毎日王冠

史上最も有名なG2と言ってよいであろうサイレンススズカが勝った98年のこのレースや、オグリキャップがイナリワンを叩き合いで下した89年、さらに遡ればミスターシービーの上がり33秒台の末脚が話題になった84年など、毎日王冠には有名なレースがいくつかある。しかしそのネームバリューとは裏腹に、他の年は意外なほど凡戦ばかりが目立つレースだと思う。
GIを狙う馬が叩き台として出てきて、少頭数のスローで流れて直線だけのダラダラっとした勝負を繰り広げる。このあとどのGI路線に進むにしろ、距離もペースも頭数も違うので、全く別のレースになる。結果、毎日王冠を勝った馬は次走でコロッと負けることが多い。むしろここで負けた馬こそ本番で怖い。
今年もGIを見据えた有力馬たちが多数集結して人気が集まっているけど、過信は禁物。GIを勝てない馬こそここでチャンスが回ってきやすい。さらにサンレイレーザー、ジャスタウェイ、ハイアーゲーム、アドマイアフジ、チョウサン、ケイアイガードなど大穴馬が飛び込んでくることも多い。GI本番では決して買えない一回限りの大穴を見つけたい。



去年に引き続き、本命はヒストリカル。
去年のこのレースで単勝75倍の11番人気を覆して見事3着に入線。その時の予想に詳しく書いたとおり、この馬は「1800・休み明け・少頭数・道悪」の4条件がいくつか揃ったときに覚醒する。スイートスポットの範囲が極めて狭い、常時パワプロ強振モードのような存在。強振しても単打にしかならない地力の壁が悲しいところだけど、その代わり得意条件が揃えば堅実に結果を出してくれる。
4つの条件の中でも何より「休み明け」のフレッシュな状態で挑むことが一番重要だと見ている。去年も毎日王冠で穴を開けた後で2連敗、その後休み明けの小倉大賞典で2着入線してから金鯱賞では14着。さらに間隔を空けてメイSでは超スローの前残りレースで上がり32.7を記録して僅差4着と怒涛の追撃を見せたものの、エプソムCでは大敗してまた休養を取った。陣営もこの馬が休み明けでこそ結果を出すことはとっくに把握済み。今回も休養を挟んだここが狙いすました一戦だろう。
実は休み明け以外のレースも、着順こそ振るわないものの中身は悲観するほど悪くない。秋の天皇賞では上がり3位の末脚を披露して0.8秒差8着、チャレンジCでは上がり1位で0.2秒差の6着。金鯱賞14着も逃げ馬がそのまま残る展開で上がり2位で0.5秒差。エプソムCは12着だけど特殊な馬場と展開で前に行った馬がそのまま残るレースだったので度外視できると思っている。地力はキープしている。あとは休み明けのフレッシュな状態で挑めれば、そのキレ味を結果が出るレベルまで昇華できる。
そして第5の得意条件として「冬」を挙げてもいいほど寒い時期にこそ走る馬。ここで近走を遥か上回る走りを見せてくれる可能性は十分あると思う。


ここをステップに次走でGIを狙う強豪馬が多ければ多いほど、この毎日王冠に勝負をかけるヒストリカルにとっては好都合。他とは意気込みが違う。
今年は去年以上に末脚自慢が集まった印象で、仮に追い込みのこの馬に有利な展開になったとしてもどうせキレ味勝負で負けるだろう、というのが大方の予想。しかし他に追い込み馬が多いということは、相対的にこの馬が良いポジションを取れる可能性が増えるということでもある。去年は波乱を演出したとはいえ、スローでポツン最後方という、最初から勝ちは諦めた乗り方での3着だった。今年は超スローの展開の中でもう少し前で運べる可能性がある。
この馬自身今年で8歳になってしまったけど、日本史上屈指の超晩成だった兄カンパニーがこのレースを勝ったのも8歳だった。休み明けや重い斤量でキレ味が鈍る他の追い込み馬を尻目に、大波乱の主役になる可能性を秘めている。




去年はヒストリカル1頭軸三連複で挑んでルージュバック抜けで涙を呑んだ。今年は片っ端から拾ってみたいところだけど、有力馬の数が多すぎて難しい。少し選ぶか。



ソウルスターリングはちょっと人気が被りすぎな気がする。仮にハナでも切ってしまうと目標にされてキレ負けするのでは。ここで負けるくらいの方が秋のGIで買いやすい。
リアルスティールも前哨戦よりむしろGI本番で買いたいタイプ。ここは地力の高さから言えば楽に勝ってもおかしくないけど、中山記念での大敗もよく分からないので不安は残る。
グレーターロンドンは休み明けについて陣営のコメントが慎重なのが気になる。あとロンドンブリッジの子供だから距離がどうなんだろう。もちろん姉ダイワエルシエーロの例があるんだけど、父サンデーサイレンスと比べると父ディープインパクトは短距離馬が多い。1800でキレが鈍る可能性は考えておきたい。
サトノアラジンはもともと前哨戦を勝ってもGIには届かないタイプだったけど、今春は前哨戦で大敗して人気を落としたところで見事GIを勝ち切った。こういうケースは古馬マイルGIではちょくちょくいて、ダノンシャーク、ストロングリターン、エーシンフォワード、ブラックホークなんかが思い浮かぶ。これらの馬の共通点は、GI勝利で燃え尽きたのか運を使い果たしたのか、その後まるで走らない。この馬もそれと少し重なってしまう。あと末脚のキレを求められるレースで一頭だけ58キロは厳しい。
ヤングマンパワーは去年ほどのデキにはないのと、ヒストリカルが同時に来ることはなかろうと見て消し。


このへんの有力馬よりはやはりマカヒキが最大の強敵。京都記念や大阪杯はスタミナや先行力が問われたレースで、いかにもこの馬が不得意そうな展開。そのわりにはそこそこ好走して地力の高いところを見せていると思う。東京1800の少頭数はベスト条件なんじゃなかろうか。


あとはアストラエンブレムは拾っておきたい。他の馬が休み明けが多い分、この手の馬にもチャンスがありそう。先行して速い脚が使えるし、相手なりに走る。格下相手のG3で人気した時よりも今回の方が買いやすい。



◎ヒストリカル
○マカヒキ
▲アストラエンブレム
△リアルスティール
△ソウルスターリング
△グレーターロンドン
△サトノアラジン



◎○2頭軸の三連複と三連単で。


追記:ダイワキャグニーもヒモに入れます。1800なら来るかも。