皐月賞

皐月賞の各馬の走りに対する評価はダービーの予想の時にやることにして、その前にちょっと思ったことを書き留めておきたい。
今回のレースについて、「直線一旦は完全に抜け出したペルシアンナイトを、ゴール前ギリギリでアルアインが差し切った」みたいなレビューをよく見かけた。しかし多分、これは少し間違えている。
通常のカメラアングルではどうしても内の馬がゴールに近いように勘違いしやすい。実際には多分ペルシアンナイトは一度も先頭に立っていなかったのではないかと思っている。いやもしかしたら一瞬は単独で先頭を奪うシーンがあったかもしれないけど、あったとしても一瞬、ごく僅かな差をつけただけ。アルアインは通常のレース映像からこちらが受ける印象よりもかなり早い段階でペルシアンナイトに並んで交わしている。


このあたり本当は乗っていたデムーロと松山弘平に直接尋ねてみたいところだけれども、最近のJRAレーシングビュアーに付いているマルチカメラ機能を使うと結構分かりやすい。「通常の映像」に加えて、「パトロールビデオ」と「ターフビジョン用パノラマ」の3アングルで同時再生してレースを振り返ることができる。実は自分も最近まで気づいてなかったんだけど、なかなか面白いので未見の方は一度ご覧ください。
http://www.prc.jp/jraracingviewer/contents/multi/2017.html


スタンダードなレース映像では、直線前半はターフビジョン用に少し高い位置から撮影した俯瞰映像で映しておいて、ゴール前で突然パッと低い位置からの映像に切り替わる。この切り替えを突然無くしたモーリスのマイルCSは過去最悪のカメラワークだったと思っているんだけども、この切り替えによって多くのTV視聴者に内外の差について誤解を生んでしまっているのではなかろうか。
例えば今回の皐月賞で画面が切り替わった瞬間を見ると、スタンダードなレース映像にだけ慣れている人にはペルシアンナイトの方が1馬身近くリードしているように勘違いさせてしまうのではないかと思っている。
しかし競馬場でレースを見慣れた人にとって、見るアングルによってどの馬が先頭にいるのか感覚が全く違うのはご存知の通り。パトロール映像で見ると、好天と綺麗な芝のおかげで真正面から馬の影を見ることができて、これを見る限りアルアインとペルシアンナイトはファンディーナを交わす時点からもう並んでいるように見える。
あるいはこのレーシングビュアーのマルチカメラ機能なら、ターフビジョン用の俯瞰映像を最後まで見続けることができて、より違いが分かりやすい。一番違いが出るのは1分55秒のところで、ここで映像を停止すると、スタンダード映像ではまだ半馬身ほどはペルシアンナイトの方がリードしているようにも見えるけど、ターフビジョン映像ではもう完全にアルアインの方が頭一つは抜け出していることがハッキリと分かる。


昔も例えばアドマイヤジュピタが勝った08年の天皇賞・春で同じようなことがあった。一旦抜け出したアドマイヤジュピタをゴール前でメイショウサムソンが内から差し返して、さらにそれをアドマイヤジュピタがまたギリギリで差し返したかのようなレース回顧を散見したけど、あれも実際にはサムソンは一度も先頭には立っていなかったことが別アングルのカメラからはハッキリしていて、競馬場の上からの俯瞰アングルに慣れた実況の馬場アナウンサーあたりは一発で2頭の位置関係を見切っていた。


他にも内外離れた追い比べになってゴール前の最後の戦いを誤解されているレースは結構ありそうな気がする。ゴールまで残り400,300,200,100メートルのラインがCG合成で入ることもあるけど、一部のGIだけじゃなく毎回やってくれればいいのになと思う。