秋華賞

今振り返れば初期の秋華賞はよく荒れていた。90年代最強牝馬エアグルーヴがパドックのフラッシュでイレ込んで惨敗してファビラスラフインが勝利、フラッシュ撮影禁止の警備が敷かれるようになった96年が第一回。ハイペースの前潰れでブゼンキャンドルとクロックワークの追い込みが炸裂した99年や、逆に超スローの前残りでティコティコタックとヤマカツスズランが残った00年のようなレースもあった。
しかし近年ではほとんど荒れなくなって、常に1番人気か2番人気、ごくたまに3番人気が勝つという程度の堅く収まるレースとして定着している。


このレースが荒れなくなったことには、男勝りの名牝が毎年のように登場するようになったことが関連しているのではないかと思っている。テイエムオーシャンらの01年やファインモーションの02年世代あたりを境にして牝馬トップ層のレベルは急激に上昇していて、3歳牝馬クラシックで主役級の活躍をした馬が牡馬一線級とも互角に戦うことが珍しくなくなった。ある程度世代のレベルが高ければ、今や3歳秋のトップクラスの牝馬はそのままジャパンCに出ても通用する能力を持ち合わせている。ただしそんな馬は各世代のごく一部。そんな馬たちを2000の距離で相手にすると、牝馬限定戦をようやく勝ち上がってきたような他の3歳牝馬ではまともに太刀打ちできない。結果、秋華賞で勝つチャンスのある馬は例年1,2頭に絞られているという状況が続いている。
近年で唯一、牝馬が低レベルだったとはっきり分かるのはトールポピー世代の08年だと思っているけど、その世代は近年で唯一秋華賞が荒れた年でもある。


今年の3歳牝馬戦線はメジャーエンブレム以外にもジュエラー、シンハライト、チェッキーノ、ビッシュと強豪が続々現れた。桜花賞、オークスとも時計は文句なく、上位陣のレベルは例年よりも高いと思う。さらに世代上位とそれ以外の実力差も例年以上にはっきり開いているように感じる。今回はその5頭のうち3頭は故障で休養中。春の故障から復帰したジュエラーも秋のトライアルで惨敗。最後の一冠で人気を背負うのはビッシュになった。


フローラSでは横山典の無気力騎乗で上がり最速の末脚を繰り出すも離れた5着に敗退。オークスは当時絶不調中のデムーロが残り800からマクリに出る驚愕の早仕掛けで最後まで粘って3着。後方待機した馬が上位を独占した中でビッシュが一番強い競馬をしていた。トライアル紫苑Sでは抑えきれない手応えでぶっちぎりの圧勝。勝ち時計1.59.7も、翌週の古馬準オープンではこれより速いペースで流れて2.00.4なのだから極めて高く評価することができる。
最後方に構えたことも2度あるけど、もともとスタートは決して下手ではなく、中段で競馬を進められるタイプ。そして勝負所でスッとポジションを上げていける反応の良さもこのコースではかなりの強み。あと怖いのは関東からの輸送だけ。小柄な馬だしできれば馬体重まで見てから判断したいところだけど、輸送さえまともにクリアすれば頭は動かないと見た。


末脚一辺倒のジュエラーでは展開がハマったとしてようやく互角に戦えるかどうかだと思うし、そもそも本調子にあるか怪しい。この人気ならいっそ消して勝負。
ジュエラーが不調ならビッシュはここではファインモーションくらい力が抜けているんじゃないかと思っていて、そうなると相手候補はサクラヴィクトリア的立場のヴィブロス。前走はビッシュがマクってペースが上がる勝負所で下がってきた馬にぶつかる大きな不利があった。その分のロスと、次は輸送なしで関西で戦えることを思えばもう少し差を詰められるかもしれない。
あとはミエノサクシードまで。前々走は1.45.7の快時計を記録して圧勝。同週の1000万条件や準オープンと比較しても良い時計だった。9月の阪神1800外回りで好時計で圧勝した馬はその後出世する。前走の1000万条件も最後は流して圧勝だった。川島が騎乗機会3連勝中で鞍上とも相性がいい。時計勝負への適性も見せたしここでも通用するはず。


◎ビッシュ
○ヴィブロス
▲ミエノサクシード


◎頭固定三連単2点。