万でサンライズアタックが1.08.7、ウインファンタジアが1.08.6と高松宮記念並みの好タイム。1800の中京スポーツ杯ではサンバレンティンが過去10年の春開催でも断トツの1.46.9をマーク。中京記念ではマチカネオーラが1.58.2という驚異的なレースレコードで勝利した。
これらのレースに共通していたのは、とにかく前半からペースが軒並み速かったこと。例年以上に騎手たちが中京の前残りを意識していたのだろう。古馬500万のスプリントで前半33秒を切ったり、中京記念では1000の通過が57.7だったり。その結果開幕週から差し馬がそれなりに届く光景も目立っていた。
血統的にはスペシャルウィークが2勝を上げたほか、中京記念で1,2,3着を独占したサンデーサイレンスが活躍した。スピードがいかせる馬場ということで、1200では逃げと先行馬が有利だった。


この傾向が開催3〜4日目にはもう完全に消えていた。前週とは全く違って時計のかかる馬場状態。ミュゲドボヌールが勝った古馬1000万は1.09.3は遅すぎる。プリティメイズの末脚は全く発揮されなかった。
1200でももはや差し馬のほうが有利な状況になっていた。活躍したのはブライアンズタイム産駒。


Bコースに替わった5〜6日目は、土日通じてやや重から重。スプリント3レースはもう完全に差し馬の独壇場になっていた。三河特別では単勝35倍のエーティーホーオーが4角7番手から突き抜けて快勝。3歳未勝利でも4角7番手にいた単勝12倍と単勝360倍の伏兵2騎が1着、3着。豊橋特別も同じような位置にいた差し馬が上位を独占した。
興味深いのは、中・長距離のほうは逆に完全に逃げ馬有利の現象が起きていたこと。フリージア賞ではホーマンアラシが楽に逃げ切り、金山特別はオナーチェイサーが5馬身ぶっちぎり。名鉄杯でもサウスポールが5馬身差で圧勝した。
名鉄杯は前半800の通過が47.0、1000の通過が58.8で、後半800が49.8を要する完全な前傾ラップ。それでも後続馬は誰もサウスポールを捕まえることができなかった。差し馬の上がりは軒並み37秒〜38秒。みんなバテバテ。やや重という公式発表以上に力のいる馬場状態だったと言える


となるとやはり今年は03年と同じ差し馬場タイプになる可能性が高い。
今週末は雨は降らなさそうだが、それでも一旦荒れた馬場が突然回復するとも思えない。この調子で力のいるコンディションで行われれば、1200はほぼ間違いなく差し競馬。しかも高松宮記念はこの低レベルメンバー。1.08.7くらいが決勝ラインになると思う。


枠別に見ると、開催6日間を通して明らかに内枠のほうが活躍している。特に1200では6〜8枠で勝利を納めたのがわずかに1頭しかいない。
しかし去年も、春の中京で行われたスプリント17戦のうち1枠〜4枠の馬が13勝を上げていたが、最後の高松宮記念は大外枠のアドマイヤマックスなど外枠の馬が活躍している。今年も結局最後には外枠のほうが有利になっている可能性が高い。


枠に関わらず、ギャラントアロー、コパノフウジン、アイルラヴァゲイン*2、トウショウギア、オレハマッテルゼ、ゴールデンキャストあたりの中途半端な先行馬は消し。
ブルーショットガンが来るにはあともう1秒くらい時計がかからないといけない。タマモホットプレイは京都の溜める競馬になれすぎた。シルクロードSで2㌔のハンデをもらってタマモと同じようなレースをしたマイネルアルビオンも恐らく同じような感じで沈むと思う。
リミットレスビッドは一昨年のCBC賞で僅差の3着の実績があるが、あのレースは16頭中15頭が上がり33.9〜34.5の時計を計時した末脚勝負のレースであって、実質的には京都でのレースに似ている。中京で本格的な差し競馬になればこんなものではすまない。
マルカキセキは実力は問題ないが、去年夏からの活躍で年末ごろからいいかげんデキが落ちている気がする。前走で18㌔減っていた馬体が気がかり。



中舘 ウインクリューガー
江田 カネツテンビー
四位 キーンランドスワン
デム シンボリグラン
池添 シーイズトウショウ
内田 ネイティヴハート
岩田 プリサイスマシーン
福永 ラインクラフト


まだ8頭も残っている。あとは枠順発表を待とう。

*1:4勝、2着3回

*2:除外?