皐月賞

馬券的には例年と比べてもかなり面白い皐月賞になってると思うんだけどどうだろう。最近の皐月賞は上位とそれ以外の馬に実力差を感じることが多くて、人気馬に付け入るスキが見当たらなくてなかなか穴狙いが難しかった。今年は前走1着でクリアした馬が10頭もいて、これは86年以降で最大の数字。前走負けた8頭のうちにも主要トライアルで僅差だった馬が多く、巻き返す要素を残している。
例年なら前走勝ち馬は平均6頭程度で、過去一番多かったのでも2011年の9頭が1回あるだけ。この年はサダムパテックが押し出されるように人気になったけど、結果的には単勝10.8倍のオルフェーヴルが覚醒して断トツの能力を見せつけた。前走の勝ち馬が多いということはそれだけ出走馬どうしの対戦経験も少なく、実力の比較が難しい。人気に騙されない目が必要になる。
クラシック戦線で人気を集めるのは、戦績に傷がついていなくて、トライアルで人気に応えて楽に勝ち上がってくるような「華」のある馬。しかし得てしてこういうタイプは強い馬が揃った多頭数の中山2000ではコロッと負けることも多い。重い印を打つには、確かな地力とレース経験、上積みが見込める成長度、そして人気を集めすぎない「ほどよい地味さ」が欲しいところ。


その点で今年はウインブライトがいかにも好みだ。
ステイゴールド産駒らしい小柄な体格で、オルフェーヴルと同じくらいの遅生まれ。2歳夏のデビュー戦では掲示板にも乗れなかったけど、馬体の成長に伴ってか一戦ごとに目に見えて走りが変わってきた。
14キロ増で迎えた3戦目では楽々の手応えで勝ち上がり、4戦目のマイル戦ではアウトライアーズにあっさり交わされたものの食らいついて2着。そして5戦目、若竹賞。後方で折り合って4角で軽く仕掛けると直線入り口であっさり先頭。そのままほとんど追うことなく楽勝した。今年の中山の馬場は決して速くなかったはずだけど、勝ち時計1.48.3は恐らくレースレコード。前週の古馬準オープンと比べて1000の通過は丸々1秒遅いのに、走破時計では逆に0.1秒上回っている。マイルから1800に戻ってさらに強さを増したのも好感が持てる。馬体はデビュー当時から22キロ増えていた。
そして6戦目のスプリングSでは大外をぶん回す強引な競馬ながら、アウトライアーズに雪辱を果たして勝利。トライアルでマイナス12キロだった馬体重の推移が気になるけど、あの時点でまだ本領発揮してなかったとすれば、むしろ本番でも更なる上積みがあるかもしれない。
不安を挙げるなら、大外をマクる強引な競馬が続いていること。8枠17番からとなると今回も大よそ同じ競馬になりそうで、先行する強い馬がいたら捕えきれないかもしれない。さらに土曜の中山競馬は一気に高速化。3歳未勝利戦で61.5のスロ―ペースから勝ち時計2.00.4という信じられないほどの時計が出ている。3歳500万下でも1.08.6。よほど速いペースで進まない限り前は止まらない。


となると気になる先行馬はやはり今年の目玉、ファンディーナ。先週の桜花賞でソウルスターリングの圧倒的人気に違和感を覚えたのにも実はこの馬の存在が影響している気がする。本当の怪物牝馬はこっちじゃないのか。
キャリアの無さが不安材料のようにも映るけど、1800のスローを2番手で追走して直線で末脚を爆発させる勝ち方は、むしろどの牡馬よりも中山2000向きとすら思える。競り合いになった時にどうなるか分からないけど、岩田も調子を取り戻してきたようだし、圧倒的な勝ちっぷりを見せてくれる可能性は十分ある。土曜は単勝だけ売れてるけど、連勝馬券では実質3倍以上。カデナが4倍強、スワーヴリチャードが5倍なのでそれほど一本被りではなく、狙えるオッズだと思う。


