新元号

もはやどのレースを予想しても当たる気がしないので、趣向を変えて「元号」でも予想してみよう。

今上天皇が早くから生前退位を表明されたおかげで準備期間はいくらでもあったというのに、改元一か月前まで発表をしぶる謎の政策のせいで、一般庶民は対応の仕様もなく、ついに2019年のカレンダーから元号が消えてしまう事態になった。このままでは歴史ある元号の存在意義が弱まりかねない。どういう新元号が相応しいか考えてみた。

 


「明治」「大正」「昭和」「平成」に続く元号として、「十八」というのはどうですかね。元号じゅうはち」。

アルファベットの頭文字はJなので、明治(M)、大正(T)、昭和(S)、平成(H)と被ることなく略語が使用できるという基本は当然満たしている。そのうえでいかにこの二文字が元号に相応しいかを以下で考察したい。


まず「」という漢字は、数字の10という意味に留まらず、「十分」や「十全」という熟語に使われるように、「すべて満ち足りている」という大変良い意味を持った漢字である。
https://dictionary.goo.ne.jp/word/kanji/%E5%8D%81/
これは何も漢字を使う日本に限ったことではあるまい。世界中のほとんどの文化において、数の数え方は十進法をベースとしている。それはもちろんヒトの指が両手で10本であることに由来する。人類にとって10は満たされた数字なのである。

 

さらに「」という漢字もまた「八百万」「八千代」「四方八方」のように、数字の8という意味を超えて「たくさん」という意味で使われる重要な漢字である。
https://dictionary.goo.ne.jp/srch/jn/%E5%85%AB/m0u/
この八が末尾に来ることも、「末広がり」として大変縁起がいい。

 

さらに重要なのは、この二つを合わせることで18という数字になることだ。
これこそまさに「満ち足りていることを表す数」なのである。例えばK殻L殻M殻の18個の電子軌道すべてが満たされたアルゴン原子は、窒素・酸素に次いで3番目に多く大気中に含まれている身近な気体であり、18個の電子が揃ったことで化学反応を起こしにくく、極めて安定な希ガス原子として知られている。また野球が九回表裏で18イニング戦うのも、ゴルフが18ホール回るのも、JRAの競馬がフルゲート18頭なのもすべて、「18」が「満たされる」ことを表す数字だからである。

失われた十年とも二十年とも三十年とも言われる厳しい平成の時代を終えて、文明がこれだけ発展し、周りが便利な物であふれかえってもなお、日本人は幸福感が薄い。新しい時代で我々が必要としているのは「自分は満たされている」という充足感ではなかろうか。そしてたった二文字の漢字でこれだけ「満ち足りている」ことを表すことのできる文字はなかなかあるまい。

 

 

そして何より、この元号「十八」が最大の威力を発揮するのは、西暦との変換である。

「平成5年って、西暦では何年だっけ?」という換算の手間によってこれまで日本人の多くの時間が無駄に割かれてきた。これこそ西暦と元号の両方を使用する日本が抱える最も重大な問題なのである。しかしもうその心配はいらない。例えば十八5年は、2018+5=2023年。このように足し算を習ったばかりの小学生であっても西暦への一発変換が可能なのである。これによって忙しい現代日本人の多くの時間がどれだけ有効活用されるかは計り知れない。

 

さらに二文字合計でたった4画で記述できるという点も強調しておきたい。これによって今後数十年の間に消費される膨大な公的文書の中で消費されるインクが大幅に節約されるに違いない。かつてないほど地球にやさしい元号と言えるだろう。当然のことながら手書きで書く場合の時間も大幅に削減されるに違いない。一見元号に相応しくなさそうな数字をあえて使うことで、昨今心配されている理系離れへの警鐘の意味も込められている。さらに日本では自分の得意な芸や技のことを古くから「十八番(おはこ)」と呼ぶ。元号として十八を掲げることは、皆が自分の得意なことを活かして生きるという「一億総活躍社会」への願いも込められている。

 

 

◎十八

 

 

 

3月中は更新頻度が減りそうですが、元号が変わってもこんな感じで当たらない予想をお届けしていきたい。