京成杯AH

注目は何と言ってもマルターズアポジー。前走から振り返らなければなるまい。
辛うじて対抗の印を打って頭固定三連単を買ったので一応三連単を当てたものの、レース前はマルターズアポジーは切ろうかとすら思っていた。左回りでは結果が出ていなかったことに加えて、新潟マイル重賞で逃げはなかなか難しい。過去に逃げて好走した馬はいずれも前半1000メートル59秒台のスロー逃げ。それくらいペースを落とすことができれば逃げ切れるかも、くらいに思っていた。
絶好のスタートを決めたマルターズアポジーの前半1000の通過は57.9。このラップは決して楽じゃない。しかしマルターズアポジーは上がり3ハロンでも34.3という数字を記録し、後続に影すら踏ませないまま押し切ってしまった。


マイル戦を57秒台で逃げて34秒台で上がるほどの持続力を見せるのは至難の業で、この数字で重賞を逃げ切った例は過去にローレルゲレイロの東京新聞杯とメジャーエンブレムのクイーンCのたった2回しかない。この2回ですら、1400の通過は1.20.5と1.20.6。勝負所でそれほど無理をせず、最後の1ハロンに力を残した。マルターズアポジーは直線を向いてさらに加速し、1400通過は1.20.0。1400のオープンやG3でも勝てそうな時計のまま、最後の1ハロンを12.2で押し切ったわけである。こんなラップは過去に見当たらない。
もちろん馬場に恵まれてのこともあるけど、前日が逃げ馬天国だったのに比べて、関屋記念当日は芝のレースが7つ組まれて逃げて連対したのはマルターズアポジーだけだった。決して馬場と展開に恵まれただけでは済ませられそうにない。


マルターズアポジーはかつて小倉大賞典でも同じような競馬をしたことがある。1600の通過が1.32.9という猛ラップのまま、1800を逃げ切ってしまった。単に前半楽ができれば逃げ切れるというシルポートのような馬ではない。1400のラップのまま1600を逃げ切る、あるいは1600のラップのまま1800を逃げ切ることができる。他の馬がなすすべもないまま押し切ってしまえるスピードの持続力がこの馬の最大の武器。
残念ながらその持続力は2000を持たせるのが難しいことがこの半年でハッキリしたわけだけども。それでも、かつて短距離のスピードのまま2000を押し切ることで誰も近寄れない史上最強の域に脚を踏み入れた、あのサイレンススズカの縮小版のような能力を持っていると思う。


これだけ恵まれた馬格なら、58キロの斤量もほとんど苦にしないだろう。捨て身で執拗に絡むほどの馬がいれば別だけど、そこらへんのG3レベルのマイラーでは手も脚も出ずに負けてしまうのではないかと思っている。ダノンプラチナが回避したこともあって単勝オッズが下がってしまったけど、それでも4倍前後は付きそうな雰囲気。本当は左回りの富士Sあたりで一度負けてもらって、逃げ切りやすい京都外回りのマイルCSで大きく狙いたいところだけども、この軽いメンバー相手にこれだけつけば十分だろう。
最近の中山は逃げ切りが少なくなって馬場を心配していたけど、土曜もメイン以外は逃げた馬か4角2番手の馬が押し切って勝ってるし、これくらいなら問題ない。頭固定で勝負したい。






ヒモは小倉大賞典のように追い込みを拾うか、それとも関屋記念のように先行馬で揃えるかが悩みどころだけど、メンバーを見ていたら先行馬にこそ面白い馬が多い。
ダイワリベラルは中山( 4 3 3 5 )で、着外も4着3回と5着1回。重賞でも僅差で4,4,5着と走っている。前走の最下位は落鉄によるもので度外視できる。内枠に好成績が偏る馬でもあるので今回はチャンスが大きい。マイネルアウラートもたった1回の敗戦であっさり人気を落としたけど、去年秋から今年春にかけての走りからはいつ重賞を取ってもおかしくない。この2頭はダービー卿CTでグランシルクと接戦していて、斤量差は当時よりも1キロずつ有利になっている。今回は普通に実力で先着する可能性も十分。
ウインフルブルームも少し怖い。中山では朝日杯と皐月賞とGIで2度3着のある馬。すんなりハナに立てるときはほとんど負けていない。さすがに今回は逃げられないだろうけど、去年の福島TVOPは先行策で見事押し切った。あの時は1年半ぶりの復帰戦ながら坂路51秒台の自己ベストを連発していた。今回も1年ぶりの休み明けながら、坂路51秒台や52秒前半の好時計を何度も出している。休み明けの方がかえって走る可能性もある。
あとはボンセルヴィーソか。重賞で堅実な馬というくらいの印象が前走NHKマイルCで一変。57秒台の厳しいペースで逃げて最後も35.0でまとめて、勝ち馬以外後方待機馬が上位を占めたレースで3着に残った。57キロでこのパフォーマンスなら、54キロのここでは当然侮れない。少々ハイペースの方が地力を出せるようだし、マルターズアポジーの作るペースに合うかも。


これだけ先行馬で良い馬が揃うと、グランシルクはもう消してもいいんじゃないかという気がしてきた。堅実な馬だから2,3着はあってもいいんだけど。
この馬は戸崎とルメールが乗ると( 4 4 4 1 )、それ以外では( 0 2 1 5 )と成績が一変する。オープン入りして離されて負けたのは阪神Cと中京記念の2戦だけだけど、この2戦だけが戸崎でなく福永だった点にも注目したい。堅実な走りには騎手の影響もある。今回テン乗りの田辺裕信への乗り替わりは見逃せないところ。


ダノンリバティは加速の遅い新潟巧者。中山では結果が出ていない。他力本願のウキヨノカゼが届くほどの流れにはならないだろう。ディープインパクト産駒はマイル重賞では他のどの競馬場でも好成績だけど中山では27戦して勝ち星なし。タニノギムレット産駒も新潟、東京、阪神外回り以外では一度も勝っていない長い直線でこその血統。あえてここで買いたい馬たちではない。ロサギガンティアも前走そこそこ走ったのでいつか買う機会がありそうだけど、フジキセキ産駒も中山は壊滅的に成績が悪い。



◎マルターズアポジー
○ボンセルヴィーソ
▲ダイワリベラル
△マイネルアウラート
△ウインフルブルーム



これほど悩まないレースも最近珍しいな。グランシルクを押さえるかどうかくらいか。
マルターズアポジーを見に現地観戦してきます。中山行くのはデットーリジャンプを見せつけられた02年のジャパンC以来なので15年ぶりか。