新潟大賞典

新潟外回り2000は長い長い直線勝負の追い比べ。得手不得手が大きく分かれるのでリピーターも多いコースだけど、春の新潟大賞典と夏の新潟記念で脚質の傾向が大きく違う。夏の新潟記念では逃げ馬も稀に連対するし、わりと先行馬がよく残る。しかし春の新潟大賞典は過去10年で逃げ馬は馬券圏内ゼロ。先行馬が勝ったのも、新潟2000重賞だけを3勝した新潟の鬼パッションダンスの2回だけである。

春と夏のこの脚質傾向の違いは、おそらく芝の軽さ、走破時計の速さに由来している。夏の芝生の生えそろった新潟記念では平均勝ち時計1.58.09だけど、春の新潟大賞典は1.58.58と約0.5秒遅くなっていて、この0.5秒の違いで後ろの馬にチャンスが生じる。先行馬パッションダンスが勝った春の2回は1.56.9と1.57.8で、新潟大賞典としては例外的に高速決着であり、後続馬はなすすべなく大きく離されたまま負けている。今年は前日の谷川岳Sが1.33.5。スローがデフォルトのコースなので時計を評価しにくいけど、まあ例年並みだろう。さらに雨も少しだけ降ってきたようだし、後ろの馬に注意したい。

とにかく直線伸びる馬を探せばいいということで、「前走上がり最速だった馬」に注目してみると、春の新潟大賞典ではこの前走上がり3F最速馬が( 4 1 4 11 )で勝率20%、単勝回収率185%と非常に好成績を残している。過去15年まで遡ると( 8 1 4 18 )となって勝率26%、単勝回収率208%にもなる。これが夏の新潟記念になると勝率6.7%の回収率56%に過ぎないので、かなり大きな違いが出ていることがわかる。このあたりは開催の時期が違いが大きいと思っていて、夏の最後に行われる新潟記念では前走も上がり速い競馬を経験している馬ばかりなのに対して、春の最初に行われる新潟大賞典は中山・阪神・福島で走った馬がここに臨んでくる。夏場よりもちょっと上がりのかかる狭い競馬場で最速の末脚を残したものの脚を余して届かなかった馬こそ、新潟外回りで思う存分弾けるチャンスが回ってくる。今回の該当馬はカツジ、サラス、アトミックフォースの3頭である。

 

本命はサラス。展開に恵まれた牝馬限定重賞を51キロで勝っただけの馬が一年ぶりの休み明けなのでもっと激しい大穴かと思ったけど、単勝20倍もつかないようなのでちょっと残念。この馬に最初に目を付けたのは、上がりというよりは馬体重。新潟外回りは直線が長すぎるので、緩やかな下り坂を活かして一度加速したら止まらない大型馬の成績が非常に良い。牝馬ながら530キロ級の馬格を誇るこの馬は、これまでの走りを見てもうまくトップスピードに乗る前にレースが終わってしまっている感じ。前走マーメイドSは展開が向いたとはいえ、スカーレットカラーやセンテリュオを捉えた最後50mの脚は出色だった。大型馬の1年ぶり休み明けだけど、1週前追い切りでは坂路自己最速をマークしているしそれほど問題にはならないのでは。新潟でこそ突き抜ける可能性がある。

オルフェーヴル産駒はステイゴールド系だし、最軽量で話題のメロディーレーンもいて父同様小柄なイメージがあったけど、活躍馬には大型馬が多い。480キロ以上の牝馬は( 18 8 10 46 )で勝率22%の回収率110%という好成績を上げていて、稼ぎ頭ラッキーライラックのほか、上がり馬セラピアエスポワール、札幌2歳S勝ち馬ロックディスタウンなどが含まれる。こないだの青葉賞を勝ったオーソリティも500キロだった。勝ち上がり率はかなり低いにもかかわらず(参考:https://umahei.com/page-5145)その中で重賞級がポロポロ出てくるのは、たまに出てくる大型馬だけが父譲りの末脚を発揮できるのではないかと思っている。雨が降りすぎると今度は大型馬には良くないと思うけど、それほど酷い雨にはならないだろう。

 

相手はカツジ。土曜に単勝に大量買いが入ってオッズが下がったけど、連勝では実質8番人気。前走ダービー卿CTでは最後方から勢いよく追い込もうとして最後脚が上がってしまったものの、2着馬とは0.2秒差。丸2年勝ち星から遠ざかっているとはいえこれまでのレースも差のないところまで堅実に追い込んできている。3歳時に中山マイル重賞を勝っているけど、この馬の一番のハイライトはマイルCSではなかろうか。GIとしてはスローな展開の中で、最内で溜めたステルヴィオペルシアンナイトが突き抜けて馬番1→2→3で決着したレース。ここで8枠16番から馬郡を割って追い込んでアルアインとアタマ差の4着に健闘している。一方でこれまで大敗したレースは1.44.5決着の毎日王冠と、1.31.7のダービー卿CT。高速決着になるとスタートから置いて行かれたまま何もできずに終わってしまう。今となってはマイルは少し忙しすぎる。少々時計のかかる馬場で、スローでじっくり脚を溜めて、直線で爆発させられるコースが望ましい。新潟2000こそベストではなかろうか。

 

 

◎サラス

○カツジ