誰が内枠を利して好走したのか?

「有馬記念は内枠有利」という定説はコース形態からも明らかだけど、強く世間にイメージ付けたのは01年の「テロ馬券」あたりだろうか。丸2年に渡って日本競馬界を牛耳ってきたテイエムオペラオーとメイショウドトウが、引退レースの大一番で内で先行したアメリカンボスとトゥザヴィクトリーを捕まえ損ねてしまったあのレース。あと近年で印象深いのはマツリダゴッホが勝った07年。4枠までの馬が上位8着を占めて5枠より外は全て9着以下と真っ二つに分かれてしまい、三連単8000倍超の大荒れになった。


しかし実際のところ、有馬記念で内枠を引いた穴馬にどれくらいチャンスがあるんだろうか。
上記の01年は前が止まらない内有利の馬場状態で、開催全体を通して内枠が圧倒的に成績が良かった。さらに有力馬が後ろに控えて超スローという極端な条件。この年の2,3着以外に、「ちょっと力の足りない穴馬が内枠を利して馬券に絡んだ」という例があまり思い浮かばない。02年3着のコイントスとかだろうか。05年のポップロックはその後の活躍を思えば納得の2着だし、むしろ一旦内で詰まって体制を立て直したあたりを見るともう少し外のほうが良かったようにすら思える。
マツリダゴッホが勝った上記の07年も、スローだったジャパンC好走組が壊滅してタフな中山向きの馬が上位を独占したという結果で、仮に内外真逆の枠順でも大勢はあまり変わらなかったと思っている。
ちなみに翌08年の有馬記念は前年の結果を受けて例年以上に枠順に注目が集まった。その中で一番人気ダイワスカーレットが引いたのは14頭立て13番。2.6倍という単勝オッズはファンの不安の現れだろう。結果は圧勝、そして2着にも大外14番のアドマイヤモナークが突っ込んできてしまい、三連単は前年を上回る9800倍をつけることになった。


好位を確保するには内枠発走が一番だし、騎手が内を欲しがるのは当然。08年のマツリダゴッホは外からスタートを決めきれずに大きく外に振らされて後方待機を余儀なくされて惨敗したし、10年のヴィクトワールピサがブエナビスタの追撃をハナ差凌ぎきったのも枠の恩恵はあったと思う。
ただこれらの例は、もともと勝ち負けできる能力があってこその話。最近の中山GIは一時期のように先行馬が展開の利だけで残る例がほとんどなくなって、ハイペースの力勝負を強いられることが多くなった。タフな馬場の中山2500でペースが流れれば、最後はスピード・スタミナをしっかり兼ね備えていないと上位争いにはついていけなくなる。実力馬が好位を確保できずに負けることはあっても、地力の足りない馬が内枠を引いたくらいではなかなか通用していないのが現状だと思う。
もっとも外枠が仇になって負けた実力馬すら、01年の極端な馬場のときと、08年のマツリダゴッホ以外にあまりパッと思い浮かばないんだけれども。


今年は枠順抽選をJRAがイベント化したことで例年以上に枠順が注目されすぎていると思う。外の人気3頭のオッズがこんなにつくとは思わなかった。確かに内枠にも目の付け所次第では面白いのが何頭かいるんだけど、今年は地力重視で予想してみたい。