宝塚記念と言えば昔は4角好位から押し切る競馬ばかりで、メジロライアンやメイショウドトウが悲願を達成した時も先行策が大きなカギになった。しかし近年の宝塚記念はヒシミラクル以降、どちらかと言えば差し・追い込みの伏兵が外から強襲してくる印象が強くなった気がする。
阪神開催の宝塚記念で後方決着になったと言えるのは、ヒシミラクル、スイープトウショウ、アドマイヤムーン、ドリームジャーニー、ナカヤマフェスタが勝った5回。このうち相当の道悪なのに57.5のハイペースになって前が潰れたアドマイヤムーンの年を例外とすると、残りの4回には大きな共通点がある。土曜の時点では前有利の馬場だったのに、日曜（あるいは日曜午後）になって突然馬場傾向が大きく変化したことだ。
この4年間の土日の芝の勝ち馬について、脚質別に頭数を比較すると以下のようになる。
- 03年 土曜：逃げ2、先行1、差し1、追込0 → 日曜：逃げ0、先行0、差し4、追込1
- 05年 土曜：逃げ3、先行1、差し1、追込0 → 日曜：逃げ0、先行1、差し4、追込0
- 09年 土曜：逃げ1、先行3、差し1、追込0 → 日曜：逃げ0、先行1、差し5、追込0
- 10年 土曜：逃げ2、先行2、差し1、追込0 → 日曜：逃げ1、先行2、差し3、追込0
土曜の時点では逃げ馬が十分勝ち切れる馬場状態で、追い込みは全く届かなかった。それが日曜になると一転、差しばかりが目立って、2,3着には追込み馬もよく届く。特に宝塚記念直前の午後のレースになると外差しが上位を独占する結果が続いた。この馬場傾向の変化に恐らく多くの人が気づかないまま宝塚記念に突入して、しかも人気馬は前の方にいて早めに動いた結果、後方待機の伏兵による差しが綺麗に決まった。
逆に言うと、これだけ条件が整わない限り、宝塚記念は基本的に前が残る方向で考えた方が良いのではないかと思う。
今年はと言うと、土曜の時点で逃げ1、先行1、差し2、追込1。後半3レースが全て差し決着になったこと、特にメインレースで出遅れたフラガラッハが最後方から突き抜けたこと、そして先週のマーメイドSの結果からも外差し馬場という印象が強い。さらにネコパンチ、ビートブラック、アーネストリーなどハイペースで結果を出してきた馬が並んで、その直後にウィリアムズがいて、さらにオルフェーヴルの存在感が薄くなったとなると、後方待機馬が直線浮上してくる気がしてくる。
しかし、差し決着になった土曜の後半3レースは、8レースで1頭だけ大逃げした馬がいたことを除けば、全て極端なスローペースだったことに注意したい。騎手の間に染み付いている意識はすでに「外差し有利」。誰も積極的に前に行こうとはせず、瞬発力勝負になって後ろで溜めた馬が伸びた。
GI本番で内回りの今回のメンバー構成なら、さすがにそれなりのペースで流れる可能性が高いと思う。良馬場とは言え時計がかかる馬場状態で、追走するだけでも体力を奪われる。内が伸びないことはみんな分かっているので先行馬も直線では外に出す。となると、後ろにいて外を回すような競馬では届かないのではなかろうか。土曜の時点でも、比較的まともなペースで流れた午前中のレースは逃げ・先行馬が押し切っている。
日曜も午前の3レースを終えて勝ち馬は先行2、差し1。今のところ馬場傾向が極端に変わった感じはない。ここまで全て外回りなので内回り戦の結果を見てみたいところだけど、ある程度前にいて体力勝負で押し切れる馬から選ぶことにする。
◎ルーラーシップ
○エイシンフラッシュ
▲ビートブラック
△フェデラリスト
本命はルーラーシップ。というかウィリアムズ。馬自体は自分のペースで走れないと脆い印象だったけど、末脚は一級品だし、出遅れなくなってきた今の状態でウィリアムズが乗るなら、過去のGIとは全然違う競馬ができそう。
対抗はエイシンフラッシュ。以前は極端な瞬発力タイプの馬かと思っていたけど、昨年の宝塚記念や天皇賞・秋の健闘ぶりを見るとハイペース適性も相当高い。この馬の弱点は競り合いに弱いこと。並んだ途端勢いがなくなるし、勝ったレースでさえ全てタイム差無し。瞬発力勝負で叩き合いになるよりは、むしろ我慢比べで基礎体力を競った方が好走しやすいのでは。
本格化したのか分からないビートブラックも一応警戒。あとはフェデラリストまで。能力は十分通用すると思うけど、一旦休養を挟んで調整過程が今までと違うので強気にはなれない。
後方待機のウインバリアシオンとショウナンマイティは消し。オルフェーブルも「何とか７割」とか「そこそこ来るか惨敗のどちらか」とか、いくらなんでも陣営が弱気すぎる。簡単には復調しないのでは。
トゥザグローリーも恐らく今回は後方から。外枠は苦手で、ラチ沿いを走れないと最後伸び切れない。アーネストリーは去年までとは臨戦過程が違いすぎて手が出ない。ヒットザターゲットが人気以上には好走しそうだけど、さすがにこのメンバーでは厳しいか。
