京都大賞典

京都開催初日は500万条件で2000メートル1.57.9が記録される超高速馬場。土曜午前の雨のせいで日曜はそこそこ時計がかかったけど、まだ馬場が荒れるには早い。月曜はおそらくそこそこ速い馬場に戻ると思う。


過去の京都大賞典を00年まで振り返ると、かなり後ろの馬有利で、逃げて勝ったのはタップダンスシチーだけ。スエヒロコマンダーの逃げて2着もあるけどこれはナリタトップロードの落馬とステイゴールドの降着によるものなので実質は5馬身離された4着に過ぎず、他に逃げて馬券に絡んだ馬はいない。一方でオウケンブルースリが4年間で( 1 2 1 0 )の成績を残したように、差し・追い込み馬が安定して活躍できる舞台。ファストタテヤマ、スマートギア、ヒットザターゲット、メイショウカンパク、メイショウベルーガ、アドマイヤモナークのように、他のコースではなかなか届かない追い込み馬たちが歴代の好走馬に名を連ねている。
ヒットザターゲットやメイショウカンパクのようにハイペースで浮上してきた追い込み馬もいる一方で、スイープトウショウとファストタテヤマ、トーホウアランとアドマイヤモナークのように、超スローからの瞬発力勝負でも後方待機馬による上位独占がしばしば起こっている。3角の下り坂から長い直線を迎える京都2400は少々ズブい馬でも勢いに乗ったままスパートがかけられる。直線入り口の内周りポケットのおかげで追い込み馬が内を突くことも珍しくない。そもそも平均10頭ほどしか出走しない超少頭数レースなので馬群を捌く苦労が全くないし、先行馬を常に射程圏に捉えたままで勝負どころを迎えることができる。馬群が詰まったままでスローのキレ味勝負になってしまえば前にいることはデメリットにもなりうる。おそらく全重賞の中でも有数の追い込み有利のレースだと思う。
唯一逃げ切ったタップダンスシチーは実力的にも完勝だったけど、スローの瞬発力勝負に持ち込んだ相手は59キロを背負ったあのヒシミラクルだった。着差はたったの1馬身1/4。もしもう少しキレ味のある馬が相手だったら取りこぼしていた可能性もあった。


今回の注目はキタサンブラック。主導権を握って無理のない展開に持ち込める脚質と、直線を向いてまず突き放す瞬発力、一旦捕まってもそこから巻き返すことのできるスタミナと競り合いで譲らない勝負根性を兼ね備えていて、王道GI戦線で堅実な強さを見せ続けている。
しかし1番人気を背負ったG2で付け入る隙がないかとなると話は別。大阪杯ではアンビシャスに交わされているし、天皇賞でもカレンミロティックに一旦は完全に捕らえられたように、直線での末脚勝負で一線級を相手にするとまだまだ心許ない。
今回は少頭数の京都2400外回り。開幕週であることも他馬のキレが増すだけで、前にいるこの馬が有利になる方向には働かないと思う。そして自身初めての1番人気で完全にマークされる立場。何だかんだで他馬の意識が後ろに向いていたこれまでのレースとは状況が全く違う。さらに今回はヤマカツライデンがハナに拘る姿勢を見せているし、キタサンブラックは2番手からの競馬。自分で前の馬を捕まえに行きつつ、後ろから差してくる強豪を押さえなければならないという難しい立場を強いられる。この馬のこれまでの成績を支えてきた、生来の地味さによる他馬からのノーマークというメリットが今回はない。開幕週であることも、前日の京都メインで最低人気の馬に逃げ切りを許してしまったことも全ての騎手が頭に入れているはず。
相手にはラブリーデイ、サウンズオブアース、ラストインパクトとこの距離で現役屈指のキレ味を持つ馬が3頭揃った。この3頭が、これまでのように多頭数の馬群の中ではなく、少頭数で自身のすぐ真後ろにつけてぴったりマークしてくる。これまでにないほど厳しい状況の中で、単勝は実質1倍台。ここが消して勝負するところではないかと思う。



ラブリーデイは一時期の勢いは無くなったように見えるけど、大阪杯では超スローで差しに回って4着なら評価を下げる必要はない。本来は先行してこその馬。前走宝塚記念も見せ場十分で、マクリ気味に進出して直線を向いてキタサンブラックに並びかけたところでは勝ったかと思わせたほど。最後ステファノスとともに失速したのは明らかにスタミナ切れ。マリアライトが上り36秒台でマクリきってしまうような我慢比べレースになってしまったのでしょうがない。もし普通かそれより軽い馬場だったらラブリーデイが押し切っていたレースだったと思っている。
今回は1ハロン伸びるとはいえ、去年快勝したように、問われる距離適性はむしろ遥かに短くて済むはず。少頭数の分だけキタサンブラックをしっかりマークできそうだし、時計勝負が大得意で雨も苦にしないので開幕週の綺麗な馬場も適性十分。この条件ならキタサンよりもラブリーデイにハッキリ分があると思っている。不安があるとすればルメールが消極的に乗りすぎないかということくらい。


ただ2400はラブリーデイにとってベストではないことも確かなので、頭で勝負してよいか少し悩むところ。この距離なら2キロの差も考えればサウンズオブアースでも互角の勝負にはなる。ただサウンズオブアースは競り合いの弱さが解消される気配が全くないのでこちらも◎は打ちにくい。


本命はラストインパクト。2年前のこのレースの勝ち馬で、準オープンも同コースで先行して上り2位の末脚で快勝、ジャパンC2着もあるように2400での実績は申し分なし。この距離の高速馬場で真っ当に末脚だけで勝負させればメンバー中一番強い可能性がある。
今回はかつての主戦で( 5 1 2 7 )の騎乗成績を残した川田将雅。苦手な道悪3戦、距離の長すぎた天皇賞2回、そして休み明けを除けば重賞3勝を含めて( 5 1 2 0 )という文句なしの成績を残している。
問題は今回がその苦手な休み明けであること。10週以上間隔が開くと( 1 0 1 5 )で、条件戦勝ちが一回あるだけ。これを克服しない限り勝ち目はない。しかしこの点に関しては、春に松田博資厩舎が解散して角居厩舎に移籍したことで多少違いが出てもおかしくない。普段坂路ではほとんど走らない馬が一週前に52秒台の時計を記録。状態面はこれまでになく良いかもしれない。


◎ラストインパクト
○サウンズオブアース
▲ラブリーデイ
△ヒットザターゲット


◎一頭軸三連複と頭固定三連単。ヒットザターゲットはおまけ程度。