ヴィクトリアマイル

例年の傾向から見れば基本的には前の馬から買うレース。年間を通して古馬牝馬限定重賞は中距離レースが多いけど、スローの中距離で伸びる末脚のキレよりも、マイルの速い流れに適応して先行してなお直線で速い上がりを使える能力が求められる。過去にスイープトウショウやカワカミプリンセスが掲示板にも乗れなかったり、マイルGI勝ちがあって牡馬相手に東京GIも勝ちまくったはずのウオッカやブエナビスタでさえ格下相手に苦戦したシーンが印象深い。
今年この流れに沿って軽視したい馬はやはりディアデラマドレ、スマートレイアー、ショウナンパンドラ、バウンスシャッセあたり。本番でよほどこれまでと違った一面を見せてこない限り届かないと思う。


本命はカフェブリリアント。こいつも追い込み一辺倒かと思っていたけど、戦績をよく見返したら元々スプリントで先行していた馬で、未勝利戦を勝ち上がった時には新潟直線を押し切ったほどのスピード馬だった。かつて1400に距離延長したときに最後方で溜めたら弾けて突き抜けたことからしばらくはマイル路線で後方からの脚質を続けていたけど、前走の阪神牝馬Sでは好スタートから5番手につけて直線綺麗に抜け出して快勝。阪神巧者のスマートレイアーや内をうまく捌いたウリウリらを全く寄せ付けず危なげない完勝だった。
この週の阪神はかなり時計がかかっていて、この日は古馬準オープン1200で1.09.3、古馬1000万下2400で2.31.6、2000の未勝利戦では2.08.3が記録されたほど。翌日の忘れな草賞は2.03.5、大阪ハンブルグCは2.27.7、桜花賞は1.36.0だった。この馬場状態を思えば、1.21.1の勝ち時計は相当優秀だと思う。
ちなみに今年よりはもう少しだけ馬場が速かった2008年に1.21.4で押し切ったエイジアンウインズは次走でウオッカに土をつける大金星を上げていて、2着ブルーメンブラットもこのレースを機に本格化して大活躍、後続は3馬身置き去りにされていた。今年よりもう少し時計のかかった2006年、ハイペースで流れたこのレースで圧勝したラインクラフトの勝ち時計が1.21.2。3馬身離されたエアメサイアは1.21.7、後続はさらに3馬身半遅れた。このあたりと比較してもカフェブリリアントの勝ち時計は全く見劣りしておらず、ヴィクトリアマイル本番で勝ち負けできるレベルにあると思う。東京の長い直線向きの末脚も持っているし、先行しても末脚を発揮できることは前走で証明済み。枠も良いところだし、福永もマイル戦で牝馬限定なら実績は文句ない。今春GIを席巻する厩舎の勢いも心強い。


相手はヌーヴォレコルト。特に減点するところが見当たらないので軽視できないけど、逆に言えば総合力と競馬の巧さで勝負するタイプで、他馬との地力の差がハッキリ浮かび上がるのはもっと長い距離でこそ、という気はする。実際距離が伸びて本格化した馬であることに違いはないので、久々のマイル戦で思うように伸びない可能性はある。GI単勝回収率150%を維持する岩田も1番人気だと勝ち切れないことが多くて、ロードカナロアを除くと( 2 6 4 5 )で回収率は20%まで落ちる。付け入る隙はあるかもしれない。


◎カフェブリリアント
○ヌーヴォレコルト
▲ベルルミエール
△ケイアイエレガント
△スイートサルサ


カフェブリリアントから入る以上、ベルルミエールも買っておきたい。前走の阪神牝馬Sでは他の先行馬が早々に脱落してカフェブリリアントのいい目標にされてしまう苦しい展開で、そこからクビ差まで粘りこんだのはかなり評価できる。そのわりに全く人気がない。
デビュー以降ずっと堅実に走っている馬で、道悪の小倉2歳Sを除いて大敗したのはNHKマイルCと京都牝馬Sだけ。この2戦から1600への距離不安があって人気を落としているのだろうけど、京都牝馬Sはスタートで酷く挟まれて最後方の位置取りになって全くの参考外だし、NHKマイルCは連戦から来る馬体減に苦しんで調教もまともに追えない状態だった。今は30キロ以上馬体も増えていて、追い切りも当時とは別馬の動き。3歳春のニュージーランドTではハイペースの前崩れレースを果敢に先行して粘りこむかなり強い競馬をしているので、1600がダメとは思えない。スローの1400を2番手で先行して上がり34.0を繰り出して圧勝したこともあるし、1400が普通に流れればはむしろ忙しすぎるきらいすらある。ややスローのマイル戦に万全の体勢で挑む今回初めて本領を発揮してくるかもしれない。


去年本命に推したケイアイエレガントも押さえる。去年は外枠からポジションをとれずに3番手から直線で一旦はヴィルシーナを交わそうかという勢いで、最後の1ハロンで力尽きた。もともと先行してジリ脚になるしがない条件馬だったこの馬が一変したのが去年の東京1600節分Sで、強豪牡馬相手に逃げて直線上がり33.4の末脚を繰り出して3馬身差の圧勝だった。中山牝馬Sも4角先頭から粘りこみ、福島牝馬Sでも逃げてキャトルフィーユを完封、そして京都牝馬Sもトップハンデ56キロも全く問題にせず逃げ切るなど、やはりこの馬の持ち味は逃げてこそ。去年もハナに立っていれば勝っていたのはこの馬だったかもしれない。今年も捻挫からの休み明けじゃなければ本命でも良かった。つくづく買い時は前走だったなと悔やまれて仕方ない。


スイートサルサも意外なほど人気がない。一昨年の府中牝馬Sでは先行して速い上がりを繰り出してホエールキャプチャ、ドナウブルー、マイネイサベルの間に割って入る3着だった。もちろんこの3頭はヴィクトリアマイルの活躍馬。近走はユートピアSを1.32.1の好時計で完勝、愛知杯でも4角で絶望的な位置にいながら鋭く伸びて3着入線、そして跛行取消し明けが不安視された福島牝馬Sも勝ってここに駒を進めてきた。東京実績もあるし近走絶好調なので4,5番人気になるかと思っていた。
特に評価したいのは福島牝馬Sでマークした1.46.0の勝ち時計で、これは歴代でも5位の好タイム。かつてこれと同等の時計がマークされたときは、スプリント戦が1分07秒台半ばで決着するような高速馬場だったか、あるいは1000の通過が58秒フラット級のハイペースで引っ張る馬がいたかのどちらか。今春の福島は翌日の古馬1000万スプリントでも1.08.3かかったほど決して速い馬場ではなかったし、この福島牝馬Sも道中12秒台のラップが続いて1000の通過は58.8とあくまでミドルペースだった。ここからラスト4ハロンを11.8-11.8-11.7-12.0の速いラップで一気に押し切ろうとするリラヴァティに対して後続がなすすべなく置いていかれる中で、3角からマクリ気味に進出して外を回して最後捕らえきったこの馬は相当強い競馬をしていると思う。
スタートも上手くないし勝負どころのエンジンのかかりも遅くて、直線でのキレ味を求められると分が悪い。しかし東京マイルはGIになればそれなりのペースでは流れるのでオープンやG2,G3でありがちな瞬発力だけの勝負にはならない。速いペースへの耐性があって、馬群の内を突くこともできて、長い直線で最後まで伸びる息の長い末脚も持っているので、後ろから届く馬がいるとすればディアデラマドレではなくこいつではないかと思う。