フェアリーS

2022年のリーディングサイアーランキングは11年連続でディープインパクトが1位を守った。しかしディープ自身は2019年に死亡してしまったためにラストクロップとなる昨年デビュー組は頭数が非常に少なく、2歳リーディングサイアーランキングでは圏外に終わっている。その少ない産駒からシンザン記念勝ち馬を出したのはさすがですね。

代わって2歳リーディングサイアーに輝いたのは阪神JFホープフルSを制したドゥラメンテ。2位はエピファネイア。この2頭は2021年の時点で3位と2位だったので順当とも言えるけど、注目すべきは3位に入ったルーラーシップだろう。父キングカメハメハ×母父トニービン×母母父ノーザンテーストという、サンデーサイレンス系以外の近代日本競馬の歴史を詰め込んで生まれた超良血馬も、種牡馬生活はもう7世代目。自身が晩成気味だったし2歳戦から使い倒す血統ではないのだろうけど、2016-2018年が2歳リーディング5位前後だったのが、2019年は11位、2020年は7位、2021年は20位以下で圏外に消えるという下降線を辿っていた。それが2022年は3つの2歳GIすべてで馬券に絡む馬を輩出して、一気に3位へ躍進したのである。

このルーラーシップ産駒3頭に共通するのは全て母父ディープインパクトということ。そして思い返せば2019年、ディープと双璧をなした大種牡馬キングカメハメハもまた死亡している。キングカメハメハはその年は体調不良のため種付け自体を行っていない。そのためディープ産駒の繁殖牝馬で以前ならキングカメハメハとの配合を想定されていた分は、今の3歳世代以降、他の馬に割り当てられていることになる。キンカメ後継の筆頭格と言えば本来ロードカナロアだけど、今のところ父ロードカナロア×母父ディープインパクトの組み合わせでは目立った活躍馬が出ておらず、91頭中でスプリント重賞勝ち馬が2頭いるだけである。一方、ルーラーシップは母父ディープインパクトで生まれた初年度産駒キセキが2017年秋にGI馬となり、特に2018年秋から2019年春にかけてGI戦線で大活躍した。そうすると、2019年春の種付けシーズンでの優秀なディープ系繁殖牝馬のお相手として、ルーラーシップにお鉢が回ってくるのは自然な流れだったかもしれない。

これまでディープインパクトは高い競走実績を持つ繁殖牝馬をたくさん擁しながら、母父としての実績は決して目立たなかった。それは偉大な父サンデーサイレンスをはじめとして同系種牡馬の血が日本に多すぎて、ディープ産駒の名牝たちに付ける種牡馬が限られるといった事情があったと思う。しかしそれも時代の流れと共に変わっていく。昨年はモーリスが母父ディープインパクトでついにジェラルディーナという成功例を出した。別系統からはジャックドールも活躍したし、今後は父モーリス×母父ディープインパクトも増えそうだ。しかし昨年の競馬の影響が次世代の血に反映されるまでは3年かかる。これからしばらくの間、父ルーラーシップ×母父ディープインパクトの血統から今までのイメージを超える活躍が続くかもしれない。

POGに詳しい人ならこういう流れは早い段階で読めてたんですかね。もちろん馬券としても重要である。父ルーラーシップ×母父ディープインパクトの昨年の2歳戦の成績は( 9 6 4 15 )で勝率26%、回収率188%。ひとつだけ5番人気の勝利があるだけでほとんどが1,2,3番人気での勝利ばかりなのにこの回収率は凄い。

 

 

さて今週はフェアリーS。全体的に小粒そうなメンバーの中で、父ルーラーシップ×母父ディープインパクトの2戦2勝メイクアスナッチが結構強い気がする。距離延長組や前走逃げた馬はこのレースあまり成績が良くないけど、母スナッチマインドも近親ラウダシオンもマイルは普通にこなしていたし、ルーラーシップ産駒でスプリンターと決めつける必要もなかろう。むしろ短い距離を経験している分、楽にポジションを取れるかもしれないし、このくらいの枠の方が被されなくて済む。近年このレースは外差し決着が多かったけど、後から振り返ればGI級の馬ばかり。もともとは逃げ馬が強いレースだし、今年は外から差してくるのは結構難しいのでは。相手も内の先行馬から。

 

◎メイクアスナッチ

○スピードオブライト

▲ヒップホップソウル

エナジーチャイム