ヴィクトリアマイル

リピーターが目立つと言われることも多いレースだけど、昨年は稍重馬場で1.33.9と珍しく時計のかかる決着だった。デンコウアンジュはその馬場に助けられた感が強い。それに時計のかかるスローから馬群が横一杯に広がっての追い比べになったことで、内の差し馬アドマイヤリードジュールポレールにとっても好位から末脚を遺憾なく発揮できる恵まれた展開になった。今週の東京は昨年とは一転して、府中史上最速と言っても良さそうな超高速馬場。この馬場では少なくとも去年とは全く違う適性が求められるレースになると思う。

 

当初の本命候補はレッドアヴァンセだった。重賞ウイナーの兄4頭に加えて本馬、妹レッドオルガ、弟レッドヴェイロンに至るまで、エリモピクシー産駒は左回りと高速馬場に異常なほど高い適性を発揮する。さらに2歳の早い時期から出世しつつ古馬になってもう一回り成長して重賞を勝つのもこの血統の特徴。特にレッドアヴァンセは440キロ台で出走したレースではまるで崩れていないし、先行力を身に着けたここはベスト舞台。レッドアヴァンセを軸に、東京マイル実績の豊富なアエロリットリスグラシューに流すのが筋かなと思っていた。

ただこれじゃあまりにも短絡的すぎる。東京マイル実績だけで絞って当たるならこのレースは例年こんなに荒れていない。特に今週は土曜の1000万条件の東京2400で2.22.9の怪時計が飛び出た。過去にこのコースで2分22秒台を記録したのはホーリックスアルカセットウオッカのJCのたった3回だけ。これら伝説的レースに次ぐ歴代4位の時計が、1000万条件で、しかも逃げ切りで出たというのは驚異的だ。ある程度前に行った馬が余力を持っていたら止まらない可能性がある。

実際にこのレースでも我々はたった3年前に、ケイアイエレガントが1.31.9、ミナレットが1.32.2で駆け抜けるシーンを目撃している。この2頭を辛うじて捕まえたストレイトガールは東京マイル高速戦では史上最強クラスの強豪だった。今年それほどの強い馬はいない。しかしミナレットよりも強い逃げ馬がいる。

 

 

本命はワキタエンカ。これが逃げ残る可能性があるんじゃなかろうか。

逃げを打つようになって惨敗したのは洛陽Sだけで、この時は鞍上が早々に追うのを止めただけで馬はバテていなかったように見える。桜花賞7着や秋華賞5着も逃げ馬には厳しいレースだったと思うし、同世代のトップクラス以外には先着を許していない。それ以外の逃げたレースではすべて連対。新潟では逃げて33秒台で上がってきたこともあるくらいで、とにかく使える脚が長く、長い直線の末脚勝負で戦える逃げ馬だと思う。実際ローズSでは淀みないペースで逃げてリスグラシュー以下を完封しているし、中山牝馬Sも追いかけてくる他馬と脚色は全く一緒になっていて、半馬身差という着差以上に余裕綽々の楽勝だった。そして前走の福島牝馬S。前半から一定のペースで逃げて、デンコウアンジュトーセンビクトリーが早めにまくってきても先頭を譲らず、追い比べで逆に突き放すような内容だった。最後追い込んできたキンショーユキヒメに交わされたことで評価を下げているけど、実質は勝ったような競馬。もし前走1着だったらもっと穴人気していたはずで、盲点となる狙い目のオッズになっていると思う。

名前のせいかどこか地味な印象を持たれているものの、多彩なメンバーが揃う今年の4歳牝馬世代でトップクラスの成績を残してきた1頭。ディープインパクト×クロフネという血統も、超高速馬場の東京マイルGIにいかにも向いている。後続を離す逃げ戦法も板についてきていて、2番手集団がこの馬を積極的に追いかけるとは思えない。後続を離しつつ速すぎないペースで逃げを打てるとしたら、直線で二の脚を使える。3年前のミナレットが1.32.2で駆け抜けた当時より明らかに速い馬場で、カワキタエンカの実力があれば、1.31.6くらいで駆け抜ける可能性がある。そのとき後続は追いつけない。

 

 

◎カワキタエンカ

レッドアヴァンセ

▲アエロリット

△リエノテソーロ

△ミスパンテール

リスグラシュー 

 

 

 

ヒモならリエノテソーロは加えておこう。高速の東京マイルでだけ来る馬なのかもしれん。