札幌記念

札幌記念は下降線に入った一流馬はなかなか勝てないイメージがある。マカヒキは昨年秋も毎日王冠6着、天皇賞5着、ジャパンC4着と王道路線でそれなりに好走したけど、実際は上位とはしっかり離されていたし、見せ場はほとんどない負け方だった。同じ3レースを8着、6着、7着だったソウルスターリングが今年まるで振るわないところを見ても、この実績はあまり信頼できない。


それよりは強い4歳世代の方が期待が持てる。一番強いと思っているのはサングレーザー。マイラーズCではエアスピネルを置き去りにしたままモズアスコットを並ぶ間もなく交わして1.31.3のレコード勝ち。安田記念は5着だったけど、時計も速くてかなり内に偏ったレースで、8枠15番から外を回しての僅差5着は負けてなお強しの内容だった。3歳夏以降に本格化した馬なので今後さらに伸びしろが見込める成長株。といいつつ2歳時には札幌の1800で2歳王者サトノアレスにも勝っているし、2000のホープフルSでも前潰れの展開の中で先行してよく粘っていたので、距離にも特に不安はない。
不安はやはり騎手。福永の重賞成績を距離別にみると1800まではどの距離でも勝率10-16%程度で回収率は75%ほどの数字をマークしているものの、2000以上ではどの距離でも勝率7-8%の回収率40%台に留まっている。特にローカルや小回りが多い2000の重賞に限ると、1枠と2枠に乗った時は( 0 4 3 28 )でなんと勝率0%。3枠でも( 1 4 4 16 )で回収率15%という酷い有様で、唯一勝った京都2歳Sカデナは少頭数なのに大外ぶん回しだった。今年も皐月賞ワグネリアンを見事に飛ばしていて、その後ダービーを勝ったことで美談っぽくなってしまったものの、内枠でも外を回さないと何もできない点は基本的に変わっていない。ここも外に持ち出して、レースが終わったころに突っ込んできてせいぜい2着か3着じゃなかろうか。


札幌記念は差しやマクリがズバッと決まることもあれば、あれよあれよの逃げ切りも目立つレース。このあたりは頭数によってだいぶ様相が変わる。G2に昇格して以降、13頭立て以下の少頭数では
-逃げ ( 0 1 1 7 ) 勝率0%
-先行 ( 4 4 5 17 ) 勝率13%
-差し ( 3 2 1 22 ) 勝率11%
-追込 ( 0 2 0 27 ) 勝率0%
-マクリ ( 2 0 2 1 ) 勝率40%
なのに対して、14頭立て以上だと
-逃げ ( 3 0 1 7 ) 勝率27%
-先行 ( 4 4 2 31 ) 勝率10%
-差し ( 3 4 7 54 ) 勝率4%
-追込 ( 0 2 1 41 ) 勝率0%
-マクリ ( 1 1 0 0 ) 勝率50%
と一気に前有利になる。多頭数で後ろから届いたのはハイペースからのまくり合いになったハープスターの14年だけ。ある程度頭数が揃ったら、後ろから行って外を回す競馬では間に合わない。
今回はマルターズアポジー、アイトーン、マイスタイル、クロコスミアと前に行く馬が豊富。当初は被されることを嫌うアイトーンがマルターズアポジーとハナ争いするようなコメントを出していたけど、結果的に大外枠を引いたことで、先行争いが激化する可能性は少なくなった。人気のマカヒキ、ミッキースワロー、サングレーザーがみんな後方待機の脚質だし、それを尻目にこの4頭のどれかは残るんじゃなかろうか。

 

もう一度マルターズアポジーに本命を打ってみよう。一時期の勢いがなくなってきて、特に2000ではスタミナ不足のような印象も出てきたけど、これは迷彩。この馬はスピードの違いで毎回ハナに立ってしまうのでいつの間にか玉砕的大逃げのイメージがついてしまったけど、勝っているレースの多くはそれほど速いペースでは逃げていなくて、むしろ無理のないペースで逃げたときに最後の直線で二の脚を使えるのがこの馬の強みだと思っている。実際、ペースの上がりやすいマイル戦では京王杯AH、マイルCSダービー卿CTと立て続けに着外が続いていて全く実力を出し切れていない。しかしそんな中でも中山記念3着、鳴尾記念4着とむしろ中距離戦の方で堅実に健闘している。アエロリットと互角に走れるだけの能力はいまだにキープしているし、前走は鞍上と超高速馬場での前残りを必要以上に警戒されてペースが速くなりすぎた。この馬にとって重要なのはこの馬なりのマイペースで走れるかどうかであって、短距離か中距離かではない。
玉砕的大逃げのイメージが十分ついたところで、他の先行馬が競り合うのを嫌って控えてくれるようならここでようやくマイペースに持ち込める可能性がある。ほどよく人気が落ちてきたところで今回こそが狙い目ではなかろうか。


マルターズアポジー
○マイスタイル
▲クロコスミア
△サングレーザー
△モズカッチャン


マイスタイル頭の馬券も買っておきたい。菊花賞で◎を打った馬で、あれが超絶不良馬場でなければどうなっていたか、いまだにちょっと未練がある。今春復帰してからも前に行ったときは強い競馬を見せている。特に函館の直近2レースは逃げて後続を突き放す圧勝。条件戦とはいえ、前走ではスティッフェリオに3馬身、ドレッドノータスには6馬身の差を付けたわけで、この舞台で十分戦える力を持っていると思う。本当はハナに立つのがベストだと思うけど、気分よく走れれば2,3番手からでも何とか力を発揮できそう。
クロコスミアも人気はないけど力のある先行馬。この馬も本来は逃げてこそだけど、エリザベス女王杯では2番手から健闘してみせたので、このメンバーでも何とかならないだろうか。