大阪杯

いろいろ真面目に考えたんだけど、上位人気馬に自信を持って消せる馬がいないので、その中から絞って当てに行くのが難しい。
となるともっと穴から入るしかない。有馬記念でも◎を打ったマルターズアポジーもう一度狙ってみたい。


もともと1800-2000を中心に活躍していた馬で、左回り( 1 1 1 5 )に対して右回りでは( 6 0 2 3 )。着外に負けたのはデビュー直後と、1600への距離短縮での4着、そして2500の有馬記念の3つだけ。そして昨秋の本格化以降5戦4勝のレースぶりはかなり強い。
デビューから19戦、全て「1」が並ぶ綺麗な通過順位実績のせいか、「スピードをいかした玉砕的大逃げ」のイメージで語られることがある馬だけど、実際にはこれまで1800以上の右回り戦で記録した前半1000の通過タイムは

  • 57.6 小倉大賞典
  • 60.8 有馬記念
  • 61.0 福島記念
  • 61.3 いわき特別
  • 60.7 初咲賞
  • 59.5 ラジオNIKKEI賞 
  • 60.9 ひめさゆり賞
  • 63.9 未勝利

とこんな感じ。右回りでハイペースで逃げたのはマイネルハニーに絡まれた前走だけしかなく、それ以外でも60秒を切ったのは実は僅か1回だけ。デビュー以来一貫して逃げ続けている馬とは思えないほど遅い。これを他の中距離の逃げ馬と比べると、例えば近年で頑なにハナを主張し続けた馬と言えばシルポートがいるけど、1800以上で逃げた20回のうち14戦は58秒台かそれより速いペースだった。こういうのが玉砕的な逃げ馬の典型。エイシンヒカリやトウケイヘイローなんかはさすがにもう少し遅かったけど、それでもハナに立ったレースのほとんどは59秒台かそれより速いペースを出していた。
スタートダッシュで一気にハナを奪ってしまえば主導権はこちらのもので、後は決して無理をせずにペースを落として、直線でもう一伸びして押し切るのがマルターズアポジーの戦法。だからこそ逃げ馬にしてはかなり堅実な成績を残していて、負けたレースでもほとんどは先行馬による前残り決着になっている。ここだけ見れば実は意外とキタサンブラックと似たタイプとも言える。


有馬記念でもスロー逃げから見せ場をつくることを期待したけど、1000の通過60.8のあと13秒台のラップが3ハロン続いて、ラスト1000メートル地点からまた激化。結局ラスト400で捕まってあとは後退するだけとなって、さすがに距離の壁を感じさせた。距離適性という点でやはりキタサンブラックとはかなりの違いがある。こちらは1800ベスト、許容範囲は1600-2000までということだろう。ただその分、スピード勝負ならこちらに分がある。


右回りで初めてハイペースを経験した前走の小倉大賞典は潰れるどころか圧巻の競馬になった。マイネルハニーに突かれて息の入らない展開になり、1000の通過は57.6。勝負所で後続が押して押して必死でついていく中で1頭だけ抜群の手応えで4角を回って、直線でさらに突き放す。セーフティリードを付けた後の最後の1ハロンはさすがに止まったけど、それでも危なげなく完勝。先行馬のほとんどは潰れ果てて、最後方待機のヒストリカルが2着に食い込むレースだった。
どれぐら速いペースだったかというと、1200, 1400, 1600の通過が1.09.3, 1.21.0, 1.32.9とまさに短距離戦のようなラップ。このように1600を1分32秒台で通過するハイペースで逃げながらそのまま1800を押し切ってしまった例というと、2010年春の京都が超高速の前残り馬場だった時にシルポートやナリタトルネードが記録してるくらいで、それ以外ではおそらく伝説になったサイレンススズカの毎日王冠しかない。
もちろんギリギリ逃げ切れなかった例とか、逃げ以外の通過ラップでとかならこういう走破時計は他にもあるんだけど、いずれもかなりの高速馬場に限定される。一方、今年の小倉1回開催は1200の開催ベストが1.08.3、2000では2分を切ったのがたった1レースだけという、ここ10年の小倉開催で一番と言っていいほど時計のかかる馬場状態だった。こんな馬場で小回りコーナーを4つも回りながらこのパフォーマンスを残すのは相当凄いと思う。もともとは前半抑えれば2000で上位の上りを繰り出す末脚も持っていて、短距離戦のスピードのまま1800を勝つ持続力もある。1800では今現役で一番強いんじゃないかとすら思っている。


問題はもう1ハロン伸びて2000になって、さらにキタサンブラックという超大物先行馬がいてどうなるかということ。ローカル1800と阪神2000では逃げ切りやすさが天と地ほど違う。
それでもマルターズアポジーとキタサンブラックという、「主導権を握る」ことに非常に長けた馬が2頭も揃った以上、ここも2頭の思うがままの展開になるんじゃなかろうか。キタサンブラックの武豊は直線勝負に自信を持っているので、必要以上に仕掛けを早めることはしない。前残り決着を前提に考えたほうがおいしい馬券にありつけそうな気がする。


キタサンブラックが去年夏以降の強さをキープしていたらどうやっても太刀打ちできないかもしれない。しかし去年春までのキタサンブラックは、サウンズオブアースやアンビシャスに差されてカレンミロティックにも一旦は捕まっていた馬。おそらくジャパンCがこの馬のピークだったはずで、今回は追い切りも並走馬に遅れたようだし、手の付けようがなかった昨秋ほどのデキにはない可能性は高いと思う。そうなると、2000の距離なら、直線入って一旦はキタサンブラックを突き放して逃げ切り体制に入るシーンがあるんじゃないかと思っている。


◎マルターズアポジー
○キタサンブラック
▲ヤマカツエース
△ロードヴァンドール
△サトノクラウン


前残り狙いなので相手本線はキタサンブラック。
あとは充実期を迎えたヤマカツエース。前走休み明けでG2で1番人気を背負って危なげなく完勝。中山金杯や去年の金鯱賞と有馬記念のように、スローの前残り決着で他の差し馬が苦労する展開でこそ伸びてくる一流の瞬発力を備えている。ここも位置取りさえ後ろ過ぎなければチャンスは十分あると思う。キタサンの出来次第ではアポジーを捕らえるのはこっちかもしれない。ヤマカツエースより後ろの馬は悩みだすとキリがないのでまとめて消し。


少し怖いのはサトノクラウン。好不調の波も激しいので力の底が見えにくいけど、弥生賞や香港ヴァーズ、京都記念連覇時の強さと、東京スポーツ杯や皐月賞、ダービーでの走りを対比させると、どうしてもスタミナ寄りの馬に見える。阪神2000は適性的に微妙なところで、雨の影響が残るようなら本命でもいいくらいだけど、マルターズアポジーから買うとなるとどうだろう。
それよりはもしかしたらロードヴァンドールのほうが面白いかも。並ばれてから驚異的な粘りを発揮する根性の馬で、条件馬相手にも苦戦しておきながら、クラスが上がってペースが上がっても相手が強くなってもしっかり対応する力を持っている。さすがにGIとなるとどうかだけど、同じく競り合いに驚異的に強いキタサンブラックもいるここではもう一段飛躍するかも。