NHKマイルC

グランアレグリアの圧勝で終わった今年の桜花賞は、前半は59.4というスローだったにもかかわらずラスト3ハロンが上がり33.3という尋常じゃない数字になってレースレコードが飛び出た特殊なレースだった。こんな展開にしたのはもちろん勝ったグランアレグリアで、4角手前から抑えきれない手応えで先頭に並びかけて、ラスト3ハロンが10.8-11.0-11.5。この急激なペースアップに真正面から対抗して捕まえに行ったダノンファンタジーは最後あえなく失速してしまい、クロノジェネシスはおろか前走完勝したシゲルピンクダイヤにも先着を許してしまった。

圧勝したグランアレグリアの強さもさることながら、逃げて6着に粘ったプールヴィルもなかなかの見せ場を作ったと思う。今年のここまでの3歳牝馬戦線はグランアレグリアとダノンファンタジー、クロノジェネシス、ビーチサンバの4頭が毎回堅実に実力を発揮しながら引っ張ってきたけど、目立たないながらもそれに次ぐ実績の持ち主がこのプールヴィル。阪神JF5着、桜花賞6着、それ以外は( 3 1 0 1 )でG2も勝っているわけだから、この世代の牝馬の5番手と言っていい。

中身を見るともっと高い評価が必要だと思わされる。阪神JFは14番人気ながら差のない5着。それも後方で脚を溜めて外に回した馬が上位を占める中で、一頭だけ内で先行して、さらに直線で一旦行き場を無くして立て直す不利があっての0.4秒差の僅差だった。6着以下が離れていて先行馬は総崩れに近いことからも高く評価できる。桜花賞では大外枠を引いてしまい、好スタートから思い切ってハナに立つ作戦に打って出た。結果グランアレグリアのロングスパートの目標にされる辛い形になってしまったものの、この馬自身も上がり33.8、推定10.9-11.3-11.6くらいの上がりを記録。2着とは0.2秒差の6着で、14番人気の低評価を覆す走りを見せた。後続のロングスパートで一気に交わされて主導権を失うのが先行馬にとっていかに辛いのかは、昨年の朝日杯でグランアレグリアが身を持って体験したこと。それとほぼ同じ強襲を桜花賞で喰らいながらこれだけ好走してみせたのは、プールヴィル自身の地力も相当高いからに他ならない。

戦績だけ数字で見ると1400では( 3 1 0 0 )で1600では( 0 0 0 3 )だから距離に不安ありという印象を持たれそうだけど、マイルのデビュー戦は内で狭いところで喘いでいる間に勝負が終わってしまっただけ。ギリギリ差し届かないケースもある1400に比べれば、GIのマイル戦でこそ不利な立場を跳ね返して強い競馬を見せていて、マイルの大一番でこそという気がする。まともな展開ならクロノジェネシスやビーチサンバと互角かそれ以上、ダノンファンタジーにも匹敵するほどの能力を秘めていると思う。

今回は1枠2番の好枠。イベリスという逃げてこその馬がいるので今回は自分が押し出される不安もなく、持ち前のスタートセンスを生かして内の絶好位を確保できそうだ。今回も外から早めのスパートに出そうなグランアレグリア、さらにそれに並びかけて叩き合いに持ちこみたいアドマイヤマーズがさらにその外。このあたりがペースアップするのを尻目に内で脚を溜めて仕掛けることができれば、グランアレグリアとの差は前走よりかなり縮まる可能性が高い。

牝馬グランアレグリアに朝日杯一番人気を許し、イベリスアーリントンCを楽々逃げ切ってしまうほど、今年は牡馬マイル路線は手薄。1600の持ち時計でもこのプールヴィルがメンバー中堂々の2位で、速い時計に対応できることは証明済み。かつてのラインクラフト-デアリングハート、アエロリット-リエノテソーロのように、牝馬世代がハイレベルであればワンツーまで十分考えられる条件だと思う。

 

 

ダノンチェイサーのきさらぎ賞は、雨の少頭数で全馬がペースをうまく掴めない中で展開がかなり向いた印象で、GIで人気で来るほどの大物感は感じない。

朝日杯でグランアレグリアを倒したアドマイヤマーズは、期待した皐月賞が案外だった。距離を言い訳にするのなら、勝負所の4コーナーでヴェロックスやサートゥルナーリアがペースアップしたところでもっと食らいついてほしかったところ。デキが下降線なのではという懸念は大きい。そもそも過去を振り返れば2歳マイル王者が3歳春のこの時期に調子が下降線にならない方が珍しくて、近年で春のうちに巻き返した例と言えばグランプリボスくらいしか思いつかない。皐月賞よりもパフォーマンスを落とすと思った方がよいかもしれない。それでは今のグランアレグリアには叶わないだろう。

 

穴でもう一頭面白いと思っているのはワイドファラオ。ここまで4戦2勝2着2回。逃げて速い上がりが使えるタイプで、叩き合いになってからが強い。こういう馬は侮れない。

 

 

◎プールヴィル

○グランアレグリア

▲ワイドファラオ

△アドマイヤマーズ