シルクロードS

今年から全体的に斤量が重めに設定されたことが馬券にどう影響するか考えるため、年の初めの日記で過去のレースの斤量の影響について考察した。おさらいすると、58キロの重い斤量を背負った馬は、2400を超える距離ではむしろ期待値が大きいが、短距離では不利の方が大きい。しかし唯一の例外が1200m戦。短距離戦の中でも試行回数の多い1200だけはなぜか、58キロを超える馬の回収率が非常に高いのである。

シルクロードSを検討するにあたって改めてその傾向をもう少し把握しておきたい。

 

2010年から2012年までの13年間、芝1200で58キロを背負った馬の成績を調べてみると、クラス別にはっきり傾向が分かれた。
-条件戦 ( 0 3 1 38 ) 勝率0%

-オープン特別 ( 5 4 5 42 ) 勝率8.9%、回収率150%、

-GIII ( 9 3 4 33 ) 勝率18%、回収率236%

-GII ( 2 1 1 2 ) 勝率33%、回収率91%

条件戦の1200だと58キロは非常に不利なのだ。しかしオープン特別以上になると58キロを超える馬の期待値が一気に高くなる。オープン以上だと58キロだけでなく58.5キロでも( 1 0 0 2 )で勝率33%の回収率116%、59キロでは勝利こそないものの( 0 6 2 10 )で連対率は33%を維持している。

人気別に見ても、58キロ以上の馬はどの人気でも万遍なく活躍しているように見える。稀に飛び出る大穴のおかげで回収率を維持しているわけではなさそうだ。

頭数別に見ると、17頭立て以上のレースでは58キロ以上を背負った馬は( 1 1 1 20 )で勝率4.3%の回収率42%と振るわないことがわかった。多頭数でごちゃつくレースでは、重い斤量を背負うと馬群を捌くときに不利になるということだろうか。

 

脚質別に見ても、58キロを背負った馬は逃げから追い込みまで一見どこからでも回収率が高い。ただ枠順別に見てみると、2,3枠と6,7,8枠が勝率・回収率ともに高く、1,4,5枠は今のところ結果が出ていないというちょっといびつな形をしている。そこで内枠と外枠で分けて、脚質の傾向を探ってみた。

1,2,3枠では、逃げ( 2 0 1 2 )で勝率40%、先行( 3 0 0 6 )で勝率33%、差し( 2 1 2 8 )で勝率15%、追込( 0 1 0 14 )で勝率0%。前に行くほど成績が良い。重い斤量を背負って内枠に入って勝てるのは、前に行ける馬だけ。後方で馬群に包まれるともう勝てない。

6,7,8枠では、逃げ( 1 0 0 1 )で勝率50%、先行( 3 5 1 8 )で勝率11%、差し( 2 2 2 12 )で勝率11%、追込( 3 0 2 18 )で勝率13%。外枠を引くとむしろ後方から直線一気に賭ける馬の方がチャンスがある。外枠から逃げて勝った唯一の例であるナックビーナスは、9頭立ての少頭数だったので枠の影響がほぼなくて済んだ。枠の内外によって特異な脚質がはっきり分かれていることがわかる。

 

もう一つ、馬体重から分析してみても興味深い。

-440-459キロ ( 1 0 2 2 ) 勝率20%、回収率170%

-460-479キロ ( 6 1 0 14 ) 勝率29%、回収率677%

-480-499キロ ( 1 2 3 27 ) 勝率3%、回収率16%

-500-519キロ ( 3 3 3 19 ) 勝率11%、回収率62%

-520-539キロ ( 5 2 2 12 ) 勝率24%、回収率150%

520キロ以上の巨漢馬は斤量を苦にしないというのは想像通り。一番頭数が多い480-519キロの馬たちはあまり成績が良くないことがわかる。面白いのはそれより下、479キロ以下の馬体の馬たちだ。このあたりのちょっと小柄な馬の方が、なぜか58キロを背負った時の勝率・回収率が非常に高い。520キロ以上の馬たちを脚質別に見てみると、逃げ・先行馬が強く、追込みで勝った馬はいない。一方、479キロ以下の馬たちを見てみると、差し・追込みでこそ好成績を上げている。巨漢馬に人気馬が多いのに対して、大穴が目立つのはこっちのケースだ。

 

長くなってきたのでいったんまとめると、「1200では58キロの馬が強い」と言っても、大きく分けて2つの好走パターンがある。

-内枠を引いた520キロ以上の巨漢馬(人気馬)が、斤量を苦にせずに逃げ・先行のポジションを確保してそのまま押し切る

-外枠を引いた479キロ以下のちょっと小柄な馬(穴馬)が、道中は後方に待機して最後の直線で追い込んでくる

どちらのパターンが来るかは、内外どちらの馬場が伸びるか、展開が前残りか前潰れかによって変わってくるのだろう。

 

 

他の距離では、58キロ以上を背負った馬は、ざっくり言えば「短距離ほど不利、内枠ほど不利」だった。しかし1200は例外的で、「内の巨漢先行馬が斤量を苦にせず押し切る」か、または「外の小柄な差し馬が直線で急浮上してくる」という買いパターンが存在する。そのあたりに注目してシルクロードSのメンバーを見てみる。

牡馬58キロ以上・牝馬56キロ以上を背負う馬が6頭いて、内と外に3頭ずつ分かれた。今の中京の馬場自体はどう見ても内の前有利。そうすると外枠からダッシュを聞かせて好位に進出するのは至難の業。特にウインマーベルとトウシンマカオは馬体も小さくて、いかにも斤量の影響を受けそう。よほどの外差し馬場にならない限り厳しいのでは。キルロードは500キロ級だけど、斤量負けしないためには520くらいは欲しいことを考えるとまだ足りない。内の馬でも、まずエイティーンガールはこのちょっと速い馬場では届かないだろう。ナムラクレアも馬体は小さめ。ダッシュが利かず馬群で揉まれるなら、内枠はむしろ不利になる。グルーヴィットもそんなに前に行けるタイプじゃない。そうすると今回は重ハンデの6頭全部消してよい気がしてきた。

内の前有利の馬場とはいえ、これまで中京1200重賞は逃げ馬がほぼ勝てていないことも事実。テイエムスパーダあたりが逃げたとしても押し切るのは難しそう。逃げ馬を見ながら好位で運べる馬を買いたい。

本命は人気でも新星マッドクール。特に消し材料が見当たらず、ここまでは通過点か。

対抗はシゲルピンクルビー。成績が安定しないけど、速い馬場と休み明けが良さそうなタイプ。消耗が激しそうなタイプで、ここを狙ってきたという陣営を信頼したい。

58キロ超の馬も一頭くらいは絡んできそうだけどよくわからないので、馬単一点だけ。

 

◎マッドクール

○シゲルピンクルビー