もう一頭、気になる先行馬はクリンチャー。
未勝利戦の内容は単勝240倍超のオッズからは考えられないほど圧巻で、決して緩みすぎない一貫したペースで逃げながら、最後は11.6-11.9でまとめて3馬身差の圧勝。上がりはメンバー最速だった。勝ち時計2.00.8は翌週の古馬1000万下を勝った素質馬サトノケンシロウと互角で、流れたペースを思えばむしろこちらの方が上。負かした馬たちも続々と勝ち上がっている。
単に逃げがハマっただけではないことを証明したのが2戦目のすみれSで、2-3番手からの競馬になったここも上がり最速の末脚を繰り出して4馬身差の圧勝だった。2着タガノアシュラは函館1800をレコード勝ちして黄菊賞ではトリコロールブルー以下を完封しているように単騎で逃げれば本来しぶとい馬。1倍台の人気を集めて3着に終わったキセキも毎日杯では3着に好走して力のある所を見せた。相手が弱かったのではなく、先行したまま突き放したクリンチャーが強すぎたのだと思っている。このレースの勝ち時計2.14.1は、前日の古馬準オープンでは逃げて4戦4勝のステイインシアトルが記録した2.14.5を楽々と上回っている。
このメンバーに入っても有力だと思っているけど、土曜の高速馬場を見てちょっと不安になってきた。芝でなかなか結果の出ないディープスカイ産駒だし、スピード負けするかもしれない。ただ時計勝負が合わないと決まったわけじゃなく、むしろ2000の持ち時計2.00.8はメンバー中2位。この舞台で今なお存在感を発揮する母父ブライアンズタイムの怖さも昨年思い知ったばかりだし、ファンディーナとの叩き合いで残るシーンを期待したい。


時計勝負という点なら、穴ではプラチナヴォイス。
京都1800の未勝利戦を2歳レコードタイの4馬身差で圧勝。開幕初日で馬場が速かったとはいえ、過去にイスラボニータが勝ったかなりハイレベルの東京スポーツ杯でしか記録されていなかった1分45秒台の数字は2歳馬としてはなかなか出せるものではない。続く萩Sもヴァナヘイムを下して圧勝していて、この時点では間違いなくクラシック有力候補の一角だった。
その後の京都2歳Sときさらぎ賞を連続で凡走して評価を落としたものの、スプリングSでは4角で一気にマクる強気の競馬で3着。仕掛けどころ次第では十分巻き返せる手応えを掴んだ。鞍上の和田もここ数年グイグイ成績を上げてきていて、乗り馬にさえ恵まれれば長く遠ざかっているGIにいつ手が届いてもおかしくない雰囲気を感じる。




買いたい馬と買いたくない馬は結構はっきり分かれた。


スワーヴリチャードは消し。この馬は右回りのコーナリングがスムーズではなく、特にデビュー戦では直線向いてからの加速で手間取るうちに勝てるレースを取りこぼしている。左回りの東京スポーツ杯では最後方から一気に突き抜ける瞬発力を披露したものの、直線後半ではパタッと止まってしまって一旦突き放したはずの馬に差されてしまった。出遅れ癖がある上に脚の使いどころが難しい困った馬。共同通信杯も出遅れたものの、少頭数の最内枠でスローペースと全てに恵まれた結果、6番手で進めて直線ギリギリまで追い出しを待つことができて、後半勝負で突き抜けることができた。時計も相手も関係も大したことはなかったと思うし、あんな恵まれた状況は中山2000では期待できない。陣営も皐月賞トライアルを使わなかったあたり、ここを叩いて府中で勝負するつもりだろう。
カデナはいかにも皐月賞で飛びそうな差し馬に見える。弥生賞はレベルが低すぎたと思う。高速馬場でディープインパクトの血が開花すれば上位に来るかもしれないけど、スローペースの末脚勝負しか経験していないし、高速馬場の中距離スピード戦になって道中脚を使わされ続けると何もできずに終わってしまうんじゃなかろうか。高速馬場に圧倒的な適性のあったハーツクライ、スズカマンボあたりが皐月賞では何もできなかったのを思い出す。
休み明けぶっつけ本番のレイデオロにも食指が動かない。元は強い馬だと思うんだけど仕上がりも微妙なようだし、2歳時から勢力図もだいぶ変わってきていると思う。サトノアレスもいかにも低レベル2歳王者といった印象。人気のないところではアメリカズカップあたりも気になるけど買い材料には乏しい。


それよりはペルシアンナイトを評価したい。アイビーSでは東京のスローで道中かかってソウルスターリングを捕まえきれなかったものだし、シンザン記念も馬場の悪い内で詰まったのが痛かった。アーリントンCは3馬身差で圧勝して力が全く違うことを示したし、勝ち時計1.34.1はレースレコードと0.2秒差。これは翌日の阪急杯が1.21.4の時計がかかっていたようなあの週の阪神の馬場の重さを考えればかなりの好タイムだと思う。鞍上も怖い。
あとはトライアルで一番レベルが高かったと思うスプリングS2着のアウトライアーズに印を回すかどうか。中山向きの末脚を持ってはいるので差し決着になるなら買いたいけど、今の馬場的に差し馬がそう何頭も来る展開になるかどうか。



◎クリンチャー
○ファンディーナ
▲ウインブライト
△プラチナヴォイス
△ペルシアンナイト


ファンディーナと悩んだけど、クリンチャーがあまりにも人気がないのでこちらを本命。
◎の単勝と頭固定三連単で勝負。○▲への馬連とワイドが押さえ。
でも○頭固定の三連単も買っておきたい。