天皇賞・春

淀の長距離GIで活躍する騎手といえば、現役ですぐに名前が挙がるのは、天皇賞を4連覇した平成の盾男・武豊と、セイウンスカイやイングランディーレの逃げ切りに加え菊花賞4年連続2着が光る横山典だろう。
しかし菊花賞と春の天皇賞を合わせたこの2人の成績( 10 7 5 24 )と( 3 6 3 19 )と比較しても、蛯名正義の( 4 3 4 14 )という成績はかなり驚異的に映る。GIになかなか手が届かなかった若い頃からこの大レースで伏兵を何度も持ってきていたし、何より1番人気に一度も乗ったことがないにも関わらずこの成績なのだから、フェノーメノの天皇賞2連覇もこの鞍上あってこそ。中山の2200-2500でも非常に高い勝率を残しているけど、4角でマクリ気味に一気に仕掛けてトップスピードまで加速してあとはゴールまで惰性で乗り切るという点で、京都の長距離GIと中山中長距離戦は勝負どころの乗り方が似ているかもしれない。


本命はカレンミロティック。
オルフェーヴルの勝った有馬記念での粘りっぷりを見てGIでの活躍を予感したけど、その後が悪路の中山記念惨敗をきっかけに伸び悩み、重い馬場は良くないと見て去年の宝塚記念でも買えなかった。一旦休養を挟んだ後、復帰戦の香港ヴァーズで5着。デムーロが騎乗した前走阪神大賞典では前が詰まってまともに追えず4着どまりだったけど、最後はもう一度伸びてくるスタミナを見せてくれた。
父ハーツクライは距離が伸びるほど成績を上げる血統で、ウインバリアシオン、フェイムゲーム、アドマイヤラクティ、ギュスターヴクライなど実績も十分。ダンスインザダーク産駒との大きな違いは古馬になってから強くなること。春の天皇賞に最も近い血統だと思う。
この馬自身の持ち味もとにかくバテないスタミナ。去年の宝塚記念でも存分にその力を見せた。それに加えて時計勝負にも強い。条件戦であえいでいた頃から阪神1800外回りの高速決着に異常に高い適性を見せていて、500万下の身で1.44.7のタイレコードで4馬身差で圧勝。さらに準オープンを5馬身差で圧勝したときに記録した1.44.5のレコードはいまも破られていない。2番手で軽快に追走しながら最速の上がりを使って直線で千切り捨てた走りっぷりは、1800までの経験しかないのに菊花賞をもぎ取ったスリーロールスを髣髴とさせる。本格化してからなかなか速い馬場で走る機会がなかったけど、今回ようやく本領を発揮する舞台が整ったように思う。
GIとはいえゴールドシップとキズナ以外はほぼG2と言っていいメンバー構成。地力の差は全く感じない。騎手の腕がモノを言うこの大一番で天皇賞3連覇のかかる蛯名正義が乗ってくれるのが何より心強い。さらに有力馬のほとんどが軒並み7-8枠に追いやられたのに対して、このコースで圧倒的に好成績を残す1枠を確保。隣がスタートの遅いゴールドシップとネオブラックダイヤだし思い通りのポジションを取れそうだ。
ハナに押し出されて目標にされたら嫌だったけど、スズカデヴィアスが行ってくれそうなのでその心配もなさそう。これだけ買い材料が揃えば相当穴人気することも覚悟していたけど、最終的には10番人気前後に落ち着きそうな雰囲気。人気馬を尻目に先行して押し切る姿を期待したい。



◎カレンミロティック
○ホッコーブレーヴ
▲サウンズオブアース
△デニムアンドルビー
△アドマイヤデウス



対抗として当初考えていたのは、時計勝負に強いラブリーデイや、長距離向きのスタミナがあるクリールカイザーあたり。ただラブリーデイは今までも2500では最後止まっていたことを思うと、前走の敗因は重い馬場だけではなくやはり距離だろうか。母方だけ見れば持ちそうだけど。逆にクリールカイザーはどうしても時計決着に不安がある。輸送もどうだろう。
カレンミロティックから入るなら、同タイプの先行馬よりも、後ろから追い込んでくる馬を狙ったほうがいいかもしれない。


サウンズオブアースもカレンミロティック同様前走デムーロが失敗したクチで、最後の脚は際立っていた。結構地味な馬だと思うので前走といい今回といいなんでこんなに人気するのかよく分からないけど、まだ若くて1戦ごとに強さを増しているように見えるので上がり目には期待できそう。ネオユニヴァース産駒は意外と長距離適性が高くてデスペラードのほかにユニバーサルバンクあたりも活躍している。レコード決着の菊花賞で2着に入ったこの馬の適性も疑う余地がない。ただ相手なりに走るタイプだし、菊の2着も枠の恩恵が大きかったわけで、外枠から勝ち切る力はなさそうに見える。


あとはアドマイヤデウス。10年前からは想像もつかないけど日経賞はいつの間にか天皇賞に最も直結するレースになってしまった。皐月賞やダービーで掲示板にも乗れずしばらく休養していたクラシック崩れの馬が復帰した途端にポンポン出世するのはあまり記憶にないけど、前走厳しいラップを自分から動いて突き抜けた強さを見ると外しにくい。
ただ休み明けとはいえ内を突いたのがハマった日経新春杯は外を回したフーラブライドと比較しても大したことなかったと思うし、デビュー当初も京都では3戦して全部取りこぼしていたくらいなので、前走だけで評価されていきなり天皇賞本番で人気になるのは危険な匂いがする。大外枠の分も割り引いてヒモまで。


去年負けて強しの快走を見せたホッコーブレーヴは騎手が不安。鞍上の幸は2000を超える距離の芝重賞では120戦以上乗ってスティルインラブのオークス1回しか勝っていないという長距離ベタなので、長距離得意な田辺からの乗り替わりは大きなマイナス。ただ枠がいいところを引いたし、リピーターが強いレースなので押さえることにした。前走も休み明けの分か最後差し返されたけど悪くない内容だったし、去年も日経賞で完敗したウインバリアシオンに本番では肉薄したほどこの舞台で上積みがあった。ダンシングブレーヴ系はアサクサキングス、イングランディーレ、ラスカルスズカのほかに母父側としてもメイショウサムソンやエリモエクスパイアを輩出した天皇賞御用達血統でもある。
ウインバリアシオンも去年の武幸四郎から福永への乗り替わりは長距離実績という点では大幅減点。枠も外過ぎるし、先行するようならその分だけ末が甘くなりそうなので見送り。


フェイムゲームがかなり悩んだけど、北村宏の消極的な乗り方ではG2,G3で格下に完勝することはできても大一番で勝ち負けするのは難しい気がしてきた。ゴールドシップはよく分からんけど、相変わらず人気しているので切るほうが楽しめそう。


キズナは今まであんまり強いと思ってなかったので、この2戦はむしろ、展開が嵌らなくてもちゃんと伸びてくるもんだなと見直した。ただ長距離で著しく成績が落ちるディープインパクト産駒であることを思うと、この人気ではやはり手を出しにくい。ラストインパクトも3000以上では3度走っていずれもパフォーマンスを落としているので厳しい。
同じディープインパクト産駒でもデニムアンドルビーのほうは阪神大賞典が好印象。有馬記念も直線スムーズに捌けていれば掲示板があったかもしれない内容だったし、キズナよりは長距離戦での上積みが期待できる。ただ時計勝負ではことごとく負けている馬なので、京都が合うかは微妙なところ。人気はないので押さえておくか。