ジャパンCと有馬記念

低レベルのレースしか走っていない馬よりは、ハイレベルのレースを経験した馬、好走してきた馬を評価するのが馬券の基本だと思う。有馬記念で毎年気になるのはジャパンC組の取捨だ。少し過去を振り返ってみたい。


昔、まだジャパンCを日本馬が勝つこと自体が快挙であった頃、ジャパンCと有馬記念の連戦は「厳しすぎる」というイメージがあったと思う。ジャパンC日本最先着馬が有馬記念ではコロコロ負けていて、勝ったのはヒカリデユールとシンボリルドルフくらいしかいなかった。
ジャパンCに限らず、この頃は秋の天皇賞を勝った馬が続く秋のGIをもう一つ勝つこともほとんどなかった。90年代中盤には古馬のトップホースがジャパンCをあえてスキップして有馬記念に備えるケースも多かった。


変化が出始めたのは、日本馬がジャパンCを勝つのが当たり前になった90年代終盤。99年にスペシャルウィークが天皇賞とジャパンCを連勝し、さらに有馬記念で写真判定の2着。秋の古馬三冠に文字通り一歩手前まで詰め寄った。そして秋三冠ボーナスが設定された翌00年、テイエムオペラオーがあっさりグランドスラムをやってのけた。
その後しばらくはジャパンC好走組がそのまま有馬記念で活躍していた。02年のシンボリクリスエスはジャパンCで海外馬に先着を許したものの秋天と有馬を勝った。翌03年もジャパンCの極悪馬場さえなければ3つとも勝っていたかもしれない。さらに04年にはゼンノロブロイが2頭目の秋三冠を達成。ぶっつけ本番で秋の天皇賞に挑んでジャパンCと有馬記念までまとめて狙うローテが増えたのもこの頃からだ。
そして05年、不滅とも思われたジャパンCのレコードが外国馬によって更新される。そこで2着に奮闘したハーツクライは続く有馬記念で3歳ディープインパクトを撃破して古馬の意地を見せた。


その翌年ディープインパクトがジャパンCと有馬記念を連勝するわけだけど、この06年からジャパンCに大きな変化が出た。スローペースで直線だけの瞬発力勝負になったのだ。勝ち馬の上がりは33秒台。そこで2着に好走したドリームパスポートは、続く有馬記念では初めて馬券圏外から消えた。メイショウサムソンやコスモバルクも力を出せず、有馬では別路線組が2,3着に入線した。
この頃から、ジャパンCと有馬記念のつながりがハッキリ薄くなったように感じている。アドマイヤムーンが勝った07年、スクリーンヒーローが勝った08年も、ジャパンCはスローの瞬発力勝負になり、横一線の追い比べ。そこで好走した馬達は有馬記念では全く力を出せずに大惨敗。大波乱の陰の立役者になった。少し前には2年連続でレコードが更新されるほど高速化が目立っていた中山競馬場の芝が重くなり、東京競馬場との差が顕著になってコース適性の差が大きく出るようになったのももしかしたらこの頃からかもしれない。
ブエナビスタが実質2連覇した10年と11年のジャパンCもスローの直線勝負だった。違いはブエナビスタが抜けて強かったこと。10年こそ有馬もヴィクトワールピサとブエナビスタのジャパンC上位組で決着したものの、11年の有馬ではジャパンC上位組は軒並み伸びを欠いた。
12年のジャパンCは緩まないラップのまま超高速上がり勝負になる特殊な馬場状態。3着ルーラーシップが有馬記念で有り得ないほど出遅れるなどこれも特殊な結果だったので一応度外視したい。ただジャパンC4着のダークシャドウは有馬では全く伸びなかった。
近年で唯一、ジャパンCがハイペースになったのが09年のウオッカの年だ。しかしジャパンC組がまとめてグランプリを回避してしまい、有馬記念出走馬でジャパンC最先着は5着のエアシェイディだった。このエアシェイディは有馬でも11番人気ながら3着に食い込んでいる。



ハイペースの厳しいレースになったジャパンCで活躍した馬は、確かに有馬記念でも好走している。しかし、東京2400のスローの直線勝負で上がり33秒台の決着になるジャパンCを経験することは、有馬記念を狙うローテとしては全く良くない、それどころか経験すること自体が大幅減点ではないかと思っている。有馬記念は時計もかかるしコーナーワークも要求されるし仕掛けどころも難しい。スローのジャパンCで好走した馬ほど、有馬記念では流れに適応できないんじゃないか、疲れだけが残るんじゃないかと不安がよぎる。
10年のヴィクトワールピサだけは、ジャパンCで直線前半大きく他馬を突き放す瞬発力を見せて、ラスト100で失速しながら3着を確保したレースぶりから、中山替わりで大幅プラスだと確信して有馬で◎を打った。ディープインパクトとブエナビスタは力が抜けていた。こういう例外を除いて、末脚勝負のジャパンCと時計のかかる有馬記念で連続して好走することはかなり難しいのではないかと思う。まして今年のジャパンC組はデニムアンドルビーにごぼう抜きされたメンバーでレベル自体が大きく疑問。ジャパンC組というだけでマイナス評価にしてみたい。