先駆者の成功例との違い

報道によれば、来年もディープインパクト現役続行の可能性があるらしい。
多分引退の可能性のほうが高いとは思うものの、来年一年間フルにヨーロッパで走り続ければ、という未来も想像してしまう。


惜敗から3日。その敗因をぶっつけ本番というローテーションに向けた分析は数多く見られるようになった。


99年、エルコンドルパサーは日本の大レースを全て捨てて長期間ヨーロッパへ渡った。当時は天皇賞がマル外に開放されてないという事情もあったが、それでも安田記念、宝塚記念、ジャパンC、有馬記念といった日本のGIよりも、世界一への挑戦を選んだ。最後にスペシャルウィークやグラスワンダーとの再戦がなされなかったことには不満が残るが、それを代償にしなければならないほど、凱旋門賞2着の快挙は難しかったのかもしれない。
あれから7年経って、ディープインパクトはジャパンCもしくは有馬記念での「凱旋帰国」まで視野に入れた上で、海外遠征の予定を組んだ。宝塚記念以来98日ぶりという、一戦限りのローテーション。だが過去の凱旋門賞優勝馬で最も長い間隔を開けた65年のシーバードでさえ、91日ぶりだった。陣営はこの間隔でも問題ないという判断を下したが、結果論としては、一叩きを重視する欧州競馬の伝統の前に屈したように見える。
徹底マークを受けた展開面も確かに厳しかった。斤量面の差も直接的な敗因になった。だがこれらは勝負には必ず付き纏うことだ。人間の側が万全を尽くしたかと言われれば、外野から指摘されても仕方のない敗因として「ローテーション」だけが残った。


あのエルコンドルパサーですら、海外初戦のイスパーン賞ではクロコルージュに負けている。だがその後のフォア賞と凱旋門賞では同馬にキッチリと雪辱。「成功」と呼べる活躍を残した。
一方でマンハッタンカフェ、タップダンスシチー、ハーツクライ、そしてディープインパクトは、ぶっつけ本番で挑んだ結果、実力を出し切れなかった。日本競馬界が徐々に海外の経験を積んできたとはいえ、馬一頭一頭にとっては初めてのヨーロッパだった。先駆者の成功例に倣わなかった点からまず反省する必要があるだろう。日本の調教手法は確かにヨーロッパとは違う。だがせめて現地で一戦でもトライアルを使っていれば、という「たられば」を消すのは難しい。



エルコンドルパサーが健闘した翌年、球界ではイチローがメジャーへの挑戦を決めた。そのとき「日本への復帰の可能性は?」という記者の質問に対して、イチローは「日本に帰ってくるときのことまで考えていては、向こうでは成功しないと思う」という趣旨のコメントをしていた*1
日本にある全てを捨てて、世界を獲りに行く。これくらいのハングリー精神が必要なのかもしれない。一戦限りの勝負ではまだ勝てない。それが、今ある世界との「一馬身の差」ではないかと思う。次にうまくいかしてほしい。

*1:たぶん。違ってたらすいません